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70年の熱気と覚悟が伝わる~映画「止められるか、俺たちを」 [映画時評]

70年の熱気と覚悟が伝わる~
映画「止められるか、俺たちを」

 

 1970年前後の東京・原宿を舞台に若松孝二以下、映画作りにアナーキーな情熱を燃やした集団がいた。その活動ぶり、というより疾走ぶりを描いた。当時の東京の街頭の「熱気」を少しは知るものとして、ある種の懐かしさと既視感が心地よく胸に迫った。

 1969年3月。何者かになりたい、と思い詰めた吉積めぐみ(門脇麦)が若松プロの門をたたく。とりあえずは助監督から始める。当時の若松プロは芸術と思想を煮詰めたような作品(若者から熱烈に支持された)とともに、糊口をしのぐためのピンク映画を製作していた。そんな撮影現場にめぐみは飛び込んだ。若松孝二(井浦新)に理不尽にどなられる毎日。しかし、現場には不思議な熱気と覚悟が漂っていた…。

 若松の磁力に吸い寄せられるように映画監督の大島渚、後に「映画芸術」編集長となった荒井晴彦、漫画家の赤塚不二夫らが姿を見せる。後にアカデミズムに向かった福間健二も、画面の端っこに出てくる。

 若松とともにプロダクションを支えた足立正生はやがて、アラブで過激なゲリラ闘争を展開するPFLPに共鳴、ドキュメンタリー映画を撮るため、現地へ飛ぶ。赤軍派としてPFLPに合流した重信房子らをフィルムに収めたが、当然ながら商業ベースの配給網に乗るわけもなく、全国自主上映を決行する…。

 そんな中でめぐみは、師匠の若松に映画人としての「刃」を突きつけなければ、と悶々とする。

 監督は「彼女がその名を知らない鳥たち」「孤狼の血」の白石和彌。若松孝二に「連合赤軍 あさま山荘への道程」などで若松組の常連だった井浦新。初々しさと退廃が同居する(この時代、なぜかこうした女性が時々いた)めぐみを演じた門脇麦とともに、怪演である。


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