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国民不在の官邸独走解散~社会時評 [社会時評]

国民不在の官邸独走解散~社会時評

 

A)安倍晋三首相が9月25日の会見で衆院解散を宣言した。予想通り、説得力ある「大義」は示されなかった。

B)しいて言えば2019年に10%に引き上げ予定の消費税の増税分の使い道を変更するということと、対北朝鮮政策の是非を問うというものだった。

C)税金の使い道については毎年国会で議論していることだし、国会での議論を経て与野党膠着状態になれば解散・総選挙で問うというのもあるのかもしれない。しかし、消費税増税分の使途変更については民進党も言及しており、国会での議論がかみ合わないことだとは思えない。そうした議論を経て解散というのが筋で、やはりとってつけた感じが否めない。

B)対北朝鮮政策についても、今は対話ではだめ、圧力だといっているが、その先が見えない。米国は軍事オプションも含めすべてテーブルにあるといっているし、北朝鮮は国連でのトランプ演説をとらえて事実上の宣戦布告だといっている。圧力をかけ続けた後の出口をどう考えるのか。米国が軍事オプションをとるといった場合、反対するのかしないのか。それとも対話にこだわるのか。そこを示さないと、国民に問うことにはならない。

A)外交上の案件だから言えないのではないか。

B)もしそうなら、外交上の案件を選挙で問うということの自己矛盾が生じる。

A)いずれにしても、この二つを選挙の争点に、というのは無理がある。

野党の要求はどこへ

C)それよりも、臨時国会冒頭で解散という手法に問題がある。今度の国会は通常でも特別でもなく臨時国会。開く理由は「総議員の4分の1以上の要求」という憲法53条に基づいている。野党要求を長期間たなざらしにしたうえで議論なしの冒頭解散ということなら憲法軽視、国会軽視もはなはだしい。野党ももっと怒るべきだ。

A)解散権が自由に行使できると思っている政権側の専横ぶりが目立つ。926日付朝日に「解散権の肥大化『見通せず』」という佐々木毅・元東京大総長の記事が載っている。佐々木さんは小選挙区導入にあたって理論的な支柱だった。その人が、小選挙区導入によってこれほど解散権が肥大化するとは思わなかったといっている。最近よく耳にする「首相の専権事項」という言葉が使われだしたのも21世紀に入る前後からだという。それまでは首相が「解散」といっても派閥の論理で抑え込まれることがあった。

B)よく覚えているのは海部俊樹内閣。政治改革法案を出そうとしたが政権を支えていた経世会が反対、つぶされた。小沢一郎幹事長、金丸信副総裁のころだ。その次の「政治改革はやります。嘘はつきません」といった宮澤喜一首相に対する不信任が成立し、55年体制が終結した。

C)派閥が権力独走の抑止力になったということだ。今はそれがないから官邸が突っ走ってしまう。

B)「国難突破解散」などと、よく言う。いわば国民不在の官邸独走解散だ。

 

勝負所を押さえた小池会見

A)首相の解散権の直前、小池百合子東京都知事が緊急会見し「希望の党」の立ち上げを宣言した。

B)絶妙のタイミングだった。翌日の朝刊一面は首相の解散表明と小池知事の新党の記事が競い合う形になった。そこまで計算して小池会見はセットされたのだろう。

C)新党は若狭勝・細野豪志両衆院議員を中心に準備が進められたが、こうした作業をいったん「リセット」するという過激な言葉も出た。

B)裏には「そんなんじゃとても勝てないわ。あんたたちもういいわよ。後はあたしがやるから」という小池さんの思いが透けて見える。もっとも本人に聞いたわけではないが。

C)これも聞いたわけではないが、若狭さんたちは安倍首相の会見を聞いたうえで戦略を練ろうとしたのではないか。そこを「機先を制すべし」という小池さんが引き取った。

A)それだけに、小池さんが会見で披露した政策は粗雑で付け焼刃の印象が強い。

B)ただ、勘所は押さえている。特に脱原発。会見のすぐあと、さっそく小泉純一郎前首相と会談した。大きなアピールになる。少なくとも世論の半分以上は脱原発を志向しているのだから。

 

コミュニケーション能力の違い

C)一気に安倍VS小池の構図が出来上がった。25日夜の民放もそろって安倍、小池両氏のインタビューを流した。特徴的だったのはコミュニケーション能力の違いだ。安倍首相にはコミュニケーション能力がない。民放の報道番組に出ても、聞く耳を持たず一方的に持論をしゃべるだけ。キャスターたちが困惑の表情で割って入る場面がいくつもあった。「こんな人たちに負けるわけにはいかない」という秋葉原での発言や国会で福島瑞穂議員の質問に「あなた責任はとれるんですか」といった恫喝で答えた場面が思い起こされた。森友・加計学園問題でのわずか半日の衆参閉会中審査で「丁寧に答弁させていただいた」とも述べた。こうした首相の不誠実な姿勢に国民はうんざりしている。小池さんは首相と国民のこうした乖離を巧くついているといえる。二人のインタビューが続くと、その違いがよくわかる。

B)小池新党は、いちおう自民党と差別化を図ろうとしているが、基本路線はそう違わない。そのうえでもし小池旋風が起きるとすれば、国民との対話能力の差だろう。

今後の展開は

A)今後はどういうストーリーが考えられるか。

B)単純に過半数をとって政権奪取というのは考えにくい。あるとすればキャスチングボートを握って連立政権のトップに立つかたちだ。

A)日本新党の時のスタイル。あの時、小池さんは国会議員のデビュー戦だった。そういう意味では、ある民放のインタビューで、首班指名では「公明代表の山口那津男さんがいい」といったのは意味深だ。

B)ただ、小池さんが首班指名の対象になるには国会議員になっていなければならない。

A)公示まであと2週間ある。スタートラインはひかれたから、これから各党の票読みが本格化する。その結果次第では、小池さんの翻心もゼロではないだろう。


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