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ただの日常が、しがらみに変わるとき~映画「二重生活」 [映画時評]

ただの日常が、しがらみに変わるとき~映画「二重生活」


 大学院生の白石珠(門脇麦)が、教授・篠原博(リリー・フランキー)の指導に従って修士論文を書くため「理由なき尾行」を行う。選んだ対象は、まったく必然のない隣家の男、石坂志郎(長谷川博己)。出版社に勤め、美人の妻と子供が一人いる。平凡に見えた男の「生態」を探るうち、その存在の被膜とはかけ離れた姿が見え始める。

 尾行は、人間の存在の根源を突き止めるためのものだった。しかし、そんな哲学的理由をよそに、珠はどんどん、尾行の後ろめたくもスリリングな魅力にはまってしまう。平凡な暮らしをする一人の男が抱える内面の修羅場。どこか浮世離れした教授が人知れず抱える悩み。そんな中で珠は同棲相手の鈴木卓也(菅田将暉)ともぎくしゃくし始める。

 ただ流されていれば何とも感じない日常が、他人の深淵をのぞき込むという行為によってどうしようもないしがらみを心の中に呼び起こす。とても不思議な映画である。りりー・フランキーは相変わらずうまい。監督・岸善幸。

二重生活.jpg


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