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美しく老いる~映画「木漏れ日の家で」 [映画時評]

美しく老いる~映画「木漏れ日の家で」


 ポーランドの小品である。私小説にも似た筋立て。日本映画に通じる味わいがある。しかし、それだけではすませられない何かがある。主役の女性アニェラを演じるのは、撮影時91歳のダヌタ・シャフラルスカ。1915年生まれである。世界最高齢の女優、などということが言いたいわけではない。彼女が生まれたのは、第一次世界大戦から第二次世界大戦へと向かうころ。それは、ポーランドが苦難を迎える時代である。苦難、などとありきたりの言葉では語りつくせないかもしれない。一時は国がなくなってしまったのだから。

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 アニェラはワルシャワの、古びてそして美しい家に住んでいる。息子夫婦には同居を断られ、平穏だが死を待つばかりの生活を送っている。隣家を双眼鏡でのぞくのが趣味。ある家は成り金のようであり、ある家は子どもたちに音楽を教えている。

 偶然から息子たちがこの家を狙っていることを知る。失望して、一時は自殺をも考えるが気を取り直して、ある決断をする―。

 それだけのストーリーだ。動きの少ないシーンがモノクロの映像で展開される。そんな中で女優ダヌタ・シャフラルスカが光彩を放っている。その背後には、時代を生き抜いてきた自信が見えている。1927年に初舞台を踏み、47年にポーランド初の長編映画に出演した。そうした彼女の足取りは、間違いなく映像に投影されている。

 老いの中に確かなプライドと気骨が見える。とても美しい映画だ。

 木漏れ日1.jpg



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