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時代と王のミスマッチ~映画「ルードヴィヒ」 [映画時評]

時代と王のミスマッチ~映画「ルードヴィヒ」

 

  芸術至上主義と美貌のゆえに「狂王」と呼ばれたルードヴィヒⅡについてはヴィスコンティの名作「ルードヴィヒ2世 神々の黄昏」がある。そのため、どうしてもこの近作は地味に見えてしまう。

   マリー・ノエル、ピーター・ゼア両監督による作は、史実に忠実につくられたと思える。ルートヴィヒⅡの若き頃と晩年はそれぞれ別のキャスティングだが、残された肖像と比べても雰囲気はよくつかんでいるようだ。

   ルードヴィヒは18歳で即位したバイエルンの王で、同時期にはプロイセンの鉄血宰相ビスマルクがいた。諸侯の統一を進めるビスマルクはバイエルンに戦争を仕掛ける。プロイセンとの対抗上、バイエルンはオーストリアと手を結ぶが、このあたりの流れは実際の歴史を踏まえていないと分かりにくい。結局、戦争に敗れたバイエルンはプロイセンに多額の賠償金を払うが、ルードヴィヒはワグナーに傾倒したままで、政治にも口を挟ませる。ついには中世風のノイシュヴァンシュタイン城を山上に建てさせる。こうした行いが国民の反感を呼び、王の側近たちの危機感を募らせる。

   しかし、考えてみれば権力と戦争を嫌い、芸術が国民に平安をもたらすというのは現代から見れば至極あたりまえの感覚で、結局は時代とルードヴィヒがミスマッチであったということだろう。そう考えれば、こうした事例は歴史上よくあることなのかもしれない。ルードヴィヒも、時代が違えば名君であったろう。

ルードヴィヒ.jpg 

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