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水準以上のスパイ映画~「ベルリン・ファイル」 [映画時評]

水準以上のスパイ映画~「ベルリン・ファイル」


 ジョン・ル・カレかフォーサイスあたりが原作を書きそうなタイトルの映画だが、純然たる韓国映画である。「ベルリン」はかつて冷戦を象徴する都市であったが、いま冷戦期の分断をそのまま残す地域は朝鮮半島をおいて他にない。観る者にそうした連想を生じさせる映画である。そして、ベルリンは北朝鮮最大の在外公館がある都市でもある。このことも映画のストーリー展開に大きく影響する。

 北朝鮮の諜報員ピョ・ジョンソン(ハ・ジョンウ)は、武器取引現場を韓国情報院のチョン・ジンス(ハン・ソッキュ)に嗅ぎつけられ、九死に一生を得る。なぜ漏れたかを探るうち、通訳をしている妻リョン・ジョンヒ(チョン・ジヒョン)への疑惑が持ち上がる。これにCIA、モサド、ロシアの武器ブローカー、中東の過激派組織が絡んで一気に緊迫感が高まる。

 しかし、謎を追っていくうち、北の巨大な謀略があぶりだされる。キム・ジョンイルからキム・ジョンウンへと権力が移行する。その間隙をぬって、在外公館の資産をわがものにしようとする軍部の大物の陰謀である。その一端をつかんだジョンソンもまた、「二重スパイ」の汚名が着せられていく―。

 緊張感あふれるアクションは、もはや韓国映画のお家芸と言っていい。チョン・ジヒョンの儚げな表情もまたいい。ハン・ソッキュもまた演技に厚みがある。ストーリーがやや複雑で、時事的な知識がないと消化しきれないうらみはあるが、なかなかによくできたスパイ映画だ。かつての「寒い国から帰ってきたスパイ」のような奥行きとスケール感はないが、それは時代が違うのだからないものねだりだろう。ラストシーンは続編を期待させてくれる。

ベルリンファイル.jpg 

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たんたんたぬき

ル・カレの文字に反応してしまいました。韓国映画あまり見ないのですが、これは興味湧きます。欧米作品でスパイものというと、過去が舞台の作品がほとんどになってしまいましたから、この国が現在進行形だということを再認識しました。
by たんたんたぬき (2013-07-16 18:38) 

asa

≫たんたんたぬきさん
スパイ映画は「現在進行形」に勝る要素はありません。
それだけの迫真力のある映画だと思います。
合わせて、ヨーロッパの古都を舞台にしながら位負けしない韓国映画の実力も分かります。
by asa (2013-07-17 11:46) 

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