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アウトローから英雄へ~映画「ダラス・バイヤーズクラブ」 [映画時評]

アウトローから英雄へ~映画「ダラス・バイヤーズクラブ」


 むかし、黒沢明監督の「生きる」という映画があった。役所に勤める平々凡々、無気力な日々を送る男が胃がんで余命なん日と告知され、生きることの意味を考える中でヒューマニズムに目覚める、といった筋書きだった。

 「ダラス―」に登場するロン・ウッドルーフ(マシュー・マコノヒー)も、ある日HIVと診断され、「余命30日」と告知される。原因は女性との乱れた関係だった。しかし、彼は黒沢映画のようにヒューマニズムに目覚めたりはしない。もともと、アウトローのカウボーイである。そのハチャメチャぶりにますます磨きがかかる。

 彼は告知されるや否や、エイズとHIVについて猛勉強を始める。そしてメキシコまで、米国内で認可されていない薬を求めに行く。大量に仕入れるが、米国内でそのまま売れば密輸になり、薬事法にも触れる。そこで一計を案じる…。

 役作りのため21㌔減量したというマシュー・マコノヒーの怪演が見ものである。やけくそのようでタフ、合法も非合法もクソくらえ。そんなカウボーイ魂を、過酷な減量のためよれよれになった肉体で表現する。

 なぜだかロンは日本にも渡り、岡山の生物化学研究所「林原」でインターフェロンをあたる。日本では認可されているが、米国内ではFDA(食品医薬品局)が規制をかける、というとこれは逆「TPP」なのか。

 そんなこんなで、ロン・ウッドルーフは未認可の薬をついに頭の固いFDAに認めさせてしまい、社会的ヒーローになってしまう。で、これだけのストーリーは30日以内で収まらない。彼は結局予定をはるかに超える9カ月を生きたのだそうだ。ニュースで実際に取り上げられた実話である。

 「余命なん日」と言われてあなたはどうしますか、という問いに対して、これまでの罪滅ぼしにと小さな公園をつくってしまう「生きる」はなんだかとても日本的なほのぼのとした答えだが、「ダラス―」はとてもアメリカ的なヒリヒリした答えだなあ、と思ってしまった。

 ダラス.jpg


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