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亀井静香の純情 [社会時評]

亀井静香の純情 

 国民新党代表の亀井静香がいい動きをしている。国民新党は衆参8議席。社民党の12議席をも下回る。だがしっかりと政局の勘どころを押さえている。
 テレビで繰り返し流されたが、8日の基本政策閣僚委員会。菅直人国家戦略担当相が食ってかかった。「鳩山内閣を支えてほしい」という菅に「3党は対等」と譲らなかったらしい。その後の会見では「(俺は)ぶったたきあいの喧嘩ばかりしてきた男だから(後を引くことはない)」と言って見せてもいる。こうした言い方が、いかにも亀井らしい。「俺はもともと粗雑な男」と見ているもう一人の亀井がいるのだ。
 趣味は油絵。テレビ画面を通じてだが、作品を見たことがある。雑ではない。きれいな色彩で繊細な絵を描く。地元尾道であった映画監督・大林宣彦の新作試写会であいさつするのを聞いたことがある。選挙区対策とだけでは済まない、造詣の深さをのぞかせていた。大林とも長い交流がある。政治家としての普段の顔、いわゆるがらっぱちとは違う顔がある。
 あらためて、歩いてきた道をたどってみる。広島県北の農家の生まれ。広島市内の進学校に進む。学校批判のビラをまき、事実上の放校処分。東京の高校に拾われて猛勉強し東大に進む。安保闘争の警備のふがいなさに腹を立て、サラリーマンから警察官僚に。その後、自民党のふがいなさに腹を立て、政治家に。一念発起がいつでも人生の節目をつくっている。
 ごりごりの保守政治家と見られがちだが、若いころの言動を見るとそうでもない。大学時代はマルクス経済学に没頭した。今でも尊敬するのはキューバ独立をカストロと戦ったチェ・ゲバラだという。日本人では大塩平八郎。かつて石原慎太郎らと活動をともにし、思想的にはタカ派と見られがちだが、意外に社会民主主義に近い。小泉純一郎の市場原理主義に一貫して反対し、郵政をもとにもどしたり、中小企業者等金融円滑化臨時措置法(返済猶予法)を主導したり、というあたりにその傾向が出ている。運輸相時代、日航の客室乗務員を派遣社員にする動きに断固反対したのも記憶に新しい。結構まっすぐな「義」の人でもある。
 小泉政権下、いわゆる郵政解散ではライブドア・堀江貴文をぶつけられ大逆風の選挙だった。当時の映像としてよく流されるのが、雨中を傘もささずずぶぬれで遊説する姿。いうまでもなく、こんな演出をするもうひとりの亀井がいる。中選挙区時代にライバルだった宮沢喜一なら、とてもこんなことはしないだろう。周囲から勧められても断ったに違いない。しかし亀井は、周りに言われなくてもやる。このあたりが「下品」と揶揄される。実際、宮沢には嫌われた。政治家として入閣適齢期だったころ、ちょうど宮沢政権となり、人事で冷遇を受けている。
 その宮沢内閣を倒して反自民政権をつくったのが小沢一郎。そのとき首相だった細川護煕のスキャンダルを収集し退陣に追い込んだのが、元警察官僚・亀井静香。自社さ政権から社会党を引っこ抜き、小沢政局に幕を下ろしたのが亀井静香。しかし今、小沢と亀井が手を組んでいる。そういえば小沢と亀井は自自公政権でも手を組み、そしてたもとを分かっている。政治家とは分からない。
 もう遠い昔のことのようになってしまったが、鳩山政権発足時には「亀井防衛相」説もあった。一説には米側が難色を示してつぶれた。こんな話に「たら」「れば」は禁句だが、もしあのとき亀井防衛相が誕生していたら普天間問題は今頃どうなっていたか。惜しいことをした。 
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コメント 2

tomo

「ふがいなさ」に憤慨して事を始める。
亀井静香のキーワードですね。
彼の目には鳩山首相もふがいなく映っているのでしょう。
by tomo (2009-12-11 23:01) 

asa

政局の成り行き次第では「亀井政権」もゼロではありません。
by asa (2009-12-12 20:14) 

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