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国連史上最悪の汚職を描く~映画「バグダッド・スキャンダル」 [映画時評]

国連史上最悪の汚職を描く~

映画「バグダッド・スキャンダル」

 

 人道援助の名のもとで醜悪な汚職が行われ、消えた額は200億㌦ともいわれた―。

 クウェート侵攻で経済制裁を受けたイラク。国民は貧困と混乱にあえいでいた。彼らに食糧と医薬品を届けるため、国連安保理決議に基づき1996年から石油・食糧交換プログラム(Oil-for-food program)が始まった。2003年終了まで総額640億㌦(73600億円)にのぼる巨額プロジェクトである。管理したのは国連事務次長ベノン・セヴァン(映画ではコスタ・パサリス=愛称パーシャ=ベン・キングズレー)。彼の手に渡った額は少なくとも18億㌦とされるが、国連がその後の調査を拒んでいるため全容は明らかになっていない。

 外交官の父をベイルートの爆弾テロで失ったマイケル・サリバン(テオ・ジェームズ)は遺志を継ぐため国連職員に応募する。採用が決まり、初任務は事務次長の補佐だった。そのままバグダッドに飛ぶ。前任者は謎の事故死を遂げていた。現地の所長やクルド人の通訳と接触するうち、石油・食糧交換プログラムに疑惑があることが分かってきた。食糧、医薬品はクルド人自治区に薄く、フセイン大統領の出身地ティクリートに厚く配給されていた。フィクサーらしき男が現れ、カネを置いていこうとする。

 疑惑のリストを手に入れたマイケルはパーシャに直接、疑惑をぶつけるが、相手にされない。それどころか、情報源であるクルド人通訳ナシーム・フセイニ(ベルシム・ビルギン)を女スパイだという。2003年にはブッシュ大統領によってイラク侵攻が始まった。疑惑が闇に葬られることを恐れたマイケルはついに、リストの裏どりをしたうえでウォールストリート・ジャーナルに持ち込む。疑惑は明るみに出てパーシャは故郷のキプロスに逃亡。マイケルも外交官の夢を断たれる。

 映画は、マイケル(本名マイケル・スーサン)が体験に基づいて書いた小説が原作。淡々としているが緊迫感あふれる展開で、フセイン大統領も巻き込み国連史上最悪といわれたスキャンダルを描いた。

 2018年、アメリカ、デンマーク、カナダ合作。


バグダッド.jpg


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