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末期症状だが、代わる政党がない。トホホ…~三酔人風流奇譚 [社会時評]

末期症状だが代わる政党がない。トホホ…~三酔人風流奇譚

 

安倍政治の功罪

松太郎 安倍晋三政権が幕を閉じる。それにしても7年8カ月、長かった。

竹次郎 メディアは政権の功罪をめぐってかまびすしい。

梅三郎 功の部分ってあるのか。罪の部分ばかり頭に浮かぶが…。

松 安保法制(戦争法)やそれにつながる特定秘密保護法をどう評価するかだ。これを政権の「レガシー」だという人もいる。

梅 安保法制は将来、日本が戦争に首を突っ込んだときに間違いなく歴史的起点として語られる。あくまでも「負のレガシー」だ。

竹 政権の総括として外せないのは、森友学園や加計学園をめぐる疑惑、桜を見る会での支援者優遇(買収)疑惑。ひとくくりでいえば権力の私物化の問題だ。あったのかなかったのか、いまだに不透明だ。そして財務省近畿財務局職員の自死。彼は公文書改ざんを強制されたと遺書を残した。

松 数々の疑惑の中で最も大きいのは公文書改ざん問題。世間でいわれていることが事実だとすれば、霞が関の官僚は政権を守るためなら何でもする、ということになる。官僚が守るべきは国民のはずなのに。

竹 経済政策、外交についてはメディアでさんざん取り上げられているのでここでは簡略化したいが、経済については円安株高を維持するため日銀を取り込み、年金資金を株式市場に投入することまでした。これらはとても今のままですむとは思えない。

梅 株高を維持するために多額の公金をつぎ込んだが、結局それは企業の内部留保となり、トリクルダウンで中小企業を潤すということにはならなかった。一方で生活保護者への支給基準が引き下げられるなど露骨な弱者切り捨てが行われた。結果として経済格差(ジニ係数)は先進国でも下位に位置する。

竹 公文書改ざん疑惑は安倍政権の特徴的な出来事だが、背景にあるのは言葉と信義を軽んじる政権の姿だ。国会では野党に無意味なヤジを投げつけ、街頭演説では「あの人たちに負けるわけにはいかない」と憎悪を剥き出しにした。たしかに日本はGDP世界第3位、防衛力も5位か6位という、それだけ見れば大国だが、その割に世界から「大国」とは見られていない。内田樹氏のブログを引用すれば「知性と倫理性を著しく欠いた首相が長期にわたって政権の座にあったせいで、国力が著しく衰微した」という総括になる。

梅 けさ(9月4日)の朝日新聞に世論調査結果(調査日9月2、3日)が載っており、濃淡はあるが安倍政治を評価するという声が7割あった。

竹 病で政権の座を降りた安倍氏への同情票だろう。こんなとき、ロジックより心情で動く日本国民の特性がよく表れている。

 

永田町のドタバタ劇

松 安倍首相の退陣表明が8月28日夕。自民党総裁選は9月8日告示、党員投票なしで両院議員総会を14日に開き選出。16日の臨時国会で首班指名される。退陣表明からわずか半月で次期首相が決まる。

竹 いかにも手っ取り早いという感じだがそれは置くとして、問題なのは決まるプロセスだ。今のところ菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長の争いだが、党内5派閥が菅氏支持を表明、9割がた「菅政権」が決まってしまった。1日に出馬表明した岸田、石破両氏はこれまでなんとなくそれぞれの見識を述べる機会があり、ぼんやりとだが政見らしきものは推測がついた。しかし、菅氏についてはどんな政見の持ち主なのか見当がつかない。2日の出馬会見でようやく政見らしきものを述べたが、ほとんどは安倍政治の継承というものだった。

梅 記者から安倍路線とどこが違うのかと聞かれ、色を成して縦割り行政をぶち破る、と答えていたが、縦割り行政の弊害をなくすというのは政治目標でなく手法の問題。菅氏は参謀役としては有能だったかもしれないが、そのまま政治リーダーとして通用するとは思えない。このやり取りにもその点が出ている。

竹 特に外交。安倍政権では北方領土問題、拉致問題は進展なし、日韓関係は戦後最悪、といわれた。トランプ米大統領とは良好な関係を築いたといわれるが、F35などの防衛装備を米国の言い値で買ったからに他ならない。沖縄問題を解決するには自立的な対米関係を築くしかないが、できていなかった。これらをどう打開するのか。安倍政治を継承するというだけでは展望は見えない。

松 そんな中で3日、東証終値がコロナ前の水準に戻った。菅政権が確実になり、アベノミクスが継承されるとの見通しを好感したためだろう。今まで安倍政治でうまい汁を吸ってきた人たちも安堵している。

竹 その意味では、いち早く「菅担ぎ」に走った二階俊博幹事長、麻生太郎副総理、細田博之元幹事長、竹下亘元総務会長ら派閥領袖も同じ事情だ。みんな安倍政権下で吸ってきたうまい汁をこれからも吸いたいと思っている。

松 菅会見の直後に行われた3派領袖の合同会見は異様だった。二階氏を含め永田町の妖怪を見ているようだった。映し出されたのは、目先の利益を求めてうごめく政治家の醜態だ。国民の幸福を案じるなどという姿勢はかけらも見られない。

梅 あるいは、長老たちが密室で自分たちの長を選ぶムラの論理。今回も選出方法をめぐって若手議員の不満が随分あったようだが、いい加減こうした組織のありようは若手が蹶起して打倒しなければ。

竹 今後、菅首相会見のたびに国民は永田町の妖怪が背後でうごめくのを感じる。永田町ドタバタ劇も、ここまで来たかという思いだ。

松 見過ごしてはならないのは、なぜ菅氏は総裁選出馬を決めたかだ。テレビコメンテーターが言っていたことで真偽はわからないが、当初「岸田後継」を決めていた安倍氏は「岸田は石破に勝てるのか」と漏らしていたという。これが事実なら、岸田は石破に取り込まれて2人の連合政権ができ、結果としてモリカケ、桜、公文書改ざん問題などの真相が暴かれると警戒したのでは。それを防ぐには菅政権しかなかった。

竹 安倍政治の継承といえば聞こえはいいが、数々の疑惑にフタをする政権、疑惑隠し政権というわけだ。もともと「石破つぶし」が最優先されたのも、疑惑を暴露されかねないという危惧が大きかったからだ。

 

忘れ去られた政治の原点

梅 政治の原点は何か、ということが次期政権のトップを選ぶ過程で語られなければならないが、そんなものはどこかに行ってしまった。政治とは経世済民、世を治めて民を救う、そのために富の再配分に心を配ることにあるが、安倍政治にはみじんも感じられなかった。そこをどう軌道修正するか、経済、外交、防衛はどうなるのか。少なくともそこは語るべきなのに。

竹 コロナ禍は人間の安全保障の問題であり、本来の意味での政治の力量を図る典型的な事例だったが、安倍政権は無能だった。

松 菅氏は官房長官、政権の門番としてはある意味「鉄壁」だったかもしれないが、政権トップとしてはそれでは持たない。

竹 号砲が鳴った時点でトップを走るランナーはテープを切っていた、あるいは読み始めたら結末が既に明らかにされていた、そんなミステリーを読まされている感じだ。

梅 かつて小渕恵三首相が誕生した時、米国メディアだったと思うが「冷めたピザ」と評した。このまま菅政権が誕生すれば、国民はピザところか「冷めたラーメン」を食わされる思いがする。

松 こういう事態に陥ったときには政権交代可能な政党がもう一つあってただちに交代する、それを生み出すのが小選挙区制=二大政党制であったはずだが。こんな腐りきった政党が政権にしがみつく姿をいつまで見なければならないのか。

竹 年後には確実に総裁選がある。そのときどうなっているかだ。菅政権はショートリリーフか先発完投型かが見えてくる。そのとき、まともな政治論議があるか。

梅 そう願いたいが可能性は低い。今回と同じドタバタ劇が繰り返されるのでは。

松 その前に、菅首相による解散総選挙があるかどうかだ。先ほど安倍氏への同情票が世論調査結果に表れている、といった分析があったが、そうだとすれば自民党にとっての勝機は今だといえる。今秋解散はあるのではないか。

竹 それもあるが、自民党議員の心理から推し量るほうが分かりやすい。今のままだと菅政権は談合政権と呼ばれ、安倍政治の数々の負債も抱えて議員としてはやりにくい。それなら解散総選挙に打って出て、勝てば政権の正統性が得られる。負ければさっさと首を挿げ替える。早く白黒つけたほうがやりやすい。これが議員心理では。

梅 もし総選挙で勝ってしまうと、菅政権を作り出した談合の当事者たちは相対的に政治的影響力が低下する。それは困るという思惑もあるだろう。中曽根政権ができた時、田中派の金丸信氏だったと思うが、担ぐ神輿は軽いほうがいい、とうそぶいた。そうした事情も絡んでくる。

松 いずれにしても、国民生活は置き去りにされてしまうわけだ。



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