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いま、シリアに何ができるか~映画「ラッカは静かに虐殺されている」 [映画時評]

いま、シリアに何ができるか~

映画「ラッカは静かに虐殺されている」

 

 シリアの美しい都市ラッカ。IS(イスラム国)が2014年に支配下に置き、「首都」と位置付けて外部との交信を絶つに至り、そこで何が行われたか、世界に知られることはなかった。イスラム教の理想の地が出現したかのようなプロパガンダ映像が一方的に流される。立ち上がったのが現地市民を中心にした「ラッカは静かに虐殺されている」(“RBSS”= Raqqa is Being Slaughtered Silently)だった―。

 彼らの活動ぶりをドキュメンタリー映画にまとめたのが「ラッカは静かに虐殺されている」である。

 RBSSのメンバーは市民記者として、スマホを武器にSNSにラッカの画像を流し続ける。そこで行われたのは究極の恐怖政治だった。斬首された遺体。苦悩する市民。その画像がマスメディアの注目を浴び、世界に拡散する。これに対してISはRBSSに対して処刑宣告をする。暗殺の手を逃れるため、RBSSのメンバーの大半は国外に出るしかなかった。ドイツなどを中心にした国外拠点と国内メンバーとの緊迫のやり取り。

 一歩間違えば確実に死がある。そうした現場で、伝えられる事実。支えるのは、かつて普通の数学教師だった人物、不良学生だった若者…。何が彼らをこれほど駆り立てたのか。

 一つの答えは、「そこにジャーナリズムが生きているから」かもしれない。が、ことはそれほど簡単でもなさそうだ。715日、広島での上映後にシリア情勢について解説したアジアプレスの玉本英子さん(2015年にRBSSメンバーにインタビューした)によれば、ラッカは2018年現在、ISの支配下にはないがクルド系組織の支配下にあるという(細かく言えば、YPGSDFの支配下にある)。そのことにラッカ市民の抵抗感は根強く、RBSSには自由シリア軍へのシンパシーを感じる人が多いという。今も内戦下にあるシリアでは結局どこかの勢力と結びつかざるを得ない、ともいえる。そうした現地メディアの限界を考えた時、日本をはじめ国外のジャーナリストに何ができるか。玉本さんはそう問いかけた。

 監督はメキシコ麻薬戦争を追った「カルテル・ランド」のマシュー・ハイネマン。2017年、アメリカ。

 

YPG=クルド人民防衛隊

SDF=シリア民主軍

 

ラッカは.jpg


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