閉塞感漂う共同体の「いま」~映画「ヴィレッジ」 [映画時評]
閉塞感漂う共同体の「いま」~映画「ヴィレッジ」
山間の集落。伝統の薪能。唯一の収入源ともいえるごみ処理場。閉塞感漂う人間関係。こんな取り合わせで、凝縮された共同体の「いま」を描く。
霞門村の神社のはるか上に、処理場はある。周囲の景観とは明らかに不釣り合いな、巨大でグロテスクな外観。若者・片山優(横浜流星)は、そこで働いている。母親がつくった借金返済のため、夜は不法投棄を行っている。彼は、ムラから十字架を背負わされていた。数年前に父が起こした放火殺人事件。ごみ処理場誘致反対派のリーダーだった父は最後には一人となり、追い詰められて薪能の夜、舞台に火を放った。父の犯罪は息子とは関係ない、といっても通らなかった。
かつて付き合っていた中井美咲(黒木華)が7年ぶり都会から帰り、優の生活に変化が生じた。美咲はムラの広報を担当。ごみ処理場の案内人に指名された優のガイドぶりは見学の小学生らに好評だった。優の表情は明るくなり、美咲と同棲も始まった。
ムラのワル大橋徹(一ノ瀬ワタル)が美咲を襲った夜から、優の身辺も暗転する。ごみ処理場から不法廃棄物のほか、徹の遺体も発見された。誰が殺害したのか…。
徹の父修作(古田新太)は村長を務め、政治家や反社会勢力ともつながる権力者だった。一連の事件を美咲に押し付け、優に「手を組もう」と持ち掛ける。そこで優の取った行動は…。
輪廻を思わせ、閉塞感漂うストーリー。能のあやしい美がかぶさる。ごみ処理場の、自然と異質な存在感。これが日本社会の縮図、といった作品である。ただ、全体に漂う過剰な重苦しさが気になる。
2023年、監督藤井道人。
2023-04-23 10:09
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