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変わらぬ政治の原風景~三酔人風流奇譚 [社会時評]


変わらぬ政治の原風景~三酔人風流奇譚


「武士は食わねど」から変貌
松太郎 自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティー券売り上げ一部キックバック=裏金化疑惑が、永田町を揺るがせている。岸田政権は1214日、同派の閣僚4人を更迭した。党首脳を含め、同派の有力者は一掃された。
竹次郎 聞くところでは、長期にわたってシステマチックに行われたようだ。25年とも30年とも伝わる。森喜朗会長のころか三塚博会長のころか。会長判断で導入されたかどうかは調べないと分からないが。
梅三郎 清和会を作ったのは福田赳夫。当初はタカ派の政策集団でカネはなかった。総裁選で田中角栄の経世会と大平正芳の宏池会の連合に勝てず「天の声にも時に変な声がある」と嘆いたのが記憶に残る。後を継いだ安倍晋太郎も立ち技の人。勝負に弱く政権目前で病魔に倒れた。悲劇的な印象があったが、その後の三塚、森会長あたりから変わった。亀井静香、加藤六月、石原慎太郎あたりが派を出たことも、カラーを変えた。亀井、加藤とも左翼体験を持つ。石原も、作家デビューのころは革新のイメージをもてはやされた。
松太郎 「武士は食わねど高楊枝」の印象だった。回顧談はともかく、この疑惑、リクルート事件とよく比較される。確かに既視感がある。何が共通して何が違うのか。
竹次郎 リクルート事件では派閥の領袖のほとんどが疑惑にまみれ内閣、党の有力者は軒並み辞任した。竹下登首相が内閣改造を行った後も疑惑の主が現れ、通常国会での予算成立と引き換えに首を差し出した。消費税導入のころで、庶民から搾り取った税を政治家は懐に入れるのか、と怒りを買った。内閣支持率は一桁、消費税率とどちらが上をいくかと皮肉られた。岸田政権の今後を暗示しているようだ。

清和会晩景
梅三郎 領袖は派内に金を配らないと結束を保てない。だからこんな事件が起きる。金の要らない政治とともに、諸悪の根源である派閥をなくさないといけない。こうした声が党内外から起きた。
松太郎 そのために考えられた方策は。
竹次郎 派閥が生まれるのは、一つの選挙区で同じ党の候補が争うからだ。政策に違いがなければ有権者へのサービスが勝敗を決める。だから金も要る。中選挙区を変えないとだめだ。こうして、選挙制度を変えようという議論が起きた。阿波戦争=三角代理戦争と呼ばれた激烈な選挙を経験した後藤田正晴元官房長官あたりが、けん引役となった。
松太郎 それで派閥と金権政治はなくなったか。
竹次郎 なくならなかった。派閥は政策研究会と名を変えいまだにあるし、河井克行事件のように、地方政界で金を配る構図もある。半面、人事に関しては定数1の小選挙区制なので、圧倒的に党中央の権限が強くなった。首相、幹事長の同意がなければ選挙に出られない。
梅三郎 中選挙区制では、派閥は党中党のような存在で、首相はヤジロベエだった。各派が出したリストを突き合わせ組閣人事を行った。今は、首相に力があれば独断で一本釣りはいくらでもできる。よくもあり、悪くもあるが。
松太郎 いま派閥が必要な理由は、総裁選を結束して戦うためだけだろう。それは支える側からすれば、権力の頂点と直結できる道。安倍派はまさに、憲政史上最長の政権だっただけに、権力亡者が群がるに値する存在だった。
梅三郎 今の派閥は、権力志向の烏合の衆だから、上り詰めるための機能を失えば人はいなくなる。安倍派の解体、液状化現象が始まるだろう。もう始まっているか。
竹次郎 今回の疑惑は派閥の消長には影響する。しかし、そんなこんなで結局派閥政治と金権政治はなくならない。

また一つ、安倍政治の負の遺産
梅三郎 リクルート事件と違う点が一つある。かつては後藤田、小沢らとともに、若手に改革を望む声があったが、今は全く聞こえてこない。小沢は強引な手法が嫌われたが、戦略的には小選挙区による二大政党制を目指す、明確なゴールがあった。結果が理想とだいぶ違うのは事実だが、そこまで彼の責任とするのはどうか。
竹次郎 リクルート事件以後、分かったことは、制度論に全面的に依拠しても現実は変わらないということ。選挙制度を変えても、政治風土を変えない限りよくはならない。
松太郎 それはそうだが、選挙制度改革にも不徹底な点がいくつかあった。例えば小選挙区比例代表並立制。比例代表は公明党を取り込むためにくっつけた。これが小政党の存続を助け、二大政党制を妨げた。中途半端な改革が今日、自民党一強につながっている。小選挙区制の英国では候補の落下傘方式を義務付けており、ほかの選挙区の出身者しか出られない仕組みだ。日本ではむしろその土地の有力者を選定する。これが世襲制の蔓延につながった。こうしたことを変えない限り、緊張感のある政治状況は生まれない。
竹次郎 でも、そうした改革は可能か。結局、政治資規正法にパッチを張るぐらいで終わるのではないか。
梅三郎 派の親分が黒といえば黒だ、といったのは金丸信だったか。昨今の清和会の議員の言い訳を聞いても、派閥の論理は少しも変わらない。こうした政治の原風景は永久に続くのか。
竹次郎 それにしても、アベノミクスといい統一教会問題といい、東京五輪問題といい、安倍政治の負の遺産の多いこと。大阪万博も、維新との合作ではあるが、安倍首相の一声でゴーサインが出たという。いまやお荷物だ。
松太郎 かつて田中曽根内閣といわれた中曽根首相が田中角栄から自立したように、岸田政権にとっては安倍政治とたもとを分かつ好機。それだけの力量と覚悟があれば、だが。


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BUN

自民党は、50年前も金だけの政党。いまだに、票を集めているのが不思議だか、将来は公明票も減るだろう。政権交代を夢見てたけど、野党はカスだったことを表明しただけ。官僚も金だから、救いはないようだけど、この国は今もなんとか素敵で暮らし良い。なんの力かわからないけど、ま、日本文化の底力か、なんとかなるのだろう。
by BUN (2023-12-18 23:26) 

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