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内戦を経験した者の絶望と矜持~映画「ディーパンの闘い」 [映画時評]

内戦を経験した者の絶望と矜持~映画「ディーパンの闘い」

 

 セイロン(現在のスリランカ)は1948年に独立したが、少数民族タミル人は迫害された。武装したタミル人は分離独立を掲げ、タミル・イーラム解放のトラを結成した。以来、政府軍との内戦は凄惨を極め、2000年代初頭に政府軍の勝利・国内制圧で内戦は終わった。この戦いの元兵士(タミル系)を主人公につくられた映画である。

 ディーパン(アントニーターサン・ジェスターサン)は家族を殺され、国外へと避難する。見知らぬ女性と少女を連れ、家族を偽装しフランスに入国。パリの郊外に居を構える。荒れ果てた集合住宅。管理人の職を得て、ひとまずは平穏な日々を送る。

 ある日、母国ゲリラへの武器供給を命じられるが、ディーパンにもう戦う気力はない。しかし、ディーパンが管理を任された集合住宅では、麻薬密売人たちの抗争が日々、激しさを増す。ついには仮の妻であるヤリニ(カレアスワリ・スリニバサン)が銃で脅されるに至る。一度は戦いを捨てたディーパンだが、偽装に過ぎなかった家族のために立ち上がる。

 ディーパンを演じたアントニーターサン・ジェスターサンは実際にタミル・イーラム解放のトラの少年兵としての経歴を持つ。内戦を逃れてフランスに亡命したという。現在は作家。そのためであろうか、内戦をくぐり抜けてきたものの韜晦、矜持、絶望がずしりと伝わる。これは演技でカバーできるものではない。

 そして、パリ郊外の荒廃と暴力。難民が押し寄せるヨーロッパの、隠しようもない実相が、ここにある。

ディーパン.jpg


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