SSブログ

愛と贖罪の物語~映画「嘆きのピエタ」 [映画時評]

愛と贖罪の物語~映画「嘆きのピエタ」


 「ピエタ」は、磔にされたキリストを抱く聖母マリアをモチーフにした絵画、彫刻のことである。ミケランジェロの「サン・ピエトロのピエタ」は傑作とされている。

 ガンド(イ・ジョンジン)はチョンゲチョン界隈で高利貸しの取り立てを生業とし、零細な町工場で生計を立てる債務者たちからは「悪魔」と恐れられている。生まれた時から母を知らず、天涯孤独。そうした境遇が、彼にひたすら残忍な生きざまを選ばせている。返済のできない債務者には、問答無用で肉体に損傷を与え、保険金をとる。

 ある日、彼の前に母を名乗る女性ミソン(チョ・ミンス)が現れる。ガンドは心を乱しながらも、少しずつ彼女の愛を受け止めていく。それは、失うものは何もなかった彼の心に「失うことの怖さ」を植え付けていくことでもあった。

 ガンスが足を洗うことを決意したころ、ミソンは姿を消す。「失うことの重さ」をガンスが知ってくれれば、彼も立ち直ることができるだろう―。そう思い、一つの選択をする。ミソンは命を賭けてガンスを「抱きしめる」のである。

 その結末を目撃したガンスは、彼としての一つの決断をする。


 この映画のテーマは「贖罪」である。二つの魂が、迷いながらも覚醒し、背負った罪の重さを自覚する。その触媒は「愛」である。前半部分は無慈悲な暴力と血で染められている。町工場の旋盤機が、すべて凶器に見えてくるほどだ。後半は暴力と表裏一体で幼さを残す一人の男を包む、哀切感漂う母の愛。

 明け方の高速道をトラックが走るシーンは身が震えるほど鮮烈だ。


 

 それにしても、つくづく感じるのは韓国映画に比べて日本映画のなんとマイルドなこと。キム・ギドク監督の演出はエネルギーに満ち満ちている。韓国社会がまだ若く、それだけ「魂の奈落」もまた深いということだろうか。

 嘆きのピエタ.jpg

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0