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それでもあなたは安倍政権?~社会時評 [社会時評]

それでもあなたは安倍政権?~社会時評

 

 民主党政権は悪夢?

A 2月10日の自民党大会で安倍晋三首相(党総裁)が、民主党政権時代を「悪夢」と語り「あの時代に戻させてはいけない」としたことで、民主党政権の幹部だった岡田克也衆院議員が12日の予算委で「取り消しなさい」と要求、首相は「取り消さない」と答えた。

B 子供のケンカのようなやり取りだが、直後に岡田氏が語っているように「ちっちゃな首相」という印象だけが残った。6日夜には首相公邸で、石破派を除く党内6会派の事務総長らが極秘で会合を開いたというし…。子供がよくやる「仲間はずれ」というやつだ。

C 6日の会合は昨年の総裁選の祝勝会らしい。

B それにしても、とっくに総裁選はすんだのだから。石破派もいれて再スターとか、やりようはあるだろう。そうすれば秘密裏にやることもなかった。

A やはり、今の政治は狭量といわざるを得ない。そういえば、会見での東京新聞記者の質問攻めに菅義偉官房長官が不快感を示し、内閣記者会に「事実に基づかない質問はやめろ」と申し入れたらしい。

B 事実に基づかない報道ならともかく、事実に基づかない質問をするなとは…。事実かどうかを確かめるのが質問だろう。安倍政権全体がもはや狭量で不寛容といわざるを得ない。こんな人たちが日本のかじ取りをしていると思うと、恐怖感さえ覚える。

 

 五輪担当相の配慮欠く発言

A 12日には、来年の東京五輪で活躍が期待された池江璃花子選手が白血病であることを明らかにして、列島に衝撃が走った。あろうことか、この事態に桜田義孝五輪担当相は「がっかりした」と発言。13日の衆院予算委で野党の追及を受け、発言撤回に追い込まれた。18歳の女性が人生の新しいステージに立った、そのことを一人の大人として見守り、応援するとなぜ思い至らないのか。こんな人を大臣に据える安倍政権の緊張感のなさ…。

C テレビの報道などを見ていると、白血病治療もここ2030年で随分前進したようだ。そうした医学の進歩に立ち、池江さんがこの先、元気な姿を見せれば、国民は安堵し喜ぶだろう。それを思えば東京五輪など小さなことだ。

 

 厚労省の統計不正

A 統計不正問題で厚労省に激震が走っている。

B 毎月勤労統計の東京都内分が全数調査と法律で定められているのに抽出調査をしていた。そのほかにも、訪問調査をすべきなのに郵送にしていたとか、問題が明るみに出ている。不正を明らかにする調査も、外部がやるべきところを内部の職員で済ましていたとか、事後の対応も問題が指摘された。

C 厚労省自体の仕事が増えすぎて担当する職員の対応が追い付いていないようにも見える。言われているように、日本社会は高齢化が進んで経済成長型から福祉型社会へと変貌している。しかし、行政がそうしたトレンドに合うように転換しきれていない。毎年の予算を見れば分かるが、厚労省関係は30兆円を超している。全体の3分の1だ。しかも、そのほとんどは年金、医療関係。高齢化社会を象徴している。

B そうした中で、職員は増えるどころか減らされている。それが、この統計不正にも表れているとみるべきだ。

C もう一つの背景として安倍政権の官邸一極集中もある。かつては霞が関を動かすのは官邸と自民党本部だったが、今や官邸に集中している。官僚たちも、官邸さえ見ていればいいという時代になった。勢い、官邸への忖度ばかりが働き、自民党本部の政調のグリップがきかなくなった。

 

 外交の安倍?

A 「外交の安倍」という言葉を聞くが、本当にそうか。

B 政権にいる人たちだけが言っているのではないか。

C そう思う。今月下旬にはベトナムで米朝首脳会談が開かれる。韓国の文在寅大統領も呼ばれて朝鮮戦争終結が宣言されるとの観測もあるが、この朝鮮半島「雪解け」の潮流の中で日本は完全に蚊帳の外だ。

B 日本は米国の「ポチ」だから、米国さえ相手にしていればいいと、北朝鮮も韓国も思っているのでは。

C 韓国の国会議長が、天皇が慰安婦に直接謝罪すれば慰安婦問題は解決する、と発言。安倍首相は「甚だしく不適切」と反発した。

B 慰安婦問題や強制連行問題がいまだに尾を引いているのは、植民地時代を日本がきちんと総括していないからだ。韓国要人の一連の発言は、結局そこに行きつく。そこにけじめをつけなければ韓国の批判は収まらず、結局は日本軽視につながるだろう。

A 日露首脳会談の直前に「2島返還で決着へ」の記事が一斉に出たが、あれは何だったのだろう。第一、あの記事のソースはどこだったのか。

B 官邸か外務省の高官あたりが、世論の動向を探ったのだろう。しかし、ロシアの対応がその上を行った。

C ロシアのラブロフ外相は第2次大戦の結果を認めるのが前提、といっている。日本政府は固有の領土だの不法占拠だのというが、ロシアにすれば馬耳東風だ。ヤルタの密約によって不可侵条約を破棄し参戦した。そして約束通り領土を手に入れた。パワーポリティックこそ正義、といいたいだろう。

B それに対して、なんと安倍外交のひ弱なことか。プーチンとの「友情」などひとたまりもない。

 

 それでも安倍政権?

A 今夏には参院選がある。ひ弱な外交、統計不正で根拠が揺らぐアベノミクス、官僚を掌握しきれない官邸、いまだ解決しないモリカケ問題、とマイナス要因ばかりだが、それでも国民は安倍政権を選ぶのか。

B 小選挙区の問題が大きい。なんとかならないか。

C とにかく、死に票が多すぎる。無効とされた大量の意思の上に安倍政権が成り立っている。これを打開する道は、何が何でも野党を結束させることだ。

B それには、共産党というネックがある。今の時代、共産主義社会を目指すというのは違う。少なくとも、世論の支持を得る思想ではない。ここと組むというのは、抵抗があるのも仕方がない。

C 逆に、自民党を分裂させるというのはどうか。かつて「剛腕」といわれた小沢一郎のような存在は出てこないか。

B 本当は、その方が手っ取り早いのだが。しかし、自民党自体が政権を担うことの「味」を求めて集まった人たちばかりだ。民主党で大臣まで務め二階派入りした細野豪志衆院議員の言っていることを聞いてもよくわかる。所詮は与党でなければ妙味はない。よほどの緊張感がない限り、自民党を割るのはむつかしいだろう。

A 今夏ダブル選の予想さえある。その末に安倍自民党が大勝でもすれば、いよいよ日本の政治は危うい。



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貴乃花は西郷隆盛か~社会時評 [社会時評]

貴乃花は西郷隆盛か~社会時評

 

内部告発の権利さえ無視する相撲協会

A)貴乃花が突然、各界から引退した。なぜこういう事態になったか、例によって貴乃花、相撲協会の主張がまったく違っている。貴乃花は、日馬富士暴行事件での協会の対応をめぐって内閣府に出した告発状が事実無根だったと認めるよう協会から圧力があったと主張、のめないので引退を選んだと。背景には7月の理事会で各部屋は必ず一門に入るよう申し合わせがあり、告発状の否定は一門に入るための交換条件だったとも主張している。

B)相撲協会は貴乃花の主張を全面否定した。告発状を否定するよう圧力もかけていないし、一門に入らない部屋の扱いは今後、理事会で協議する予定だったといっている。

C)一門に入るよう申し合わせた背景は何か。

B)補助金の流れを明確にするためと、ガバナンスを強化するためだったと協会はいっていた。

C)すべての部屋が一門に入れば補助金の流れは透明化できるのか。よく分からない理屈だ。ガバナンス強化のためというのもにわかに理解できない。

A)一門とは、いわば派閥のようなもの。私的集団ができることで、カネの流れや統制が強まるとは思えない。先ごろあった自民党総裁選でも、国会議員は派閥の締め付けによって投票した。その結果、国民の意思とはかけ離れた結果が生じた。派閥の力学とはそんなふうに働く。一門加入の義務付けは、透明化を目指す組織改革とは逆方向を向いている気がする。

B)貴乃花と協会の言い分がかけ離れている以上、真相はにわかに判断しにくい。細かいことはさておき、協会側の発言で思うのは、優勝回数22回という横綱に対して、あまりにも尊厳を重んじる姿勢がないということだ。土俵上の実績に対するリスペクトがなくて、相撲協会の存在理由はどこにあるのだろう。

C)一門加入をきちんと文書化せず口頭での申し合わせにとどめ、しかも貴乃花には(貴乃花の主張通りだとすれば)9月中旬になって伝わったという。そうだとすれば、貴乃花締め出し工作と受け取るのが普通だ。

A)告発状は事実無根だと認めるよう、圧力はあったと思うか。

C)どの段階でかは分からないが、一門に入るためには、告発状はウソでした、といっといたほうがいいよ、ぐらいの話はあっただろう。協会は絶対にそこは認めないだろうけど。

B)内閣府への告発状は、いわば内部告発だった。今の社会では、内部告発者はきちんと公益通報者保護法によって保護される仕組みになっている。貴乃花が告発状を取り下げたのは自分の弟子が暴力事件を起こしたためだが、内部告発者としての人権はきちんと守られるべきだ。

 

尋常ならざる同調圧力の世界

A)全体を俯瞰すると、どうも日本的ないじめの構造に見えて仕方がない。

B)相撲協会の中でどんな議論が行われているのか、まったく聞こえてこない。これは、日馬富士の暴行事件のときもそうだった。協会内の人の顔と言説が見えない。これは異常なことだ。これに対して貴乃花は異分子扱いだ。個別の顔が見えない不気味な集団が異分子を排除する。近代日本で延々と繰り返されてきた構図だ。

C)鴻上尚史氏が「不死身の特攻兵」であぶりだした「尋常ならざる同調圧力」の世界がここにもある、ということだろう。

B)少し視点を変えて言うと、貴乃花は西郷隆盛に似ている。尊王攘夷から尊王開国へと日和見的な修正主義に走った維新政府に対して、西郷は筋を曲げず、負け戦を承知の西南戦争で散った。

A)西郷は征韓論者だったし、吉田松陰もアジア出兵をにらんだ軍国主義を視野に入れていた。明治維新のイデオローグたちは少なからず、こうした側面を持つ。それがのちのち、アジア・太平洋戦争という局面を招いた、ともいえる。

B)話が広がりすぎた。西郷は勝海舟との直談判で江戸城無血開城を成し遂げた。柔軟な戦略家なのか、それとも強硬な原理主義者なのか…。実像が見えないところに、国民的人気の所以があるように思う。貴乃花と似ている。

 

日本全体を覆う不気味な空気

A)貴乃花に対して、組織人としての資質がないとか、大人の対応でないとか、聞くに堪えない批判が相撲協会から出ている。そんなイメージを作りたいのだろうが、逆に、相撲協会の器量のなさにつながっているように思う。

B)たしかに。貴乃花のような人間がいてもいいじゃないか、とどうして言えないのだろう。それも、一人として。その辺は組織として不気味だ。

C)しかし、これは相撲協会だけのことではない。先日の自民党総裁選だって、石破茂・元幹事長に対する「排除の論理」が随分働いた。選挙に立つだけで、異常なことだった。前回総選挙の秋葉原演説では「安倍やめろ」コールに対して「こんな人たちに負けるわけにいかないんです」と応じた安倍晋三首相の人間的な狭量さが目立った。今回は、公道であるにもかかわらず選挙カーの周囲を支持者で固めたらしいが。

A)現政権になって、メディアに対する露骨な介入も目立つ。これも、批判は許さない、という了見の狭さがなせる業だ。

B)石破さんが一級の政治家とは思わないが、テレビでの一連の討論を見ていると、石破さんがとても優れた政治家に見えた。それだけ安倍という政治家の品性がないということだろう。

B)国籍の違う人たちや沖縄の人たちに対する根拠のないヘイトスピーチといい、杉田水脈衆院議員のLGBT差別論文を掲載、擁護した「新潮45」といい、異分子排除の動きが果てしなく続く。政権、自民党や相撲協会の動きはこれらとも同質の根を持っている。日本全体が不気味化している。

C)鴻上さんが描いた時代のようにならなければいいが。

 


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青写真が描けない日本~社会時評 [社会時評]

青写真が描けない日本~社会時評

 

A)近ごろの三大話は、西日本豪雨禍に続く北海道地震、体操協会まで揺るがしたスポーツ界の暴力体質問題、ちっとも盛り上がらない自民党総裁選。こんなところか。

B)北海道地震では、見渡す限りの山が震度7で崩落した厚真町の光景もショッキングだったが、全道一斉停電(ブラックアウト)という事態に驚いた。どんな制度設計をしていたのだろうか。全道300万㌔㍗余りの需要に対して、苫東厚真という一つの火力発電所がその半分を受け持っていたというのが、危機管理上どうだったか。

C)北海道では泊原発が2012年以降、運転を停止している。このことが影響しているらしい。原発依存体質から電力会社が抜けだせないでいることが遠因ではないか。

A)どういうことか。

 

「原発依存」体質が招いた全道停電

C)泊原発は3基で計200万㌔㍗の発電能力がある。これが稼働していれば苫東厚真火発はフル稼働する必要がなかった。つまり、今回のような事態は起こりようがなかった。おそらくこれが電力会社の言い分だろう。しかし、これは問題のすり替えだ。東日本大震災以降、原発の安全性に大きな懸念がある今、本来なら垂直型、中央集中型ではなく水平型、分散型ネットワーク方式による電力供給システムへの転換が図られるべきなのに、原発依存の設計思想からいまだに抜けだせずにいたため、今回のような事態が起きたといえる。

B)原発は、中央集中型システムの典型だ。本当に怖いのは原発稼働時に、原発を含め全道の発電所が一斉に緊急停止し、原発の外部電源が断たれた場合だ。最悪の場合、核燃料の冷却機能が失われる。そんなことが起きたらどんな対処が考えられたのだろうか。

C)今回の事態を奇貨として、エネルギー供給システムの分散型ネットワーク化を進めるべきだ。

A)でも今の政権ではどうかな。とてもそんな決断は考えにくい。体操協会の暴力問題はどうか。

B)塚原光男といえば、体操界に詳しくない我々でもその名を知っている。オリンピックのレジェンドだ。しかし、その塚原氏と妻が、70歳になってなお強化の現場を取り仕切っているのはどうなのか。女子レスリング、アマチュアボクシングもそうだが、老人が過去の栄光と既得権にしがみついているのは見苦しい。老害こそが最大の問題だ。

C)一人の女子選手が会見を行い、体操協会の体質を告発するに至った心情を考えると胸が痛いが、協会が暴力を振るったというコーチの無期限登録抹消処分に至るまでに、なぜ是正策が取られなかったのか、不思議だ。裏で何かあると考えるのが普通だろう。

A)結局は、こうした暴力的指導法が日常的に存在し、だれも気にかけなかったということではないか。コーチ一人の問題ではなく、スポーツ界のある種ムラ社会的な側面が問題の根底にあるようだ。

 

尋常でない同調圧力

B)ムラ社会というか、最近「不死身の特攻兵」という本で、9回出撃して9回帰還した特攻隊員のことを書いた鴻上尚史さんも言っているが、底流にあるのは日本社会の尋常でない同調圧力ということではないか。スポーツ界は、目指す目標が同じであるだけに同調圧力が働きやすい。

C)1970年代、原発建設が住民の反対を押し切って「国策」として進められたのも、尋常でない同調圧力の結果だった。それが今日の原発列島を生んだ。

A)自民党総裁選に目を向けよう。状況を見ると日本の政治の悲惨さを思わざるを得ない。

C)これこそ、根拠のない同調圧力の結果だ。自民党の国会議員たちは何をおびえているのか。情けない限りだ。

B)今の状況を招いたA級戦犯は岸田文雄・党総務会長だろう。安倍首相が次を担当したとしても1期3年だ。その間、干されるのを覚悟で立つか、それとも安倍の後ろをもみ手して追随し、確証のない「のれん分け」を期待するか。誰が見たってここで立った方が戦略的に優れているのは明白だった。

C)結局、岸田という政治家は立つべき時に立てないという評価が定まった。

 

政策的成果などない安倍政権

A)外交の安倍だの経済の安倍だのと政権の取り巻きは言いふらすが、そんなものに実体はない。それは国民がよく知っている。安倍外交とはトランプの番犬として時々吠えてみただけのことだし、北朝鮮と差しで話をするといいながら外務省を通してきちんとしたパイプを作ろうとした形跡はない。小泉純一郎政権の対北朝鮮外交での田中均外務審議官のような存在は皆無だ。とりあえず内調を使ってなんとかしようとしているが、どんなものか。手玉に取られるだけでは。経済に至っては、何をもって評価するのか。昨年のGDPは世界3位だが、2位の中国とは2倍以上の差がある。一人当たりGDPは世界25位だ。貧困率は、2015年のデータだが世界で12位。チリあたりと同列だ。無理やり円安株高政策を進めて企業は歓迎かもしれないが、国民には何の恩恵もないことはデータからも明らかだ。

B)来年度予算編成がこれから本格化するが、早くも一般会計で100兆円を超える見通しになった。イージスアショアを米側の言い値で買わされて防衛費はまた増額だし、プライマリーバランスの均衡化なんて本当にやる気があるのか。最近、2020年度目標を5年先延ばしと伝えられたが、25年度だって実現はあやしい。

C)こうしてみると、政策的成果はほとんどないし、モリカケ問題で官僚組織はガタガタだ。これであと一期やるなどとどうして言えるのだろう。自民党内でもほとんど批判がないのは不思議というほかない。石破さんは批判しているけど。

B)結局、政治家としての倫理観よりポストに群がる処世術のほうが先に立っているとしか思えない。政権党のこうした堕落ぶりに対しては、本来なら他の政党が取って代わるべきなのだが、今の日本の政治はそうした仕組みになっていない。その結果、日本の政治は果てしなく堕ちていくばかりだ。


防災・環境保護の先進国へ
A)
北海道地震で浮き彫りになったのは、ポスト原発をにらんだ電力供給システムの青写真を描く能力を持ち合わせていないこと。スポーツ界で明らかになったのも、新時代に即した選手の育成法をだれも描けず、旧態依然とした手法がまかり通っていること。どうも、その根幹にあるのは、ポスト冷戦の時代になお米国追従しか頭にない現政権の在り方であるという気がする。既得権益にしがみついているから官僚を含めあちこちの組織が腐敗し、倫理観を失っている。

B)総裁選に立った石破氏が提唱したが、昨今の豪雨禍や地震被害を見ると、防災庁を作るべきではないか。その中に日本版FEMAを創設する。

C)さらにいえば日本は防災、環境保護の先進国を目指すべきではないか。脱原発、エネルギー政策の転換、脱地球温暖化の国際的な主導国になる。これから老人(大)国になるしかない日本にとって、これこそが国の青写真づくりに結び付くはずだ。かつてのような経済成長第一主義は捨てるべきだ。 


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酷暑の夏のうんざりニュース~社会時評 [社会時評]

酷暑の夏のうんざりニュース~社会時評

 

A)今年の夏は異常な暑さだ。豪雨禍も通常ありえないレベルだったが、気温40度が何回も記録されるこの酷暑もありえないことだ。

B)首をかしげるのは、もはや災害といっていいこの酷暑に政府が何の手も打たないことだ。西日本豪雨災害に対しても反応が鈍すぎる。

C)それはどこから来ているか。近年の異常気象はまぎれもなく地球温暖化による「不都合な真実」として起きているにもかかわらず、そうした認識がないことが問題だ。だから、地球温暖化にどう立ち向かうかという明確な姿勢が政府に見えない。

A)その酷暑の中で、うんざりするニュースが相次いでいる。

 

日本ボクシング連盟会長のキャラの裏側

B)日本ボクシング連盟「終身」会長の山根明氏に対して、連盟内から333人連名による告発文が出された。山根会長もメディアを通じて反論しているが、やめざるを得ない情勢だ。

C)山根氏自身が、山口組系組長との長年の交際を認めたことが決め手になるだろう。ボクシングは東京五輪種目であり、その連盟の会長が反社会勢力と関係があったとすれば、鈴木俊一五輪担当相がいうように、もはや「論外」の話になる。

A)山根氏のキャラクターをどうみるか、昭和のオトコ像をみるのも勝手だが、そうした話とは別に、出生は複雑だ。1939年、日本の植民地下であった釜山に生まれ、80年に帰化している。ボクシング連盟会長という地位にありながら過去がほとんど闇に包まれているということがしばしば話題になるが、いま明らかになっているのは「山根明」としての経歴であり、韓国籍の時代は闇の中だ。

C)本人は、この出生説について否定している。大阪で生まれ、父が憲兵でGHQによる戦争責任追及を恐れてしばらく韓国に移住したというが、疑問点も多い。メディアは本人の説をそのまま流しているが、どうだろう。

A)もし、韓国人としての経歴があったとすれば、そのままのしあがっていくのは大変だっただろう。彼は「おとこ一匹」とか「一匹オオカミ」とか、よく口にするが、その内面の奥にはやはり差別への対抗心があったのでは。彼は日常的に日の丸のついたジャージを着ているようだが、そのへんの過剰な「日の丸愛」にも屈折した心情がうかがえる。

C)いま、メディアは山根明と「日本ボクシングを再興する会」の言葉のジャブの応酬を面白おかしく伝えているが、背景にある日本の戦後史と、その中を、差別に耐えて生きてきた男の人生は何だったのかも、折を見て伝えるべきではないか。

A)山根という個人のキャラに回収してしまうのではなく、いま指摘があったような伝え方ができればボクシング連盟内紛は単なるスキャンダルではなく普遍性を持った問題として認識されるだろう。

 

日大アメフト部と田中理事長

A)日大アメフト部の今秋の公式戦復帰も、関東学生アメフト連盟の裁定によって消えた。

B)学連はどうするのかな、と思ってみていたが、日大側の対応があまりにも悪すぎた。

C)それも、田中英寿理事長一人の対応だ。田中理事長と山根会長。人間的なキャラもだが、組織への対応ぶりも似ている。双方向の対話がない。一方的な上意下達だ。そして、公と私の区別がない。山根会長はボクシング連盟を「私」の領域で牛耳ろうとするが、田中理事長にとってアメフト部は「非・私」の領域。つまり、他人ごとの問題だというのが透けてみえる。

A)1968年の日大闘争は、日大当局の権力主義的対応が発火点になったが、半世紀たっても日大は変わらないんだな、というのが率直な感想だ。

B)でも、やっぱり変わるべきでしょう。もう。

 

安倍三選への流れは変わらない?

A)うんざりニュースの代表格は、なんといっても安倍晋三首相の三選の流れが強まっていることだ。

B)いま、竹下派が安倍、石破の間で揺れている。どうやら石破支持でまとまりそうだが…。

C)まあ、こればかりは「政界、一寸先は闇」だろう。幹事長ポストをちらつかされて、それでも石破支持でまとまるならほめたものだが。

B)岸田文雄・政調会長が安倍支持を打ち出したものの、「タイミングが遅すぎる」と党内では不評だ。

C)岸田という政治家、少なくともケンカ師ではない。それが今回よくわかった。安倍はやってもあと一期、それを干されたからといって何をビビることがあるのか。それよりも、経世会と宏池会で手を組み、小泉進次郎も引き入れて安倍の邪道保守路線を徹底的にたたくという道筋をどうして描けなかったのだろう。そのほうが、日本の保守政治にとっても岸田にとっても展望が開けたはずなのに。

A)安倍政権は、日本列島が豪雨禍にあるとき、カジノ法案と参院選挙制度改革に血道を上げていた。世論調査でも、この二つの法案に過半数が不要と答えた。それなのに内閣支持率をみると3割から4割が支持している。これをどう見るか。これまでにも言ってきたが、政治的アパシー(無関心)と大衆的ニヒリズム、もしくはシニシズム(冷笑主義)としか理解できない。日本の政治とはどうせこんなもの、という…。

B)それと、安倍政治の最大の罪は、「世界に冠たる」官僚制の破壊にある。

C)「世界に冠たる」かどうかは知らないが、政治が腐れば次に官僚が腐る、ということを最近のニュースは如実に伝えている。財務省とか文科省とか…。

A)確かに、日本の近代化を支えたのは官僚制であり、その人的資源は武士階層だったということは言えるのではないか。ただ、官僚が力を発揮したのは国家総動員体制のもとであり、高度経済成長が終わって国家自体が下り坂にある今、官僚はかつてと違う姿を求められていることも事実。新しい官僚像を描くのは政治の責任だが、少なくとも今の政権にそんな力はない。

 

「失われた時代」はまだ続くのか

B)戦後史を振り返ってみると、1960年代、70年代にはそれぞれ政治の季節があり、時代の明確な「色」もあった。80年代には「ジャパンアズナンバーワン」があり、その後、バブル崩壊があった。得意と失意の時代だ。その後は、定義不能な時代が続く…。

C)平成がもうすぐ終わる。「平成」の30年とは何だったのかという議論も起きるだろう。

A)平成の30年は「失われた30年」として記憶されるのではないか。

B)安倍政権が今秋以降も続くとしたら、元号は変わっても「失われた時代」は続く、ということになりはしないか。

C)時代閉塞もいいところだ。先ほどの時代回顧に一つ付け加えると、1950年代は戦後へ生きのびた戦中派の思想的葛藤があり、面白い時代だった。竹内好とか谷川雁とか吉本隆明とか…。

A)話は尽きないが、今回はこれで終わります。

 


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この国はどこまで堕ちるのか~社会時評 [社会時評]

この国はどこまで堕ちるのか~社会時評

 

A)サッカーW杯は、フランスの優勝で幕を閉じた。

B)クロアチアが優勝しないかとひそかに願っていたが…。

A)それはなぜ?

B)ユーゴから独立し、長い内戦の時代をくぐり抜けてきた。第2次大戦下ではナチスの傀儡政権ができたり、セルビア人との不幸な紛争もあったりしたが、苦難を乗り越えてきた国だ。ここは優勝してほしかった。

C)世界にはかつての苦しい時代を乗り切って国際社会に平和をアピールする国もあれば、そうでない国もある…。

A)日本のことだね。

C)そうだ。この国はいったいどこまで堕ちるのだろうか。最近の政治情勢を見るとそう思う。

 

豪雨警戒横目に宴会騒ぎ

B)7月5日夜、「赤坂自民亭」なる飲み会が衆院議員宿舎で開かれ、岸田文雄政調会長ら自民党幹部のほか安倍晋三首相も出席した。西村康稔官房副長官がその写真をツイッターに投稿してはしゃいでいた。その日の午後には気象庁が異例の会見を開き、豪雨被害の警戒を呼び掛けていたので、緊張感のなさに批判が集中した。

C)既に5日時点で京都の鴨川は氾濫寸前だったし、中国地方でも豪雨被害が出始めていた。政府・自民と庶民の感覚はあまりにかけ離れている。

A)飲み会は偶然のタイミングで開かれたもので、批判は感情論だとする向きもあるが、そうは思えない。やはり、国会議員の感覚が庶民とずれている。

B)石破茂元自民幹事長が防災省の設置を訴えているが、検討に値する。世界中で日本ほどあらゆる災害に見舞われている国も珍しい。一方で、今回の場合もそうだが、事前の避難措置が気象庁に任せきりの感がある。国・自治体・自衛隊・消防・警察が早くから連携する方法を模索したほうがいいように思う。

 

死刑執行を命令した人たちも

A)6日にはオウム真理教の松本智津夫ら7人の死刑も執行された。刑執行の命令者である上川陽子法相も飲み会に出席していた。

C)7人の死刑執行を命令したのは安倍首相と上川法相のラインだろうが、彼らが前日の飲み会に出席していたというのは、感覚的に信じられない。

B)極悪非道の狂信者をこの世から消したということでなく、オウム事件とは何だったか、国家の名において7人の命を奪うとはどういうことか、そうした重みを自らの肩に感じているというふうにはみえない。オウム事件はたまたま起きたのではなく、社会の病理というものがあったように思う。1995年は阪神淡路大震災があった年でもあり、同時に東西冷戦が終わり、バブルがはじけた直後でもあった。「失われた20年」の起点とする説もある。戦後の転換期として複雑な社会の断層を抱えた年でもあった。そうしたことを踏まえながら、刑を執行することの重みを感じるべきだった。ハンコひとつでおわり、という話ではない。

A)今、世界の先進国で死刑制度が実際に運用されているのは日本と米国ぐらいだ。特に、日本では絞首という手段がいまだに用いられている。このことにも批判が強い。

 

倉敷・真備町の避難所では

A)11日には、町内の3分の2が洪水被害に見舞われた倉敷市真備町の避難所を安倍首相が訪れた。訪問前夜に突然スポットクーラー18台が現地に送られ、うち12台が首相視察の避難所に設置されたという。こうして首相は冷房のきいた避難所で被災者に形式的な慰めの言葉をかけた。そのシーンをメディアが流した。

B)首相が視察しなかった避難所は割を食った可能性がある。庶民の感覚を知らぬ首相と権力者の意向を忖度する周辺の官僚たち、彼らの注文通りの「絵」を流すメディアの構図はここでも健在だ。

 

安倍三選は既定事実?

C)これだけの豪雨被害がありながら国会で審議しているのはカジノ法案と選挙制度改革。

B)参院の選挙制度改革はひどい。選挙区格差解消ができないから比例区の定員を増やし、そこで合区で落ちた議員を救済しようという。救済される議員を決めるのは有権者でなく、自民党だ。

A)カジノ法案も、まったく必然性がない。

C〉大洲市のダム放流で住民が水死した件、国交省が第三者委員会による調査を表明したが、まずは国会で集中審議をすべきではないのか。先ほども話が出たが、ほかの事例も含めて災害時の国と自治体の連携を見直す必要がありそうだ。

B)自民党からは、民主党政権時代の「コンクリートから人へ」というスローガンが間違っていたとの批判が出ているそうだ。今回の豪雨被害の核心はそこではない。地球温暖化によって異常気象が深刻化している点にある。

C)かつて、治山治水対策は「100年に一度の異常気象にも耐える」ということを合言葉にしていた。ところが、ここ数年を見ても、100年に一度のはずの異常気象がほぼ毎年起きている。そうなると、治山治水対策のハードルを上げないといけない。一方で、日本で毎年起きているこの不都合な真実のデータをできるだけ早く国際社会に突き付けること。とても政権与党は、飲み会などやっている暇はないはずだ。

B)新しい治山治水対策を全国的に展開する。そうすれば、カジノなど作らなくても成長戦略はできる。

 

緩み切った政府与党、その背景は

A)でも、今の緩み切った安倍政権ではもう無理だろう。それでも今秋に三選となれば、庶民は絶望するしかない。

B)7月16日付朝日に、世論調査結果が載っている。カジノ法案は「必要ない」が76%、参院選改革案は「反対」が56%。しかし、内閣支持率は38%。不支持が43%あるにしても、支持率が異常に高い。個別の政策への世論の「反対」をみると、とっくに倒れていてもおかしくない政権だ。

C)内閣支持率の高さは、結局誰がやっても…という政治的アパシー、言い換えれば大衆的ニヒリズムの結果だ。それにやはり、小選挙区制が大きい。野党がバラバラではだめで、ここは歯を食いしばって大同団結し、いったんは離れた無党派層を回帰させるしかない。そうしないといつまでも自民党の腐敗政権が続く。

A)あるいは小選挙区制を変えるかだが、これは自民党が乗るわけもなく、可能性はゼロに近い。

B)結局、日本の政治の堕落はいつまで続く…。



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日大アメフト「事件」に思う~社会時評 [社会時評]

日大アメフト「事件」に思う~社会時評

 

A)5月6日に行われたアメフト日大―関学戦で日大選手が悪質タックルをしたとして大きな社会問題になった。

B)被害を受けた関学の選手が警察に被害届を出したため、悪質タックルは「問題」ではなく「事件」となった。

C)それにしても加害者である日大側の対応は理解に苦しむ。試合の最中か、遅くとも直後に一言声をかけていれば、これほどのことにはならなかった。

A)しかし、日大の内田正人監督がある選手に反則行為を指示していたと複数選手から証言があった。もしそうなら、関学側に思いやりの一言をかけるなどということにはならない。

B)今まさにそうしたことが疑われている。監督が「試合に出たかったら相手のQBを壊して来い」とルール無視のプレーを選手に指示したという事態が濃厚になった。

A)内田監督は19日に関学を訪れ関係者に謝罪したが、これも最悪の対応だった。関西学院大の読み方を間違え、そのうえ「辞任する」と表明したが、自らが「選手を壊せ」と指示したかどうかは明言を避けた。

B)謝罪をしに行って相手の名前を間違えるなどというのはこれ以上ない失礼な行為だ。しかし、それは本筋のことではないとしても、指示したかどうかは脇に置いておいて辞任するとは無責任極まりない。

■安倍首相の言説と酷似

C)内田監督の会見を聞いて、これは安倍晋三首相の発言とよく似ているな、と思った。安倍首相も、閣僚、官僚になにか不祥事があれば「私の責任」という。しかしどのようなことについてどう責任を取るかは絶対に語らない。森友学園問題でも、自分が関与していたら首相も国会議員もやめると明言したが、これほど森友、加計学園問題への「関与」が疑われる事態になってもやめる気配はまったくない。「責任を取る」という発言と現実に起きていることとの関連、筋道を明言しないからこんなことが可能になる。内田さんは、監督はさっさとやめたが、そのことと違反プレーとの関係は明確でない。

A)学内ナンバー2という地位があるから、監督のポストにそれほど執着がなかったのだろう。下手をすれば、暴走した選手に代わって引責辞任という美談になりかねない。

B)安倍首相は現実の事象とは無関係に「すべて私の責任」という。だから結局、それは言葉だけで実際に「責任を取る」ということに結び付かない。内田さんは結局やめたが、どういう理由で辞めたかははっきりしない。

C)日大の選手から複数の証言が出ているのだから、監督の指示はあったのだろう。しかし、被害側の選手から被害届が出れば刑事事件だ。今後のことを見通せば、とても指示したとは言えない。傷害罪の共同正犯になる。

A)つまりは自己保身のために明言を避けている? それでは指示された選手も被害を受けた選手も浮かばれない。

■ナンバー2の美学?

A)内田さんはいま学内のナンバー2だ。アメフトに関しても、日大には篠竹幹夫という名将がいた。内田さんはその下でコーチを務め、監督になったらしい。

B)いわゆるナンバー2の美学というのがある。かつては毛沢東体制下での周恩来が代表的な事例。時にはナンバー1をしのぐ力量を持ちながら、ナンバー2としてのおさまりの良さを自覚していた人たちだ。日本でいえば保利茂、野中広務、後藤田正晴…。しかし、実力者にくっついてナンバー2になり、身の程をわきまえずナンバー1に上りつめて失敗する人たちがいる。内田さんもその一人に見える。

C)19日の会見しか我々には材料がないが、見た限りでは器も力量も備わっているとは思えなかった。こういう人がトップに立つと下は苦労するだろうなあ、内田さんはそういう人に見えた。

A)安倍首相の下で官僚が苦労している。それと同じことを日大アメフト部は経験しているように思える。

 

■サラリーマン社会の縮図

B)1960年代に日大闘争というのがあった。東大闘争と並んで全国の大学闘争の先駆けとなった大闘争だった。国策を推進する帝国大の頂点にある東大の教育、研究が、表向きの中立でなく「体制内存在」であることの犯罪性が問われたのに対して、日大は体制を支えるマスとしての労働者を作り出していく教育機関としての性格が問われた。発端は一部の造反学生に対して大学当局が暴力的で不合理な対応をとったためだった。アメフト問題(事件)に対する日大側の対応を見ていると、さすがにあの時代のような暴力性はないのかもしれないが、根底にある体質は変わっていないな、と思う。

C)それとともに、今回の事件はサラリーマン社会の縮図に見えて仕方がない。会社のために違法行為、もしくは違法すれすれのことをやってこそサラリーマンの鑑、みたいな発想がある。

B)かつてロッキード事件、グラマン事件というのがあった。国会で証人喚問された丸紅や日商岩井の人たちも、そういう人達だった。

A)わがサラリーマン時代を振り返ってみても、「どうして彼が…」と首をかしげる出世を果たした人間がいた。よくよく聞いてみると、例外なく「彼は率先して泥をかぶるから」「汚れ役を引き受けるから」という答えが返ってきた。今回の日大アメフト事件とも共通性がある。

■官僚の世界はどうなのか

B)サラリーマンだけでなく、官僚の世界でも同じようなことが起きている。理財局長だった佐川宣寿さんも、違法行為すれすれを行かなければ出世はできないと思ったのではないか。

C)佐川さんを見ていると、ハンナ・アーレントが書いた「イェルサレムのアイヒマン」を思い出す。ユダヤ人をガス室に送ったナチスドイツの「死刑執行人」が、どこにでもいる小役人だったと裁判を傍聴したアーレントが喝破した。

B)たしか、アーレントは、ナチスの官僚たちにとっては自らの倫理観より違法か合法かという判断の方が優先した、と書いていた。読んだときはピンと来なかったが、最近の官僚の答弁を聞いていると、アーレントの指摘が妙に腑に落ちる。彼らは、適法であり正規の手続きを経ているという確証があれば、どんな犯罪行為でも率先してするのではないか。そんな怖さがある。

A)519日付朝日で、政治学者の豊田郁子さんが「忖度を生むリーダー」と題して同じ趣旨のことを書いていた。同感しながら読んだ。

B)一国の政治リーダーが「責任を取る」といいながら官僚の忖度に対しては知らんぷり。このことが社会的風潮として蔓延しているのではないか。官僚の腐敗も日大アメフトの悪質タックルも、根は同じという感じがする。
 


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安倍政権の末路と日本の行方~社会時評 [社会時評]

安倍政権の末路と日本の行方~社会時評

 

結局は自民内で政権たらい回し?

A)いよいよ、安倍晋三政権がレームダック状態に入った。政権側が加計・森友疑惑を晴らすことができないまま1年が過ぎ、ここに至って公文書改ざん問題に続き、愛媛県職員メモというかたちで3年前の首相秘書官による「首相案件」発言が明るみに出た。このほかにも、森友学園への国有地払い下げをめぐって財務省による口裏合わせ要請、大阪航空局に対する近畿財務局のごみ積算増量要請…と、疑惑は深まるばかりだ。

B)これに対して、「首相案件」発言をしたとされる柳瀬唯夫・経産審議官は「記憶の限りでは愛媛県、今治市職員らとは会っていない」と逃げたコメントを発表。安倍首相は公文書管理をめぐる衆院の集中審議で「部下を信じる」と述べるばかりだ。柳瀬氏の記憶を信じるといっているだけで何の信ぴょう性もない。

C)首相や官邸スタッフが逃げを打つのは、隠ぺい工作の一環だと仮定すれば極めて腑に落ちる行動だ。一方、悲願だった獣医学部が日の目を見た愛媛県にしてみれば、柳瀬発言をもしでっち上げたとすれば、そこに一体どんなメリットがあるのだろう。そもそも、首相秘書官が言ってもいない発言を地方自治体職員がさもあったかのように作り上げるということがあるだろうか。

A)そう考えれば、この勝負は既に決着済みだ。そのうえ、愛媛メモと同一内容の文書が農水省から出てきた。柳瀬発言を受けて愛媛県職員が「葵の御紋」よろしくメモを片手に関係省庁に触れ歩いたということだろう。普通ならこの時点で「恐れ入りました」と内閣総辞職する。これ以上、政権にしがみつけば、安倍首相は「恥知らず」と罵倒されるだろう。遅かれ早かれ、安倍政権は退陣せざるを得ない。では、その後のシナリオは。

B)かつての中選挙区であれば、自民内に厳然たる派閥力学が働いた。しかし、今は小選挙区でそうではない。今の安倍首相も、幹事長、官房長官を経験しただけで重要閣僚の経験なく首相になった。「権力の階段を上る」というプロセスがまったくないのが、今の政治システムだ。

C)常識的には石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長あたりが後継候補と目されそうだが…。安倍政権が残した負のイメージを払しょくする意味では、野田聖子総務相あたりがダークホースか。小泉進次郎筆頭副幹事長もゼロではないが、どうかな。要請されても本人が断るのでは。いずれにしても、巷間いわれている以上の予想は持ち合わせていない。

A)そこであえて「派閥力学」に話を戻すが、最近額賀派が竹下派に衣替えした。大宏池会構想も、まだ消えたわけではない。竹下派はかつての経世会。宏池会も経世会も、もとは吉田学校を源とする保守本流意識が強い。政治路線も、宮澤喜一氏や野中広務氏、後藤田正晴氏らハト派色が強い。改憲や軍国主義路線を強引に推し進めようとした安倍政権とは一線を引く意味で、この二つの潮流が手を組めば、少しは自民党政治も変わるのではないか。その場合、トップに石破氏がなるか岸田氏がなるかはそれほど重要ではないと思う。

B)うーむ、そんなにうまくいくだろうか。

C)あと、二階派がどう動くか。二階俊博幹事長の動きも、政局に影響を与えるだろう。

A)二階氏は、権力の掌握には関心はあっても、政策にはあまり関心がないのでは。キーパーソンにはならないと思う。

B)しかし、ここにきて「与野党交代を」という世論が起きないのも情けない話だ。

 

劣化する官僚組織

A)安倍政権下では、官僚の劣化が目立った。森友学園問題をめぐって口裏合わせを求めるなどの財務官僚の動きもひどいが、週刊新潮が報じた福田淳一財務省事務次官の女性記者に対するセクハラ発言もひどい。週刊誌報道とはいえ、音声データまで出てきたから、これもおそらく事実だろう。このまま事務次官を続けられるとは思えない。

B)元東大全共闘代表の山本義隆氏が「近代日本一五〇年」(岩波新書)という本を書き、その中で、士農工商の最上位にいた武士が工業や商業を担当するにあたっては、特別なエリート意識を植え付ける必要があったとの説を紹介している。日本の場合、市民社会が未発達な中で近代化を推進する必要があり、その際に士族は一定の教養があり、家(国家)を守るというエートスを植え付けられた存在である点で近代国家建設に格好の集団だった。世界に冠たる官僚組織の出現は、武士階級の存在があったからだといえなくもない。山本氏は技術エリートの誕生の背景を述べているだけだが、この説は官僚組織一般に広げることも可能だろう。

C)日本の近現代史を研究するジョン・ダワー・マサチューセッツ工科大名誉教授も日本の官僚組織の優秀性を認めており、その観点で「昭和」を書いている。すなわち、日本の官僚制は戦後も温存され、それが高度経済成長を生んだとする見方だ。つまり、日本は戦前、戦中、戦後を通じて社会の骨格は変わらなかった。「昭和」はひとつながりだったとする説だ。

A)その伝で行くと、明治以降の日本が進めてきたのは国家総動員体制の確立であり、その一つがアジア・太平洋戦争、そしてもう一つは高度経済成長だったことになる。

B)城山三郎の小説に「官僚たちの夏」があり、ミスター通産省と呼ばれた佐橋滋をモデルにしている。国家を背負って立つかのような剛腕事務次官で、政治家とも対等に渡り合ったという。

C)確かに、日本社会が成熟するまでは腕力のある官僚も必要だった。しかし、日本という国のかたちが一応整った現在、ペーパーテストで優秀な成績を収めた人たちが国を動かすというのはどうか。官僚主導から政治主導というのは、ある側面では正しい。しかし、官僚はもともと上目遣いで生きる人たちだ。そこに「内閣人事局」などというリモコン装置を設置すれば、弊害ははなはだしいというのも予想できたことだ。

A)国家総動員体制の時代も終わり、政治主導といいながら官邸が無理難題、非合理的なことを押し付けてくる。これが、官僚組織を取り巻く今の風景ではないか。

B)山本周五郎の小説「樅ノ木は残った」は藩の存続のために自ら汚名をかぶる武士の話だが、果たして今、官僚たちは汚名をかぶることで何を守ろうとしているのだろうか。

C)公文書改ざん問題では、大阪地検特捜部が立件見送りを決めたと毎日新聞が報じた。行政、立法に続いて司法よお前もか、という感じだ。

B)そこは少し違う感覚を持っている。問題の発端は選挙を通じてこんな政権を作ってしまったことにある。その解決を司法に求めても仕方がない。検察もしょせんは官僚だ。政治が国民意識の反映だとすれば、まともな政治をする政権を、選挙を通じて求めていくしかないのではないか。

 

相撲協会・レスリング協会に共通する問題

A)目を転じてみる。日本相撲協会、日本レスリング協会と、スポーツ関連の公益法人団体の醜態が目についた。

B)相撲協会の、日馬富士の暴行事件に端を発した一連の騒動。結局、貴乃花一人が悪者にされて一件落着という形になった。もとは日馬富士の暴行事件なのに、貴乃花が親方衆に取り囲まれて詰問されるという異常な事態もあったようだ。

C)しかし、貴乃花の対応に問題もある。

B)その、どっちもどっち、というのはよくない。本当にいけないことは何なのかを突き詰めないと。

A)最近では、舞鶴市での巡業で市長が倒れ、救急措置を施した女性に「土俵に上がらないで」とアナウンスした行司がいた。ちびっこ相撲では、昨年まで認められた女児の参加が認められなくなった。

B)日馬富士の事件も女人禁制の話も、なぜそうなるのかという話が伝わってこず、結論だけが下されている。舞鶴巡業での行司がそうであったように、マニュアルだけがあって「みんなそれに従え」と言っているだけのように見える。なぜ女性が土俵に上がってはいけないのか、これだけの騒ぎになっているのにいまだよく分からない。

C)相撲協会の話になると、ワイドショーでは相撲記者クラブ会友と称するベテラン記者たちが出てくるが、彼らの言っていることを聞けば単なる御用記者だとすぐわかる。もともと、暴力はいけないとか、男女差別はあってはならないとか、社会一般の話なのだから彼らが出てくる余地はない。ワイドショーも人選を考えたほうがいい。

A)一方、レスリング協会は。

B)伊調馨の言動が栄和人・女子レスリングコーチの癇に障ったのだろうが、この件では吉田沙保里の言動が頭に浮かんだ。個人的な付き合いはないので詳しくは分からないが、第三者的に見ると対照的だ。一言でいえば吉田はコーチに従順であり、マニュアル通りに動く。伊調はそのマニュアルを無視して、自分の納得のいくまで考え、行動する。少なくともそのように見える。その結果、吉田は志學館大副学長に登用されるなど寵愛され、伊調は弾かれた…。

C)吉田は乳酸飲料の不気味なCMにも出ている。

A)伊調が五輪4連覇の後、しばらく考えたいといって次を目指すかどうか明らかにしなかった心境はわかる。しかし、そこをとらえて「そもそも伊調さんは選手なのか」といった志学館大学の学長会見もひどかった。

B)伊調はオリンピック4連覇、吉田は3連覇止まりだ。伊調のレスリングへの向き合い方は「レスリング道」とも呼べるものだ。伊調が追求しているものがレスリング道なら、選手であるかないかなどどうでもいいことだろう。

A)この点で相撲協会のトラブルと共通点があるかもしれない。貴乃花は相撲道を追い求めて相撲協会から疎んじられた。伊調も、レスリング道を追うあまり栄コーチの不興を買った。結局は表面上のマニュアルを順守して立ち回る人間だけが組織の中枢に残る。

B)官僚組織もそうだろうか。

A)そこはもう少し見ないと分からない。もうひとひねりありそうだ。

 


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中道+左の新党は作れるか~社会時評 [社会時評]

中道+左の新党は作れるか~社会時評

 

◇衆院選結果をどう受け止める

A)一時は、政権交代もありうるかといわれた衆院選。終わってみれば大山鳴動ネズミ一匹、自公で3分の2以上を占めて政権継続という結果になった。希望の党は当初100150議席という予測もあったが、結局50にとどまった。このうち45は民進党出身者で、純粋に希望の党から出て当選したのはわずか一人、それも比例復活だった。

B)こうした中で目立ったのは立憲民主党の躍進だった。公示前の16から54議席に伸びた。その分析はあとでしてみたい。

C)自民は比例区で33%の得票率だったが議席占有率は6割超と、相変わらず勝者のバイアスがかかっていた。衆院選直後(102324日)に朝日新聞が世論調査を行い、自公3分の2超の結果は「多すぎる」が51%、「ちょうどよい」が31%だった。同時期に読売も同趣旨の調査を行い、年代別の受け止め方を報じた。それによると、1829歳は6割以上が「よかった」と受け止めている。すべての年代では「よかった」が48%で、朝日の調査より肯定的評価が高い。おそらく、調査主体を見て反応が変わったのだろう。

A)1829歳は、物心ついたときには小選挙区制で、特に10代は小選挙区制以前をまったく知らない。そうしたことも影響しているのでは。総じて若者層の安倍政権に対する抵抗感のなさも目立つ。おそらく、民主党政権と安倍政権の二つしか比較対象がないためだろう。冷戦期から半世紀近く政治を見てきた60歳代が安倍政権に強い抵抗感を持つのとは、大きく違っている。

B)投票動向と議席占有率のギャップという問題も大きいが、いったい何を問うた選挙で、有権者はどういう意思を示したのかが、選挙を終わっても判然としない。この選挙は何だったのか。

A)強いて言えば、安倍政治の5年間を問う選挙だったといえる。

C)解散を表明した9月25日の会見で安倍晋三首相は、消費税の使い道を変更することを国民に問うといったが、このテーマはいつの間にか吹き飛んだ。国会で何の議論もせずいきなり「こう変えたいがどうか」と問うのも変だ。対北朝鮮も国民に問うと言ったが、何を問うたのだろうか。

B)たとえばかつての解散・総選挙を振り返るとき、「吉田茂政権の実績を問う選挙だった」とか「佐藤栄作政権の実績を問う選挙だった」といっても、後世の人間にはちんぷんかんぷんだ。これと同じことがいま行われた。

A)国難突破解散といっておきながら、選挙後の特別国会を臨時国会に切り替えて国難突破の対処法を議論することもしない。結局、まともな国会審議は来年の通常国会まで半年間見送りだ。「今なら勝てる解散」といい、あまりにも身勝手というほかない。

 

◇立憲民主の「躍進」の意味

A)フォーカスがどこにあるか、まるで見えない選挙だったが、唯一その中で実像らしきものが見えたのが立憲民主党だった。

B)先ほどの「安倍政治を問う選挙」という位置づけが一定の有効性を持つとすれば、安倍政治への是非について唯一、有権者に届く選択肢を示すことができたのが立憲民主だったといえる。そのほかの党は、希望の党を含めてそれができなかった。「排除の論理」が希望の党を失速させたという見方がメディアで大手を振っているが、違うのではないか。端的に、希望の党の立ち位置は有権者の心に届かなかったのだと思う。

A)そこをもう少し詳しく。

B)今回、自民は比例33.28%で、前回衆院選より微増だ。一方、先ほどの朝日世論調査では、安倍首相の進める政策に「不安」が54%、「期待」が29%だった。首相を「続けてほしい」は37%、「そうは思わない」が47%だ。つまり、政権は自民でもいい(あるいは「仕方ない」)が、安倍首相は政策に不安があるから代わってほしいと思っている人達が結構いる。では、どのあたりに不安を持っているのか。一つは、国会内の手続きを無視した強引な軍国主義化路線(安保法制、共謀罪、特定秘密保護法…)、もう一つは大企業を優遇すれば中小企業まで潤うというトリクルダウン路線。この経済路線は企業の内部留保を増やすだけ、ということは既に明らかで破たんしている。それから、「この人たち」発言に見られる上から目線の政治。これらをきちんと批判したのが立憲民主党だった。憲法無視の国会運営には立憲主義の旗を立て、大企業優先の新自由主義路線には「お互いさま」精神、弱者を助ける、という旗を立て、上から目線には草の根民主主義。枝野幸男代表は選挙期間中「あなたたちがつくった党だ」といっていた。立憲民主の政策は奇をてらったものではなく、枝野氏の言い方をそのまま使えば、いずれも「まっとうな」ものだった。

C)気がついてみれば今の永田町、どの党もトップダウン型になっている。安倍自民党、公明、共産…。そして希望の党も小池代表のトップダウン型だということが見えてしまった。そうではない政治を有権者は求めているはずなのに。

A)安倍自民党への批判として、根幹にあるのは実は過度な対米重視路線だと思う。この点は立憲民主も前面には出していなかった。今度、どういう立ち位置で臨むか。今の日本が抱える問題の大きなものは原発と沖縄だと思うが、この二つを解決するには対米従属路線の変更が必要だ。

 

◇3:5:2の分布図~希望の党はなぜ失速したか

A)1026日付朝日「論壇時評」で小熊英二氏が「総選挙の構図」を分析していて、安倍首相周辺が「日本人は右が3割、左が2割、中道5割」と語ったと紹介している。そこから選挙の構図を分析しているのだが、興味深かった。今の日本は有権者が約1億人だから、右(自公)が3000万人、左(リベラル、共産)が2000万人、あとは無党派の5000万人。多少の凸凹はあるにしても、今回の選挙の投票率は50%強だから、右と左は投票に行ったが中道はほぼ棄権に回ったと見ることができる。その結果、小選挙区効果で自公の圧勝に結び付いた。無党派が棄権に回る限り「左」は「右」に負け続けるが、民主党政権ができた時は無党派のうちの2000万人が反自民に回って政権交代を起こした。

B)カギを握るのは中道の5割だ。

A)中道の5割に網をかけるような新党を作れば自公の3割を凌駕できると考えたのが、希望の党だった。そこで「リベラル切り」をしても勝算があると考えたが、これが誤算だった。自公の3割、リベラルの2割に対抗して中道が勝つためにはさらに3割以上の投票が必要になる。合わせて8割以上だ。民主党政権ができた時でも投票率は69%だった。つまり、中道だけで政権交代を起こすというのは幻だというのが小熊氏の分析だ。

C)「排除」とか「さらさら」とかの言葉が希望の党の失速を招いたというのは、たしかに一つのきっかけではあったかもしれないが、本質的な議論には結び付かない。やはり、リベラルを含めた層と中道を結び付ける形で新たな政治勢力を作り上げないと、政権交代はむつかしいのではないか。ここで問題になるのは共産党の存在だ。リベラルを個人主義に基づく自由主義と定義すれば、共産は、厳密な意味ではリベラルには入らない。できれば「共産」の看板を外してもう少し緩やかな党になれば、中道+リベラルの塊を作りやすいのだろうが…。

B)小選挙区制度を導入して20年以上たった。それなのに、この選挙制度にとって必須といわれる2大政党制が作られていないという事実は、この制度の是非を問ううえで一つの解答が示されているような気もする。

C)では、かつての中選挙区制に戻すかといえば、これは政権交代自体を否定することになりかねない。悩ましいところだ。石にかじりついてでも政権交代を果たすしかないのでは。


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日本の政治は変わるのか~社会時評 [社会時評]

日本の政治は変わるのか~社会時評

 

「希望」の風は吹かない

A)総選挙の構図がようやく見えてきた。

B)自民、公明が一つ、希望、維新がもう一つ、立憲民主党、社民、共産が三番目のブロック。二つの保守と一つの市民派リベラル+共産という構図だ。

C)希望は、あれだけ政権選択の選挙といったのだから、定数の過半数は候補を立てるだろうが、一挙に政権交代というのは難しい情勢だ。いいかえれば、それほどの風は吹かないだろう。

A)これまでの衆院選を振り返ると、積極的無党派層が全国で約2000万人いるが、これが雪崩を打たないと一気に政権を取る議席数にはならない。民主党政権誕生の時はこの2000万票が動き、結局民主は3000万票を取った。

B)なぜ、そうした情勢が生まれないのか。

A)二つある。一つは、この無党派層は市民派リベラルへのシンパシーが強い。だから、市民派リベラルに開かれていないと無党派層のなだれ込みは期待できない。その点、希望がリベラル切りを行ったことで、自らの可能性をふさいでしまった。もう一つは、小池百合子代表の強権的な政治手法が見えてしまったこと。都知事選と都議選では、古い体質の都議会に挑むか弱いジャンヌダルクという構図を作れたが、今回の希望と民進の「合流」では、女帝に仕分けされる民進の哀れな議員という構図になった。知事選とは全く逆だ。そこを有権者は見ている。

B)いまさら死んだ子の年を数えても仕方ないが、小池さんが民進党議員を丸呑みしていたら。野合批判は起きたかもしれないが、それ以上の化学反応が起きた可能性もある。小池さんは「アウフヘーベン」という言葉をよく使うが、その割には言葉の意味を理解していなかった。

C)要は小池百合子という政治家の器量の問題だ。都議会の最終日に都民ファーストの2議員が離党したことも、これまで垣間見えていた希望の党の運営への疑問の傍証となった。離党議員が言うように都民ファーストの中で議員活動が制限されていたとすれば論外の話だ。民進党議員に突き付けた政策協定書というのも、かなり評判が悪い。

B)トップが強大だと、よくあることだが周囲が忖度して過剰に縛ってしまう。知事の指示で都議への言論統制をやっていたとしたら話にならないが、それはさすがにないだろう。こうした話は小沢一郎氏が政界再編の主役だったころにもよくあった。そうした類のことだろう。

C)しかし、今の希望にマイナスに働くことは間違いない。10月5日付朝日に世論調査が載っていたが、9月下旬との比較で希望は微減、自民微増だった。できたばかりの立憲民主党が民進とほぼ同じ支持を得ていたのが目を引いた。

A)立憲民主党には、判官びいきの票が集まった。節を曲げず、というのも日本人の心情に響く。

B)今回、風が吹くとすれば立憲民主党だろう。ツイッターのフォロワー数も10月5日時点で13万を超え、各党のトップになったそうだ。自民は11万、希望は数千の単位だ。

C)ただ、立憲民主党が自民に対抗して二大政党制の一翼を担うとは考えにくい。そうなるためには保守との連携がいる。

 

分水嶺は自民200議席

A)希望が単純過半数に届かないとすれば、選挙後はどういう政界地図が考えられるか。

B)希望はよくいって110止まりでは。公明、維新、共産が現状維持で立憲民主党に風が吹き、70議席取ると自民は190議席になる。解散前より100議席以上減らし大惨敗だ。情勢は今後変わるかもしれないが、現時点で考えられるのはこのぐらいの数字だ。希望と維新で150。これに公明の3040がつくと、自民と拮抗した数字になる。これに旧民進から無所属で出た人たち、さらに自民内の反安倍色の強い人たちを入れると、完全に多数派になれる。小池サイドで現実的に考えられているのは、この線ではないか。不確定要素は立憲民主党で、予想外に不振なら4050。そうなると公明、維新、共産が増えるが、自民が200以上とれば自公路線は維持される可能性がある。分水嶺は自民の200だと思う。

A)自民200でも惨敗は惨敗。その場合、安倍晋三首相は代わるのか。

B)断言できないが、多分代わるだろう。

C)10月5日に小池さんは前原誠司・民進党代表との会談後に自社さ政権の例を持ち出した。一般論として言ったわけではなく、やはり前例として頭の中にあったのだろう。この場合の自民は希望、さきがけは維新と公明だとすると社会は自民の反安倍勢力となる。その頭の中がつい出てしまった。政権選択を言っているのに、それができなかった場合の奇襲作戦の中身を漏らしたことになる。

B)確かに、自希公維政権ができるとすれば、かなりの奇襲作戦だ。本当にそんな政権ができるのか。

C)小池さんの政治家としての体質、改憲論者とか安保法制の同調者であるとか、核武装論者とかがあるが、それとは別に希望の党が掲げる政策は穏健保守を目指しているのかと思わせるところがある。原発ゼロ政策とか。第一のキャッチフレーズが「改革主義的で寛容な保守」だ。

B)それは単にポピュリストの側面が出ているだけでは。ベーシックインカムの導入も、どこまで本気か分からない。

C)そうかもしれない。しかし、今の安倍政権に対抗する保守新党を作ろうと思えば、小池さん本人の政治信条は別として中道に近い穏健保守を目指さなければならないだろう。そうしないと広範な有権者の受け皿にならない。106日に希望の基本政策が発表されたが、おおむねそうした線だった。別の言い方をすると、枝葉の部分を除けば安保、憲法、経済政策など自民党の政策とそれほど変わらない。

 

自民の本丸が割れなければ

A)では、今回の選挙は何を問う選挙なのか。本来の意味で国のかたちを問う二大政党制にしようと思えば、自民の本丸が割れなければならない。今の安倍政権の最大の問題は、市民感覚と国政の根幹がずれてしまっていることだ。国家主義的な体制が次々と作られ、国民より国家が優先するような憲法改正草案が用意される。経済はトリクルダウンと称して企業にカネがつぎ込まれるが、企業はそれをため込むだけで庶民には回らない。社会保障は小泉純一郎政権以来の新自由主義で自己責任論が幅を利かす…。こうしたことに疑問を持つ人達への選択肢が、現状の政治の枠組みでは見当たらない。

B)国家主義的ではなく平和外交を基軸にした政権運営、経済は新自由主義でなくケインジアンにも理解される政策…。そう考えると、本来は宏池会あたりが安倍政権とたもとを分かつべきだ。かつて自民党内で比較的穏健な政策を志向した経世会が割れて新生党、新進党をつくり、政界再編の推進役になったが、政策の側面からすれば今は宏池会がその役割を担うべきだ。

A)岸田文雄・政調会長らお公家集団に、そんな荒業ができるか。

B)それをしないと、本当の保守2党体制にはならないだろう。

C)その時に危惧されるのは、市民派リベラルの声が埋没することだ。保守2党体制のアメリカで起きていることを考えたほうがいい。大統領選でバーニー・サンダーズがあれほど票をとり、白人貧困労働者の怨嗟の声を背にトランプという異形の大統領が生まれたのはなぜか。弱者や少数者の声をすくい上げるシステムが政治には必要だ。アメリカでエスタブリッシュ批判が起きたのも、そういうことだろう。その意味では立憲民主党が今後どうなるかは重要だ。できれば、こうした声を包摂するような二大政党制が生まれてほしい。あくまで現行の小選挙区制度を柱とした選挙制度が続く限りの話だが。

A)小選挙区比例代表並立制が導入されて20年になるが、これまでの政治の変遷を見ると明らかに実験は失敗だった。日本の政治風土に合わない制度といっていいが、これを変えるエネルギーが今の日本にあるだろうか。


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ひょっとすると戦後政治の転換点~社会時評 [社会時評]

ひょっとすると戦後政治の転換点~社会時評

 

社共リベラルは生き残れるか

A)予想を上回るスピードで政局の歯車が回り始めた。

B)民進党の前原誠司代表が9月28日の両院議員総会で希望の党(小池百合子代表)への合流を提案、最終的に了承された。民進党は事実上の解党となり、結党20年の歴史に終止符を打つ。

C)前原代表は両院総会で「丸ごと合流」を言っていたが、希望の党側から発信されるメッセージはそんなものではない。29日朝に行われた前原氏との会談の後の小池コメントも、「全員受け入れるつもりはさらさらない」とか「しっかり絞り込みをさせていただく」とか、かなり厳しいものだった。

B)民進党(民主党)が結党以来抱えてきた社民勢力と保守勢力の亀裂をそのまま引き継ぐことへの警戒感の表れだろう。それにしても、査定をされる側の民進党議員にとっては韓信の股くぐりをさせられる思いだろう。

A)民進党は、小選挙区下での2大政党制を想定してできた政党だ。政権交代を意図する以上は、保守も含めたウイングを持たなければならないが、社民リベラル勢力を抱えていては保守まで含めたウイングは持ちにくい。

B)そういうかたちで社民リベラルが切り捨てられると、これまで築いた野党共闘や市民運動との連帯も無に帰す。

C)日本が小選挙区制=2大政党制を選択した時点で、今の状況は想定された。保守2党論も随分前からあった。いま向かおうとしているのは、そうした方向だ。

B)それはいいことなのか。

C)いいか悪いかは判断が難しい。ただ、戦後築かれてきた護憲主義・平和主義の流れが重大な危機にあることは確かだ。

A)「護憲と平和」は市民の間に一定の広がりがあり、これを断ち切るとすれば問題ではある。しかし、これに対する一定のシンパシーを維持しながら民進党を存続させたとしても、党は「座して死を待つ」形になるだろう。それはここまでの動きを見ても容易に分かる。

B)ただ、地域によっては民進+共産が自民に対する脅威になってきている。

C)戦後政治の中で社民+共産路線が得票数や議席数で占めてきた比率は、おたかさんブームのような例外を除けばよくて3割ぐらいだ。その3割が自民党の改憲を止めてきたわけだが、小選挙区では投票数の過半数を取らなければ議席にならない。こうした選挙制度のもとで闘おうとすれば、従来の社民路線にプラスアルファの勢力が必要になる。こうしてできた民進党には、必然的に寄せ集めの批判がついて回った。

A)二つの保守と社民+共産路線という3分割の政治地図は可能ではないか。

B)そうすると、常に連立政権になり政治が不安定化する。保守は元々権力追求の集団だから保守は一つでいいという議論になる。55年体制もそうしてできた。

 

だれがシナリオを書いているか

A)希望の党は200人を超す候補を立てるようだ。

B)前回、単純過半数は難しいだろうと予測したが、希望の党としては一気に政権奪取を狙うつもりなのか。

C)その辺はまだ見極めがつかない。いずれにしても、今後の世論調査で流れは見えてくるだろう。それが小池出馬か否かにも関わってくる。

A)小池百合子、前原誠司と旧日本新党のメンバーが前面に出ている。あの時の非自民、非共産連立政権では小沢一郎氏がかなり動いたが、今回は前面に出ていない。

B)民進党内に小沢アレルギーが強い。小沢氏が動いていることが明るみに出れば前原提案もつぶれていたかもしれない。そうした懸念もあって、表面に出ないよう気を遣っているのではないか。小池氏もかつては一緒にやったが今回は小沢氏が表面に出ないほうがいいと思っているだろう。

C)しかし、小沢氏は深層部で動いているのではないか。これだけのシナリオを小池・前原で書いたとは思えない。かつて新進党結成の時、公明は参院だけ党名を残した。今回も、目的は違うが民進党が同じ手法を使った。これを見た時、小沢氏の影を実感した。連合が絡んできたのも小沢氏の動きかもしれない。

A)そうだとすれば、公明もどちらに行くか分からない。今は自公で連携しているが。小沢氏は昔から公明とパイプがある。

B)小沢氏と小泉純一郎・元首相は不倶戴天の仲だ。小泉氏が小池さんとの会談の後、選挙には一切かかわらないと明言した。これも小沢氏の影を実感させる。

C)もともと、安倍自民党と公明は政策面でぎくしゃくしている。安保関連法とか憲法問題とか。小池さん自身は極右的な体質だが、結党の際に表明したような改革主義的な保守、その上に中道主義的な路線を取ると明らかにすれば、公明だって乗るかもしれない。そうすると、首相は山口那津男さん(公明代表)がいいといったのは単なるリップサービスではなかったことになる。

 

55年体制を引きずる自民

A)選挙結果によっては自民党が割れることだってありうる。民進党解党で政界再編は終わらないのでは。そうすると、2017年は戦後史の一大転換点になるかもしれない。

B)なんだかんだ言いながら、自民党は冷戦終結後も55年体制の体質を引きずっている。そこに終止符を打つとすれば、その意味は大きい。過度な対米追随路線とか、アジアをにらんだ独自の外交政策がないとか、問題は多い。そもそも、安倍や麻生といった戦後政治家の系譜を引きずる人が今の政治を担っているのがいかがなものか。小池さんの言う「しがらみのない政治」は、そうしたことへの批判に聞こえる。「原発ゼロ」も実は来年満期を迎える日米原子力協定をどうするかが絡んでくる。

C)そこまでいけば、社共路線=平和主義・護憲主義も大きな転換点にさらされるだろう。

A)ただ、下世話な話をすれば、ここまでの小池さんの動きを見るとかなり権力主義的な傾向が見える。そこがケンカ師、ギャンブラーとしての面目躍如かもしれないが、安倍首相の後に同じような強権政治が出現するとなると、気が重くなる。


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