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愛と革命と逃亡者~映画「レ・ミゼラブル」 [映画時評]

愛と革命と逃亡者~映画「レ・ミゼラブル」


 愛と革命と逃亡者。ドラマをせつなくさせる3題話である。この3要素を重厚に盛り込んだ作品が「レ・ミゼラブル」といえよう。3時間弱の長編で、ご多分にもれず「ミュージカルはちょっと…」という口だが、少なくとも退屈することはなかった。

 原作「ああ無情」はだれしも、幼少期に読んだ一冊。しかし、はてこんな大河ドラマのような内容だったかな…。ビクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」について調べてみると、たしかに全4巻の大小説だとある。我々が幼いころ読んだのはおそらくエッセンスをまとめたダイジェスト版であろう。ついでにいうと、この小説を日本で本格的に紹介したのは黒岩涙香で、掲載したのは萬朝報紙上だったらしい。萬朝報はスポーツ記事や将棋の棋譜を載せるなど日本初の大衆新聞で、民衆のエネルギーあふれるこの小説もそうした路線にぴったりだったのだろう。

 始まりは、我々にもなじみのエピソード。パン一切れを盗んで牢獄につながれたジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は脱獄を繰り返し、ようやく19年後に仮釈放となる。しかし、身分証には「危険人物」と書かれ、社会的更生もままならない。仮の宿を頼んだ教会では、高価な燭台を盗みだす。即座に警察に捕まり、司教のもとにつきだされるが、司教は「それは彼に与えたものだ」と証言する。これを聞いてジャン・バルジャンは、改心を決意する。

 時代はナポレオン1世の没後、フランス革命が王政復古へと向かった時代。おそらく1815年から30年ごろまでにあたる。大衆は貧困にあえいでいる。こうした時代を背景に、ジャン・バルジャンは名前を変え、工場を興し、市長にまで上り詰める。工場にはファンテーヌ(アン・ハサウェイ)が働いていたが、借金のため売春婦に身を落とす。病の彼女に出会ったジャン・バルジャンは彼女の幼い娘コゼットを引き取る。しかし、背後には牢獄から彼を追い続けていたジャベール(ラッセル・クロウ)が迫っていた。このあと、飢えた民衆のためにたちあがる若者マリウス(エディ・レッドメイン)とコゼット(アマンダ・セイフライド)の恋、民衆につきはなされ破れ去る革命の夢、ジャン・バルジャンの必死の逃亡生活が絡み合い、せつない映画は最終局面へとなだこむ。

 たしかに、構成は重厚でありヒュー・ジャックマンもラッセル・クロウもすばらしい。なにより、薄幸の女性も堕ちた売春婦も聖なる幻の女性も演じきるアン・ハサウェイは見事である。だが、今の時代になんでこの映画なの?という違和感が、どうしてもぬぐいきれない。

「レ・ミゼラブル」.jpg 


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