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歴史はもっとブラック?~映画「スターリンの葬送狂騒曲」 [映画時評]

歴史はもっとブラック?~映画「スターリンの葬送狂騒曲」

 

 グルジア(現在の一般的な呼び方はジョージア)の靴職人の息子で、「コーカサス山脈を越えてきた男」と呼ばれたジュガシヴィリは、やがてソ連邦の絶対的な権力者となり、鋼鉄の男(=スターリン)と呼ばれた。

 20世紀は戦争の世紀と呼ばれたが、画期となったのが第一次大戦と第二次大戦だった。二つの大戦争は何を戦ったか。二つの総動員体制、即ちナチス型国民社会主義とソ連型社会主義の優劣であった。実は「戦争の世紀」の主役はヒトラーとスターリンであり、世界史的には日本も米国もわき役に過ぎなかったのである。

 スターリンは1953年に急死した。絶対権力者の突然の死に、クレムリンは大混乱に陥った。その様子をブラックコメディ風に描いたのが「スターリンの葬送狂騒曲」。スターリンの腹心だったマレンコフだのベリヤだのが、次々登場する。「モロトフ・カクテル」で知られたモロトフは外相だったか。赤軍トップのジューコフもしっかり出てきた。

 まず秘密警察トップのベリヤが失脚(当時としては衝撃的なニュースだった)、スターリンの暫定後継者となったマレンコフは優柔不断のゆえに主導権を失い、実務にたけバランスを重視するフルシチョフが台頭、56年にスターリン批判を行って流れは確定した。

 …と、ここまでのクレムリン権力闘争を、ドタバタ調で描いた。原作はコミックらしい。あまりに売れ行きがよく、映画化されたと聞く。上映の館内はほぼ満員だったが、受ける理由がよくわからなかった。いまや過去の物語になったソ連という国の内情に興味・関心があるとも思えず、全編貫くブラックユーモアが今の時代を風刺しているとも思えず…。そんな中で一つ言えるのは、スクリーンに描かれたより、実際の世界史の現場で繰り広げられた権力闘争はもっとブラックだったに違いない、ということである。

 2017年、英国、カナダ、フランス、ベルギー共同製作。

 

スターリン.jpg


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