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底の浅さが気になる~映画「黄金のアデーレ」 [映画時評]

底の浅さが気になる~映画「黄金のアデーレ」

 ファシズムが吹き荒れたオーストリアから米国へ亡命した一人の女性が、弁護士とタッグを組み、ナチスに不法に押収されたクリムトの名画を取り戻す。現代のロサンゼルスと第2次大戦中のウィーンで並行してストーリーは展開され、ドラマチックな構成になっている。物語の持つ魅力を、映画作りの手際の良さが存分に引き出している…。
 だけど、それで終われないのはなぜだろう。「よくできた映画」と評するのは簡単だが、なんだか底が浅くて物足りない。

 法廷もののシリアスな場面と、「戦争責任」の問題と、二つの側面を持つ作品にしては、最後の最後で「オーストリア人」としてのアイデンティティを訴えたら、オーストリア政府が1億ドル以上もする名画をポンと返してくれた、というのは、何が何でも安易な気がするのだが。

 クリムトが描いた「アデーレ」の姪に当たるマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)の生家は、もともとクリムトのスポンサーになるぐらいだからオーストリアの裕福な家庭である。彼女とタッグを組む弁護士ランドル・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)もまた、オーストリアの名家ともいえる出である。

 つまり、何もかも恵まれた人たちの「失われたもの探し」の側面が強すぎ、その分、ナチスの「名画押収」という戦争犯罪が安物の壁画のように見えてきてしまうのだ。

 言い方を変えれば、これはあくまでもアメリカ映画で、ヨーロッパ映画ではないな、ということでもある。うーん、うまく言えないなあ。

アデーレ.jpg


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