SSブログ

極上の答えが待っている~映画「ネブラスカ」 [映画時評]

極上の答えが待っている~映画「ネブラスカ」


 年老いた親父とその息子が哀歓たっぷりに旅するロードムービー、などと言って悪いわけではないが、それがどうした、という気も一方でする。誤解しないでほしいが、この映画を評価しないわけではない。逆に、こんなレッテルでは表現できない「何か」を持っている気がするのだ

 ウディ(ブルース・ダーン)は頑固さは相変わらずだが最近、めっきり老けてきているようだ。認知症も入り始めたかもしれない。そんな彼が、自動車道をよろよろと歩いている。パトカーが止まり、どこへ行くのかと聞く。ウディは「あっち」と指さす。「どこから」と聞かれ、後ろを振り向いてまた「あっち」と指さす。実はモンタナからネブラスカに歩いていこうとしているのだ。なぜ? 「宝くじで100万㌦が当たった」と思いこんでいるためだ。

 息子のデイビッド(ウィル・フォーテ)はインチキだと説得するが、聞く耳を持たない、仕方なくこの頑固親父についていくことになる。親子二人の旅が始まる。それにしても、行く先々のバーで出会うのは老人ばかり。走る車は日本車や韓国車ばかり。社会的活力などどこにもない。そんな中で親父は、生まれ故郷の街に立ち寄る。そこでも、言わなければいいのに「100万㌦が当たった」と吹聴。信じた面々との悲喜劇が始まる。もちろん、ウディの古なじみは「おこぼれ」にあずかろうと仮面の下の欲望をむき出しにする…。

 映画の「中流域」で広がるだけ広がった物語の「川」は、旅の終わりのネブラスカで一点に収束せざるを得ない。ウディが旅をしながら見た夢は、ゴールとともに終わるのか、それとも大逆転劇が待っているのか。ここで、アレキサンダー・ペインは極上の「もう一つの答え」を用意する。「人生の当たりくじ」とでもいうべき極上の答えを。

 モノクロでしか撮りようのないアメリカのよどんだ風景の中で、しかし、何か元気にさせられる「マジック」を我々は見る。カントリーウェスタンが聞こえそうなしつらえだが、どこか日本的でもある味わいの映画だ。

 ネブラスカ.jpg


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0