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あの名作にはとても及ばない~映画「ギリシャに消えた嘘」 [映画時評]

あの名作にはとても及ばない~映画「ギリシャに消えた嘘」

 「太陽がいっぱい」の原作者パトリシア・ハイスミスの「殺意の迷宮」を映画化した。しかし、あの名作「太陽がいっぱい」の、地中海のめくるめく光と影の中での艶っぽさとニヒリズムを期待すると裏切られる。そもそも、ハイスミスの原作の「色」はあの映画にはほとんど投影されてはいない。原作は心理小説に近い地味さであり、「太陽がいっぱい」はあくまでもルネ・クレマンとアラン・ドロンがいたからこそ世に出た作品といえる(ニーノ・ロータを加えてもいい)。

 では、この「ギリシャに消えた嘘」はどうだろうか。どちらかといえばハイスミスの色調に近い。つまり、犯罪心理小説風で、ストーリーは地味である。米国人青年ライダル(オスカー・アイザック)は父の葬儀にも出ず、ギリシャの遺跡群で観光ガイドをしている。ある日、金持ち風の男女と出会う。チェスター・マクファーランド(ヴィゴ・モーテンセン)とコレット・マクファーランド(キルスティン・ダンスト)である。ガイドを引き受けるうち、ホテルでの殺人事件に巻き込まれてしまう。追ってきた私立探偵を、チェスターが誤って殺してしまうのだ。そこから3人の関係はもつれ始める。

 一見富豪と思えた男が実は詐欺師であったり、米国の有名大学を出てモラトリアム人生を楽しんでいたライダルが意外に素直に帰国することになったり、と物語の底は浅い。言い換えれば「太陽がいっぱい」にあったような時代性はない。救いはヴィゴ・モーテンセンの渋い存在感であり(サスペンス映画では悪役が得をする)、背景にあるギリシャの遺跡と風土である。オスカー・アイザックは売れないシンガーを演じた「インサイド・ルーウィン・デイビス」の名演があるだけにもったいないなあ、という感じだ。映画の出来としては並みの上といったところか。

ギリシャに消えた嘘.jpg 

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