予想外の凡作~映画「エヴァの告白」 [映画時評]
予想外の凡作~映画「エヴァの告白」
1920年代、戦禍のポーランドから渡ったアメリカ社会で、ほんろうされる二人の女性。
―とくれば、ドラマのフレームは期待できる。と思って見たのだが、予想外に凡作だった。
時代からすると、ヨーロッパは第一次大戦後でソビエト連邦が成立した直後。ソ連赤軍がウクライナからポーランドを攻めたころと推察される。しかし、そうした時代背景の説明がいっさいないため、姉妹はなぜアメリカに渡ったのか、切迫した理由が見ている方に理解できない。特に妹は肺病である。それほどの危険を侵してまでアメリカに渡ったどんな理由があったのだろう。病弱な妹のために姉のエヴァ・シブルスカ(マリオン・コティヤール)は場末の踊り子に身をやつし、男とも寝るわけだから、渡米の動機はこれでもか、というほど描かれなければドラマとしての説得力はない。
エヴァの美貌に、劇場で女性を働かせ売春させる(要するに女衒)ブルーノ(ホアキン・フェニックス)は一目ぼれ、ダンサーにしようとする。エヴァは劇場に出入りするマジシャンのオーランド(ジェレミー・レナー)に救いを求めるが…。
これって、一種の三角関係ではないか。つまり、せっかくの時代設定がありながら、ドラマの進行に「時代」はほとんど絡んでこない。だから、ただ三角関係を基調とする男女のメロドラマにしかみえない。
で、最終的に敬虔なクリスチャンであるエヴァは、「生きるためにもがくのは罪なのか」と悩みを打ち明ける。ここまでくると、まるで中世の映画を見ているようだ。宗教的な善悪の価値観より、しっかり生きることの方がよほど意味あること、というのは今の世の中では自明のことだろう。当たり前のことが映像化されている気がして、見ている方がしらけてしまう。したがって、結末もなんだかリアリティーが感じられなかった。
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