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小沢一郎は野村克也になれるか~財務相の交代劇 [社会時評]

 小沢一郎は野村克也になれるか~財務相の交代劇

 民主党政権が年明け早々からごたついている。藤井裕久財務相の辞任である。一応、健康悪化を理由として菅直人国家戦略担当が後任に就いた。77歳。政権交代後の予算編成を担うというのは相当の重圧だったのだろう。後任人事については「小沢の影がちらつく」などといろいろ言われたが、予算国会の乗り切りを考えれば順当なところではないか。
 ある全国紙が書いていたが、藤井は東大野球部のキャッチャーだった。元号が昭和から平成に変わったころだったからもう20年近く前になるだろうか。自民党にいた藤井と雑談していて思い出話を聞いたことがある。小沢一郎幹事長の時代だった。藤井も同じ派閥に属し、少壮の議員だった。
 今回の一連の騒動を見ていて、藤井の行動スタイルは、政治家になってもやっぱり「捕手」だったという印象が強い。ただ来たタマを受けるというだけでなく、投手にサインを出してゲームを組み立てるという意味での「捕手」である。例えば昨年、楽天の監督を退いた野村克也。選手時代には監督兼捕手という役回りを演じた。著者は忘れてしまったが(後藤正治だったか?)、巨人の森昌彦と藤尾茂のエピソードも記憶に残る。藤尾は強肩強打の超高校級キャッチャー。一方の森は弱肩貧打。レギュラーを取ったのは最終的に森だった。素質を見抜いた川上哲治監督はその後V9戦士を率いる。その差は「ゲームを組み立てる」能力だった。
 考えてみると、大蔵省―財務省はもともと「捕手」のポジションだという気がする。各省が出してくる予算要求という「タマ」を受けながら国のかたちを整えていく。主計官も務めた藤井は、まさしく捕手の中の捕手だったのだろう。
 しかし、民主党政権で藤井が不幸だったのは捕手がもう一人いたことだ。しかも、その男は剛腕の投手でもあり監督でもあった。藤井はしかたなく、来たタマを取るだけの「カベ」に徹するしかなくなってしまったのだろう。もちろん民主党政権には鳩山由紀夫という「エース」がいる。暫定税率をめぐって2人の投手が別々のマウンドから同時にタマを投げれば、さすがの藤井もミットを投げ出さざるを得なかった。そんな顛末が頭に浮かぶ。
 それにしても鳩山投手は腰が据わらない。投球フォームは定まらず、ボールもどこへ向かうか。小沢がマウンドに立たざるを得なかったのは、鳩山のふらつきも大きい。しかし宰相の資質とは分からないものだ。鳩山はなんとなく育ちの良さを感じさせ、国民に「まあいいか」と思わせる正直・率直さが表に出ている印象がある。安倍晋三や麻生太郎を見れば分かるが、育ちの良さがそのまま人柄に出て得をする人物はそうはいない。マウンドから下ろすにはまだ早い。軟投でピンチに意外なしぶとさを見せるかもしれない。
 さて、後任財務相の菅。この人も捕手のタイプではない。国家戦略室(このネーミングはなんとかならないものか)はもともと政権内捕手のポジションだったのだろうが、「ダマ菅」になってしまったのはキャラクターが合わなかったせいではないか。今後は財務相というマウンドでタマを投げる。就任会見でさっそく為替市場介入発言という「ボーク」をやってしまったが。
 昨年暮れ、ある経済専門紙で中曽根康弘元首相がインタビューに応じ、小沢の仕事ぶりについて「割合、自制してやってきた」と答えていた。その後で「鳩山君にどう適切な助言をするか」と続け「チャンスがあれば、首相をやりたいだろう」と言及した。前半部分は、そうだと思う。「二重権力」と言われるが、小沢にしてみれば「自制」しているほうだろう。「首相をやりたい」かどうか。この辺はもともとヤマっ気が多い中曽根が、自身になぞらえた感もある。本当のところは「?」だ。ただ、首相になるかはともかく、小沢の今の役回りは「捕手」であることに間違いない。本人が望んだかどうかは別にして、これまでの事例をみると小沢はマウンドに上がると結構、暴投が多い。
 与党でなければ生きていけない公明党は1月8日、政界を引退していた市川雄一元書記長を常任顧問に据えた。捕手というポジションは守りのシフトに入ったとき、ただ一人味方選手と向き合う位置になる。いまのところこうした守備位置にいるのは小沢だけのようだ。「一・一」も含めた守りのシフトに「キャッチャー小沢」が目を光らすことができるなら、民主党政権は当分続く。 
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