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頑固おやじと看板娘~映画「高野豆腐店の春」 [映画時評]


頑固おやじと看板娘~映画「高野豆腐店の春」


 松下竜一は高校の成績も悪くなく進学を希望したが、家庭の事情から豆腐屋を継いだ。身体が弱かった竜一は豆腐作りに没頭できず、ため息をつくように短歌を作った。新聞の短歌欄で取り上げられ、人生が一変。「豆腐屋の四季」を書いた。作家人生が始まった。

 尾道の「高野豆腐店」は頑固一徹の辰雄(藤竜也)と看板娘の春(麻生久美子)の二人三脚で営まれていた。駅ナカのスーパーにも納めた豆腐は定評があった。辰雄は心臓に持病があり、先を心配する近所の取り巻きは、結婚したが離婚して戻った春の再婚相手を探し始めた。辰雄は複雑な心境で見守った。やがて有力候補が見つかった。イタリアンシェフの村上ショーン務(小林且弥)。
 病院に通ううち、辰雄にも親しい女性・中野ふみえ(中村久美)ができた。春はある日、村上とは違う男性を辰雄に紹介した。納品先のスーパーの担当者・西田道夫(桂やまと)だった。風采は上がらず辰雄は気に入らなかった。父と子は喧嘩別れし、春は家を出た。
 ここまでだと、小津安二郎のシリーズものを思わせる。笠智衆と藤竜也では、持っている味がずいぶん違うが。ところが後半、がらりと変わる。辰雄が、ふみえとの会話の中で、かつて職場を共にした親友が事故で死に、残った母子を引き取り、それが今の春だと明かしたからだ。果たして春は戻ってくるのか…。辰雄とふみえの関係は…。

 藤竜也はアクション俳優として売り出したがパッとしなかった。世間の注目を浴びたのは芦川いずみの夫としてだった。中年になると渋みを増し、テレビドラマで虚無的な感じが受けた。そして今、頑固一徹の老人は、はまり役である。豆腐は大豆と水とにがりでできている。それが天下一品になったり、ならなかったりする。冒頭にある竜一の豆腐も絶品と言われたらしい。さてこの映画、素材はシンプルだが、結果は。
 一つだけ言えば、板につかない広島弁(厳密にいえば備後弁)は若干気になる。
 2023年、監督三原光尋。


高野豆腐店.jpg


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