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やっぱり沖縄に海兵隊は不要~濫読日記 [濫読日記]

やっぱり沖縄に海兵隊は不要~濫読日記

「虚像の抑止力 沖縄・東京・ワシントン発 安全保障政策の新機軸」(新外交イニシアチブ編)

虚像の抑止力.jpg  「虚像の抑止力」は旬報社、1400円(税別)。初版第1刷は2014825日。執筆者はほかに半田滋、猿田佐世氏。















 沖縄では連日、辺野古新基地建設をめぐって熱い闘いが続けられている。しかし、国はなぜ、普天間飛行場の辺野古移設(本当は移設ではなく、新基地建設なのだが)にこだわるのか。

 普天間移設先を「最低でも県外」と言った鳩山由紀夫首相はその後「学べば学ぶほど抑止力の重要性が分かった」として前言を翻した。果たして沖縄の米軍基地は「抑止力」たり得るのか。この点を、日米の5人の防衛問題専門家が徹底的に解き明かした。

 まず柳澤協二氏が「普天間」の問題点を整理する。①海兵隊が沖縄に存在することが抑止力であるという論理のウソ②普天間移設・返還が進まなかったのは、「移設なければ返還なし」とすり替えたことによる③辺野古移設は、より人口が少ない地域に負担を背負わせることで問題の不可視化につながる―である。

 そのうえで、屋良朝博氏は、アジア太平洋地域約10万人の米軍のうち、約4分の1が小さな沖縄に押し込められており、その中で、沖縄だけで編成できる機動部隊は2000人規模の海兵遠征隊(MEU)に過ぎないことをあげ、例えば朝鮮半島有事で沖縄海兵隊が提供できる役割は極めて限定的だと指摘する。つまり、沖縄が便利なのは、MEUの洋上パトロール基地としての機能だという(この項はマイク・モチヅキ氏らの引用による)。

 ではなぜ、米軍は沖縄に居続けるのか。日本側から見れば「軍事上の理由ではなく政治的な理由=本土では受け入れ先がない」(森本敏元防衛相)であり、米側から見ればカネである。つまり、年間3600億円という手厚い「思いやり予算」が、米軍を沖縄にひきつけている。

 さらにマイク・モチヅキ氏は、尖閣、台湾、朝鮮半島での有事で、どのようなシナリオが存在するかをみた上で、抑止力としての沖縄の海兵隊の無力さを指摘する。そして、対中国をにらんだ時、米国の軍事アセットを沖縄に集中させることは脆弱性が増してしまい、抑止力自体を弱体化させかねないとする。したがって海兵隊部隊のグアムに移転という米軍再編計画は沖縄の負担軽減のためではなく、抑止力強化のためのものであると指摘する。

 我々のような防衛・安全保障の素人が考えても、海兵隊とは殴りこみをかけ、敵陣にいち早く橋頭保を築く部隊であろうから、このような戦力が極東、例えば尖閣で活動するなどとはとても想定できない。有事になればまずは制空権、制海権の争いになることは目に見えているからだ。

 本書の編集を担った「新外交イニシアチブ」は、外交政策へのさまざまな提案を行うことを目的に2013年つくられた。本書の執筆陣でもあるマイク・モチヅキ氏、柳澤協二氏のほか、鳥越俊太郎、山口二郎氏らが理事を務める。ワシントンでのロビーイング活動や沖縄のキーパーソンの訪米コーディネートなども行う。沖縄住民の闘いの確実な援護になるに違いない。

虚像の抑止力 沖縄・東京・ワシントン発 安全保障政策の新機軸

虚像の抑止力 沖縄・東京・ワシントン発 安全保障政策の新機軸

  • 作者: 柳澤 協二
  • 出版社/メーカー: 旬報社
  • 発売日: 2014/08/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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