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底流に反戦の思い~映画「二度目のはなればなれ」 [映画時評]

底流に反戦の思い~映画「二度目のはなればなれ」


 英国海軍の兵士としてノルマンディー上陸作戦を戦った老人が、90歳を前にある決断をする。このエピソードを軸に、70年連れ添った妻とのラブストーリーが語られる。一見ほのぼのとした物語だが、底流に反戦の思いがひめられ骨太の映画だ。

 2014年の英国。ブライトンの老人ホームでバーナード=愛称バニー・ジョーダン(マイケル・ケイン)とアイリーン=愛称レネ(グレンダ・ジャクソン)夫婦は静かに暮らしていた。この年ノルマンディー上陸作戦70周年を記念する式典が行われると聞き、バニーはドーバー海峡を渡ろうと決意、レネにだけ告げて一人フェリーに乗る。バニーがいなくなり、ホームは大騒動に。
 フェリーでは元空軍兵士アーサーと出会い、互いの体験を語る。対話の中でバニーがなぜノルマンディーを訪れようとしたか、アーサーがどれほどの心の傷を抱えていたかが明らかになる。
 バニーは上陸用舟艇で戦車隊の兵士ダグラス・ベネットと知り合う。銃弾が飛び交い怯えるベネットを送り出した後、見たのは直撃弾を受け炎上する戦車だった。アーサーは、爆撃機で出撃していた。後に爆撃地点には弟がいたことを知る。自分が落とした爆弾で弟は死んだのではないか。苦悩の中でアル中になったという。
 アーサーは式典のチケットを持っていた。二人分あるという。とっさに出発を決めたバニーにはなかった。アーサーの好意で手にしたチケットを、同乗していた元ドイツ軍兵士に譲った。彼の目的はそこにはなかった。バイユーの戦没者墓地を訪れ、ベネットの慰霊をすることだった。同行を求められアーサーも応じた。多くの墓標を前に「みんな無駄な死だった」とつぶやくバニー。

 老人ホームが捜索願を出したため、騒ぎは広がった。消息が判明し「The Greate Èscaper」(大脱走者)の大見出しで新聞に報じられた。ホームを脱走しノルマンディー作戦に参加した老人がいる、と半分茶化した報道である。
 やがてホームに戻ったバニーは妻にわびた。レネは、今度行くときは私を置いていかないで、と答えた。テロップで紹介されたところでは、バニーはその半年後に亡くなり、さらに半年後にレネも世を去ったという。3度目の「はなればなれ」はなかったのだ。
 2023年、英国。監督オリバー・パーカー。この映画、英国では大ヒットしたらしい。抑制のきいた表現ながら戦争の無意味さを訴えた点が共感を呼んだのだろう。


二度目のはなればなれ.jpg



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