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法廷サスペンスとしては迫真力~映画「私は確信する」 [映画時評]

法廷サスペンスとしては迫真力~映画「私は確信する」


 2000年のある日、フランスのトゥールーズで妻が忽然と姿を消した。残された大学教授の夫に殺人の嫌疑がかけられた。決定的な証拠はないまま起訴、一審無罪。検察はただちに控訴した。映画は、二審の冒頭から始まる。
 夫は法律の専門家。ヒッチコックのような完全犯罪は可能が持論で、世間は「ヒッチコック式完全犯罪か」とセンセーショナルにとらえた。しかし、裏付けの乏しい法廷論争は不毛のまま判決を迎えた…。
 実際の事件をベースにした。妻の死も確定しないままでの起訴。日本では通常ありえないが、事件があったフランスでは起こりうる事態なのだろうか。

 失踪した女性はスザンヌ・ヴィギエ。夫はジャック(ローラン・リュカ)。ヴィギエ事件と呼ばれた。夫婦には3人の子がいた。子供たちを支援していたノラ(マリーナ・フォイス)はジャックの無実を信じて、敏腕弁護士として知られたエリック・デュポン=モレッティ(オリヴィエ・グルメ)に弁護を依頼した。「なぜ本人が来ないのか」といぶかるデュポンだったが、失踪から10年、世間の好奇の眼にさらされたジャックは重度のうつ病にかかっていた。ノラがまとめた一審経過に目を通したデュポンは弁護を引き受けた。彼がそこで出したのは、250時間におよぶ関係者の通話を録音したCDだった。ノラに要点をまとめるよう、注文を付けた。
 録音の解析から、一人の男が有力な容疑者として浮上した。スザンヌの不倫相手デュランデ(フィリップ・ウシャン)だった。失踪直前まで行動を共にしていた彼は、スザンヌを殺害したのはジャックだと知人に電話をかけまくっていたのだ。
 しかし、そこから先、有力な証拠はなく結審に至った。ノラはあきらめず、関係者の証言を求めて奔走。スザンヌとデュランデがナイトクラブを開きたがっていた、との情報をつかみ、これが事件に影響しているのでは、とデュポンに伝えようとしたが、深夜の来客をデュポンはすげなく追い払った…。
 結局、失踪から10年、真相は闇の中だった。

 日本では、検察は起訴に慎重で(逆に言えば有罪率の高さにつながるということでもあるが)、この程度の材料で起訴せず、ただの失踪事件で終わるだろうというのが率直な感想だった。日本とフランスの世相・風土の違いを垣間見た思いだった。ただ、法廷サスペンスとしてはなかなかの迫真力である。デュポンの癖のある役柄もいい味付けになっている。
 2018年、フランス、ベルギー合作。


私は確信する.jpg


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