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貧乏くじを引いた与謝野 [社会時評]

貧乏くじを引いた与謝野 

 亀井静香郵政改革・金融相が6日、衆院財務金融委員会で「世論調査に従って政治をやるなら政治家はいらない」と言っていた。小泉進次郎(自民)の「(郵政改革で)支持率0%の政党に振り回されている民主党はおかしい」との追及に対する答弁だった。亀井の言葉は、その通りであろう。節度なく世論の動向を最優先させた政治は行き詰まる。一方で、世論の支持がない小政党が、国家の根幹にかかわる郵政改革を取り仕切るのもまたおかしい。この点は小泉の指摘に軍配が上がる。亀井にしてみれば痛いところを突かれた。このあたりは佐藤卓己が著書「輿論と世論」で提示した問題意識にかかわるのだが、テーマが拡散するので今は触れない。要は「ポピュリズム=大衆迎合主義」をどう見るか、である。

 しかし亀井の思いはともかくとして、自民党末期から民主党まで、政権交代はあったもののポピュリズムの系譜はほぼ変わっていない。最近の典型でいえば、進次郎の父である小泉純一郎が筆頭であろう。ポスト小泉を担った安倍、福田、麻生の歴代政権もまた、大筋でこの流れを変えることはできなかった。

 こうした政治を見ていて、この男なら昨今のポピュリズムを変えられるのではないか、と思わせるひとりが、与謝野馨である。自民党最後の政権、麻生内閣では経済財政、財務・金融相を兼任した。経済企画と財政、金融をすべて担当するのは裁判でいえば検察と弁護と裁判官を兼任するようで本当はおかしいのだが、これも論点がずれるのでここでは触れない。政策通であることは間違いない。そのうえ、頑固でもある。よく知られた財政再建論者だ。この点、他のポピュリストとは一線を画す。自民党内が1990年代に政治改革=選挙制度改革=小選挙区制導入の議論でわきたち、党の重鎮・後藤田正晴が「熱病のようだ」とうめいた時も、中選挙区の維持を訴えていた。「世論調査で政治をするなら政治家はいらない」を地でいくところがあった。秘書として仕えた中曽根康弘元首相=これもまたポピュリストであるが=の背中を見て学んだせいだろうか、師匠とは逆の道を歩む。

 その与謝野がついに自民党を出て、10日に新党結成の運びになった。平沼赳夫・元経済産業相と手を組み、総勢5人。バックには石原慎太郎都知事や渡辺恒雄読売新聞主筆がつく。この顔触れを見て、どうしても与謝野だけが異質である。地道な政策通であり、いわゆる「タカ派」の肌合いではない。著書「堂々たる政治」を読んでも、大衆にこびたところがない。特筆すべき、すぐれた人間観察眼を持つ。だから著書の中での中曽根、田中角栄、小沢一郎に対する寸評は、一読に値する。他の「元青年将校」風のキャラクターとは一線を画したたたずまいだ。

 平沼と与謝野は高校の同級生で、そのことが影響しているのかもしれない。だが、たとえ仲良しでも政策的に異質な二人が組むことで、旗幟はまことに不鮮明となる。与謝野こそ今、大衆に迎合しない真の政策を推し進めるべきなのに、これでは最初から手足を縛られたも同然だ。

 知られているように、民主党幹事長・小沢一郎と与謝野は囲碁仲間である。では小沢とは手を組めるのか。答えは「イエス」だろう。「旧知の仲」だからというのではない。小沢と与謝野。このふたり「ポピュリズム」に対する姿勢を見ればよく分かる。どちらも大衆に迎合しない。スタンドプレーを嫌う。一見肌合いは違うが、ぐるっと回した手を背中で握り合う、そんな関係が見えてくる。

 与謝野71歳。年を考えれば新党は終着点にも見えるが、ここは彼の落ち着き場所ではない。今は貧乏くじだが、まだ一幕も二幕も働いてもらわねばならない場面がくるだろう。

 
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