SSブログ

メリル・ストリープの独壇場~映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」 [映画時評]

メリル・ストリープの独壇場~

映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」

 あらためて国債格付けを見てみると、英国は米国、独仏と並ぶ最上ランクである。かつて「帝国の落日」、あるいは「英国病」などと揶揄された国が再生した道のりのスタートは、まぎれもなくサッチャーであろう。新自由主義による民営化を情け容赦なく押し進めて来た。小泉純一郎、あるいは昨今で言えば橋下徹の先を行った政治家である。その〝成果〟が今日の英国の姿である。

 サッチャー1.jpg

 フォークランド紛争もびっくりした。アフリカや中東では地域紛争が絶えないが、絵にかいたような海戦が現代の世界で起こるとは思わなかった。意思の強さと実行力に対してつけられたのが「鉄の女」の称号である。

 そのサッチャーをメリル・ストリープ主演で映画化した。観た感想を一言で言えば、これは「メリル・ストリープの、メリル・ストリープによる、メリル・ストリープのための」映画である。政治家サッチャーに寄り添うデニス・サッチャー(ジム・ブロードベント)さえも影が薄い。そのほかの閣僚たちはわき役というより背景画に過ぎない。まるで一人芝居を観ているようだった。

 ストーリーはいまさら紹介するまでもない。オックスフォード出の女性が政界を目指す。一度は落選するが(そのとき励ましてくれたのが、後の夫)、英国政界にデビュー、「男社会」の中で悪戦苦闘の末、首相にまで上り詰める。そして英国の財政を立て直す…。

 そうした回想シーンが、晩年のサッチャーが亡夫の遺品を整理するなかで展開される。主演のあくの強さ、主人公の強靭な精神力の裏側にひそむ弱さと孤独。そして、英国社会。こんな道具立てからピーター・オトゥールの「アラビアのロレンス」を思いだしてしまった。

サッチャー2.jpg 

nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 2

たんたんたぬき

是非見たいと思っています。まだ記憶に新しい政治家がモチーフになるとは驚きです。
by たんたんたぬき (2012-03-20 18:19) 

asa

≫たんたんたぬきさん
実在の政治家を役者が演じると軽薄に見えるものですが、メリル・ストりープはそうした違和感がほとんどありませんでした。その辺もメリル・ストりーぷの「演技力」かなと思いました。
by asa (2012-04-02 13:02) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0