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ある草莽伝~映画「ジミー、野を駆ける伝説」 [映画時評]

ある草莽伝~映画「ジミー、野を駆ける伝説」

 昔読んだ本に、松下竜一の「疾風の人 ある草莽伝」があった。たしか、福沢諭吉の親戚でありながら福沢の暗殺を企て、西南戦争で西郷の側に身を投じた人物のことが書かれてあったと記憶する。書棚のどこかにしまいこんでいると思うが、見つからないので頼りない記憶の断片にすがったあてずっぽうで書いている。

 なぜ、このような本を思い出したかというと、「ジミー、野を駆ける伝説」をみたからである。この映画は、アイルランドの「草莽の人」を描いたのではないかと思ったのだ。ちなみに、「莽」とは、岩波国語辞典によると草原のことである。

 さて、映画である。1930年代のアイルランド。内戦の時代にアメリカへわたり、10年ぶりに故郷の土を踏んだジミー・グラルトン(バリー・ウォード)は、若者たちが不当な抑圧を受けているのを知り、閉鎖された教会や集会所を次々と開放していく。これを神父のシェリダン(ジム・ノートン)はこころよく思わず、老人たちとともにジミーの前に立ちふさがる。若者たちがダンスなどの娯楽に興じることが、堕落に思えるのである。こうした宗教的不寛容は、ジミーを「アカ」呼ばわりすることにつながり、やがて強権的な手段を呼ぶことになる。

 トラックの荷台に乗せられ、連れ去られるジミーを、自転車に乗る若者たちが追う。次世代に向けて、確実に何かが播かれたのである。

 「麦の穂を揺らす風」で、独立戦争から内戦に至るアイルランドを描いたケン・ローチが、内戦後のアイルランドを描いた。地味だが味わいのある作品である。

 ジミー、野を駆ける伝説.jpg


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