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これは対岸の火事なのか~映画「国家が破産する日」 [映画時評]

これは対岸の火事なのか~映画「国家が破産する日」

 

 漢江の奇跡をへて韓国は29番目のOECD加盟国となり、経済先進国の仲間入りに沸いていた。しかし1997年、突然の通貨危機に見舞われた。外貨準備高は不足し破産目前だったが、IMF緊急融資によって危機は回避された。その時、得たものと失ったものは何か。ドキュメンタリータッチで描いたのが「国家が破産する日」である。

 韓宝鉄鋼と起亜自動車の経営破たんは韓国経済危機に拡大し、株価と為替の急落を招いた。信用失墜を懸念した米国資本は相次いで撤退。国家は破産の危機に直面した。

 韓国銀行の通貨政策チーム長ハン・シヒョン(キム・ヘス)は早くから通貨危機を予測、報告書を上げた。しかし、政府の反応は鈍かった。ようやく対策会議が開かれ、ハンは破産までの猶予は7日しかないと訴えた。この事態を国民に知らせるべきだとするハンに対し、財務局次官パク・デヨン(チョ・ウジン)は混乱回避のため極秘に対策を進めると主張した。

 その後の対応をめぐっても、ハンとパクはことごとく対立した。パクはIMF融資によって乗り切ろうと主張。ハンは、IMFが融資の前提としてハードルの高い構造改革を提案するだろう、とした。当初、経済首席はハンの案に同意、穏健な対策をとろうとしたが、経済首席は更迭。後任にIMF融資に肯定的な人物があてられた。ハンは、背後にパク次官の動きがあったとにらんだ。

 結局、IMF融資が決まり、専務理事(バンサン・カッセル)ら担当者との対策会議が開かれた。提示されたのは、予測通り韓国内の中小企業にとって死活問題となる厳しいものだった。

 政府金利を12.5%から30%に上げる、外国資本の参入を認める、労働力市場の自由化―非正規労働を認める―など6項目。返済に窮した零細業者が次々倒産するのは目に見えていた。専務理事と同じホテルに米国財務省高官が泊まっていることを目撃、背後で米政府が動いていることを確信したハンはIMF融資を断り、国家を破産させる道を選ぶべきだと主張したが、既に時は遅かった。6項目の提案は認められ、経済危機は乗り越えたが、国内自殺率は前年比42%も増えるに至った。

 そして20年後。ハンが経営する金融コンサルタント事務所を政府の若い官僚が訪れ、経済危機対策へ協力を求めた。ハンは「目を見開いて世の中を見ること。二度と負けたくはない」と応じた。

 こういう映画なら韓国の右に出るものはない、というぐらいうまい作りだ。韓国はこの時の危機から10年後にリーマンショックの余波を浴び、さらに10年後(つまり今)、新たな危機の予兆におびえている。

 ところで、日本はどうだろうか。日銀による「異次元」の金融緩和によって円安、株高が維持されているが、OECD調査によれば、この20年間一般労働者の実質賃金はダウンしている。つまりカネが回っていない。ボデーブローはじわじわと利いているはずだ。経済成長なしの超高齢化社会にかかわらず予算は拡大を続けている(3分の1は高齢者向け社会保障費だ)。防衛費は、米国の言い値でF35、イージスアショアを買い入れ(総額で2兆円?)、トランプ大統領から「日本は裕福な国」と持ち上げられている。日銀がせっせと購入する国債がただの紙切れと化す日は本当に来ないと言い切れるのか。ひょっとしてこれは対岸の火事ではないのではないか。 

 2018年、韓国。原題は「Default」。

 


国家が破産する日2.jpg

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