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原発めぐる謎の事件~映画「私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?」 [映画時評]


原発めぐる謎の事件~

映画「私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?」


 「原発」は社会を二分するアジェンダである。そしてフランスは、再生可能エネルギーへ舵を切るヨーロッパ諸国では珍しく、エネルギー需要の8割以上を原発で賄う国である(2022年時点)。原発産業を支えたのはアレバ社(経営危機で再編、2017年にオラノ社が引き継ぐ)。そのアレバで起こった事件と、背後で見え隠れする陰謀めいた計画を映画化した。

 モーリーン・カーニー(イザベル・ユペール)はアレバのCFDT(フランス民主労働組合連盟)代表を務める。5万人の雇用が彼女の手腕にかかっていた。201212月、パリ近郊の自宅で彼女の衝撃的な姿が家政婦に目撃された。頭に布をかぶせられ手足はテープで固定、スカートの下の局部にはナイフの柄が突っ込まれていた。
 数か月前、アレバで大きな動きがあった。心を通じていたアンヌ・ロベルジョン(マリア・フォイス)から、大統領命令で社長ポストを外れることを知らされた。後任は誰が見ても無能なウルセルという。さらにフランス電力公社(EDF)からの密告で、原子炉製作が中国に全面移管されると知る。雇用への影響を危惧したモーリーンは、真偽を確かめるべく奔走。最中に事件は起きた。
 捜査はなおざりで、レイプは自作自演と結論付けられ、逆にモーリーン自身が訴えられた(誣告罪?)。一審有罪で控訴、自作自演は否定されたが、最終的に彼女自身が訴えを取り下げたため事件の核心は闇に葬られた。原子炉製作は情報通り、2020年から中国に全面移管された―。

 原題は「La Syndicaliste」。そのまま訳せば組合主義者。労働運動に携わる女性を描いたかといえばそうでもなく、アレバで労使協調路線をとる二人の女性、という構図からフェミニズムが主題のようでもあり、フランスの原発事情かと思えばはるか後景にすぎない、というわけでどこにピントが合っているか判然としないのが弱点。しかし、全体にドキュメンタリータッチで、イザベル・ユペールが演じたモーリーンのキャラクターも得難く、面白かった。うがった見方をすれば、現在進行形にある原発の闇を描くにはここまでが限界、ということかもしれない。
 2022年、フランス・ドイツ合作。ジャン=ポール・サロメ。


モーリーン.jpg


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