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やっぱり活劇は面白い~映画「ミケランジェロの暗号」 [映画時評]

やっぱり活劇は面白い~映画「ミケランジェロの暗号」


 むかし「大脱走」という映画があって、いかにもアメリカ人らしいスティーブ・マックイーンが主役だった。その面白さのエッセンスは、戦争の是非やヒューマニズムや、そんなものはひとまず置いといて、スポーツのゲームのように捕虜収容所からの脱走計画を描いたことにあった。だからそこでは善人と悪人は初めから決まっていた。ナチは100%の悪であり、それと闘うものは100%の善である。

 映画はしょせん楽しむもの、という観点からすれば、こうした道具立てもあり、なのである。

 「ミケランジェロの暗号」もまた、ナチは100%の悪である。その彼らに知能戦を挑み、最後にまんまと勝利をおさめる。駆け引き、トリック、どんでん返し。「大脱走」のようなアメリカン・スポーツの味わいとは違うが、やっぱりここはゲーム感覚、いうなれば大活劇の魅力を楽しめばいいのであろう。

 映画によっては、少々ストーリーを書いたからといって「観る」楽しみが減るわけではない、というのもあるが、この映画に関しては、ストーリーを明かすことにはよほど慎重でなければならない。それこそ身も蓋もないことになりかねない。


 ミケランジェロ1.jpg


 そういうことを重々、承知の上で映画の大枠だけを紹介しておこう。
 イタリアとの同盟関係を強化したいヒットラーは、ムッソリーニにある贈り物を計画する。400年前に盗難にあったとされたミケランジェロの絵画を、ユダヤ人の画商がひそかに持っているという情報を得たからだ。そこで画商夫婦とその息子を収容所に送り、ナチのSSが力ずくでミケランジェロを手に入れる。しかしそれはよくできた贋作だった。画商は収容所で亡くなるが、死の直前に謎めいた言葉を残す―。

 ああ、もうこれ以上書いてはいけないだろう。後は観て確かめていただきたい。一つだけ言えば、ラストはまんまとナチを欺いてスカッとするようにできている。ストーリー・テリングの勝利だ。全体を通して重く仕上げなかったところがいい。

 画商の息子ヴィクトール・カウフマンを演じるモーリッツ・ブライブトロイは好演だが、収容所に送られてなおポッチャリ体形というのはやや興ざめ。ナチの一員としてのし上がろうと野心を燃やすルディ・スメカル役のゲオルク・フリードリヒ(「アイガー北壁」に出ていた)がなかなかいい。2010年、オーストリア製作。最近、ヨーロッパの小国が面白い映画を作っている。

 ミケランジェロ2.jpg

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