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再び国母問題~Nさんへの手紙 [社会時評]

再び国母問題~Nさんへの手紙 

 Nさんのご意見、読みました。

 選手はまず紳士であるべきだ、というのはその通りだと思います。しかし、今の五輪はそれだけで済ましてしまえないほど、多くの問題を抱えているというのが私の認識です。同時に、一つの規範を一律にはめてしまいたくない、つまりそれぞれの文化は文化としてできるだけ認めたいという気持ちもあります。

 例えばスノボにはスノボの文化があり、国母選手はちょっと「突っ張ってしまった」のだろうと思います。会見で、記者の質問にまともに答えられないことも、確かに人格的な幼さを感じさせます。それでも国母選手の「わが道」は、できれば認めてあげたいと思うのです。もし、それができないのであれば、なぜスノボを五輪の種目に加えたのか。そこに、問題意識を置くべきだと思います。

 そこには、前回書きましたが、IOCの商業主義が露骨に見えます。別段、スノボを五輪種目にする必要はなかったのです。ではなぜサマランチ会長が強引に五輪種目に加えたのか。五輪への関心を維持したかったのでしょう。特に若い層の関心を引きたかったのではないですか。それはなぜか。

 五輪の崇高な理念を世界に分かってもらいたい…。そうではないでしょう。これまで築き上げたIOCの利権構造を守るためではないですか。

 国母選手が出たハーフパイプ決勝のテレビ視聴率は15%以上だったと聞きます。ということは、ことの是非をひとまずおけば、国母問題は商業的には成功につながったと言えます。IOCの五輪の利権の最大の柱はテレビ放映権料です。テレビ局はIOCに巨額の放映料を払い、そのカネの回収に努めます。そこで視聴率のアップは至上命題になります。

 だからこそ、テレビは五輪への関心をあおります。例えば22日付朝刊に「ジャンプラージヒル葛西8位」という記事が出ています。葛西選手は予選で1位でした。その選手が8位とは。その前日の新聞を読むと、からくりが分かります。40人が予選を通過し、W杯の上位10人と決勝を争うと、目立たない形で出ています。つまり、シード選手が10人いるわけです。葛西選手はそのなかで順位を二つ上げたわけで、その意味では健闘だったのでしょう。でもテレビはそんなことには触れず、日本選手にメダルの期待も―とあおります。すべては視聴率のため。

 もうお分かりでしょうが、五輪のスノボも商業主義=テレビの視聴率アップが背景にあると思います。別段、国母選手を擁護する気はありませんが、それよりも五輪の過剰な商業主義が気になる、というのが私の見方です。そんな中で五輪的スポーツ文化を押しつけるのも、どんなものでしょう。

 メダルの数で言うと(こうしたことにあまり意味があるとも思えませんが)今のところ、目立つのはドイツと韓国です。ドイツと日本は選手の養成にかける費用が10対1です。要はカネのかけ方だ、という言い方は成り立つと思います。韓国も相当の養成費をかけていると思います。それと国の勢いの差。日本は残念ながら落日の国です。

 それから、五輪の利権構造に組み込まれているのはもちろんテレビだけではありません。広告や販売事情から言っても、新聞もその中に入ります。要するにたいていのメディアは五輪の利権をあてにしている、と言ってもいいでしょう。

 広島市の五輪騒動にメディアがまともな批判を加えられない背景に、案外そうしたことが絡んでいるかもしれません。

 
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BUN

残念ながら国母選手の件は見のがした。ニュースでタラップを降りる姿を見たが、女房に指摘されるまでその着こなしにクレームがあることに気がつかなかった。平時では、制服は着崩すもんです。ASAさんの論評はさすがだが、昔NHKは髪が長いだけでグループサウンズを画面に登場させなかった、ことを思い出していた。
by BUN (2010-02-22 23:25) 

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