やっぱりタランティーノは天才、かな?~映画「イングロリアス・バスターズ」 [映画時評]
やっぱりタランティーノは天才、かな? |
B)そこは、あんまり気にする必要はないんじゃないか。タイトルバックでいきなり「アラモ」のテーマが流れたのにびっくりした。「ユダヤ・ハンター」と呼ばれるナチSSのハンス・ランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)が現れるシーンでは「エリーゼのために」と、どちらも、なんだか知らないがなんとなくマッチしている。
C)その辺が借りもののようで、やっぱりB級の映画。
B)いや、「アラモ」は実はこの映画の基本的テイストになっている。バスターズを率いるアルド・レイン中尉(ブラッド・ピット)が一生懸命表情を作っているけど、あれはジョン・ウエインのそっくりさんだよね。タイトルは日本語にすると「ろくでなしの野郎ども」といった感じで、これも西部劇風。
A)出だしのテンポはよかった。フランスの田園風景の中で白い大きな布が干される。その後の映画館のシーンを暗示しているようでもある。
B)ユダヤ人家族をかくまうフランス人とドイツ将校のやり取りを追うカメラが床下へとゆっくりパンして隠れた家族の恐怖の表情を映しだす。ありそうでないシーンだ。
C)ユダヤ人少女ショシャナ・ドレフュス(メラニー・ロラン)がひとり床下から抜け出して逃亡する。それを見逃してやる、なんてありえない。
A)あのSS将校は存在感があった。しかも英語、ドイツ語、フランス語をさりげなく使い分ける。オーストリアの俳優らしい。オーストリアは各国語が入り乱れている国だから、と言うこともあるのかな。
B)彼はカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した。
A)なるほどね。
B)バスターズの連中が殺害したナチの頭の皮をはぐ。レイン中尉がその前に「俺にはインディアンの血が流れている」とさりげなく言う。これも、西部劇が伏線にある。
C)でもグロですよね。気持ち悪いばかりで爽快感がない。バットでナチの頭を割る「ユダヤの熊」のキャラクターはデイビークロケットから?
B)どうなのかなあ。
A)タランティーノの映画にしてはストーリーがあるな、という感じだ。
C)逃亡した少女はその後、映画館の支配人になり…。でもどうしてそうなったかが今ひとつよく分からない。
B)細かいところはともかく、面白ければいい。
C)その映画館でナチ国策映画のプレミア映写会が始まる。そこでヒットラーも、ゲッペルスも暗殺される。…なんて無茶苦茶。歴史的事実はどうなるのって感じ。
A)想像力は史実を超えるってことでしょうか。
B)いや、真実は想像力を超える。
C)スクリーンの後ろに可燃性のフィルムを積み上げて火をつけ、映画館ごと焼きつくす。でもヒットラーはじめナチの要人が集合したイベントでスクリーンの裏ぐらい調べるんじゃないの?
A)まあ確かに。銃弾が足を貫通したのに翌日には何もなかったように歩き回る女優(ダイアン・クルーガー)なんて、実際にはありえないでしょう。ドイツ語など片言もしゃべれないレイン中尉らがヒットラーのいるイベントにタキシード姿でもぐりこむ、というのも荒唐無稽としか言いようがない。
B)スクリーンは炎上しているのにフィルムだけが回っている。家族を殺されたショシャナの哄笑が白煙に映し出されて、ナチの要人たちが右往左往し、虐殺される。どこかで見たような…。既視感のある映像だ。
A)落城、炎上するシーンで武将の哄笑だけが響き渡る、というのは日本人好みのシーンだ。「キル・ビル」ほどではないが、オリエントの映画をヒントにした部分も多いのではないか。
B)ショシャナが映画館の看板を一文字ずつ取り替えていくシーン。これも味がある。どこかの映画の1シーンかもしれない。
C)二重スパイを疑われた女優の足の傷跡に指を突っ込んでぐりぐり、なんて必要なのかしら。
B)グロも面白さのうち。そこをどう見るか。映像的にこうしたら面白い、というのを追求した映画。カツドウヤ魂ここにあり、という感じだ。
C)私はついていけないわ。
2009-12-08 11:56
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