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極秘指令をめぐる綱渡りの交渉~映画「パリよ、永遠に」 [映画時評]

極秘指令をめぐる綱渡りの交渉~映画「パリよ、永遠に」

 「将校のみ閲覧」「機密・緊急」と書かれた命令文がベルリンから発せられたのは、1944年8月23日午前11時だった。受け取ったのはドイツ軍のパリ防衛司令官、ディートリッヒ・フォン・コルティッツ。命令文には、セーヌ川にかかる橋のすべてを破壊せよと書かれていた。文末はこう結ばれていた。「もし、敵の手中に渡す時には、パリは廃墟となっていなければならぬ」

 25日午後1時すぎ、ヒトラーはこう問いかけた。「パリは燃えているか」。しかし、パリは燃えてはいなかった。ヒトラーの厳命にもかかわらず、なぜパリは燃えなかったか。命令伝達から2日間、パリでは何が起きたのか。それを追ったドラマである。

 しかし、いわゆる戦争映画を期待すると裏切られる。戦闘シーンはほとんどなく、遠くで銃声が聞こえるのみである。全編83分のほとんどは、2人の対話と駆け引きが展開される。原題「Diplomatie」とは、フランス語で外交交渉のこと。交渉するのは、コルティッツ将軍(ニエル・アレストリュプ)と、パリで生まれ育ったスウェーデン総領事ラウル・ノルドリンク(アンドレ・デュソリエ)。

 ノルドリンクは秘密の通路を通って、ドイツ軍のパリ司令部が置かれたホテルに潜入する。既に、連合軍が迫っている。パリに入れば市内のレジスタンス勢力と呼応し、たちまち全域は制圧されるだろう。ドイツ軍がパリを失えば、セーヌ以北の沿岸原野全体が失われ、兵は潰走する。既にノルマンディーでドイツ軍は決定的な敗北を喫し、東ヨーロッパはソ連軍が制圧していた。こうした戦局に至って、ヒトラーは狂気の指令を下したのである。

 しかし、ヒトラーの狂気を知りつつも、コルティッツには命令に背けない事情があった。将校の家族をベルリンで人質にした親族連座法の存在である。命令に背けば家族が処刑される―。

 これ以上書けば興ざめというものだろう。ノンフィクションの名作「パリは燃えているか?」のさわりの部分を映画化した。

 パリよ永遠に.jpg


 


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