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上質で分かりやすいジョン・ル・カレ~映画「われらが背きし者」 [映画時評]

上質で分かりやすいジョン・ル・カレ

~映画「われらが背きし者」

 「裏切りのサーカス」「誰よりも狙われた男」以来のジョン・ル・カレ原作。二つの特徴がある。一つは「寒い国から帰ってきたスパイ」以来、「スパイ」自身を主人公にしてきたジョン・ル・カレが一般人を主人公にしたこと。もう一つは、伏線をちりばめて精巧な寄せ木細工のような組み立てがあまり見られなかったことだ。

 とはいえ、一般人を主人公にしたのは、サスペンスを高めるという意味では、効果的だった。その分ストーリーは単純化し、一本調子になったきらいがあるが。

 休暇でモロッコを訪れた大学教授ペリー(ユアン・マクレガー)は、レストランでうさん臭いロシア人ディマ(ステラン・スカルスガルド)と出会う。そして、USBメモリーを渡され、英国当局に届けてくれと頼まれる。彼はロシア・マフィアのマネーロンダリングを担当していたが、ボスが替わったため身の危険を感じ、MI6に保護を求めているのだ。仕方なく引き受けたペリーは、闇社会のブラッドマネーをめぐる攻防戦に引き込まれていく…。

 と、こんな具合である。ジョン・ル・カレはこれまでスペイ戦での心理劇を得意としたが、これは007のような分かりやすいストーリーである。舞台がモロッコ、スイス、フランス、英国とめぐり、畳みかけてくる展開も飽きさせない。ジョン・ル・カレだから、そこここにスコッチのような上質の香りが立ち上るのも心地いい。ちょっと軽くて分かりやすい「ジョン・ル・カレ」が楽しめる。2016年、英国。

 それにしても、冷戦期のスパイものから手掛けているジョン・ル・カレは何歳になったのか。ウィキペディアで調べたら、来年秋で85歳だという。元気なものだ。



われらが背きし者.jpg


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