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青写真が描けない日本~社会時評 [社会時評]

青写真が描けない日本~社会時評

 

A)近ごろの三大話は、西日本豪雨禍に続く北海道地震、体操協会まで揺るがしたスポーツ界の暴力体質問題、ちっとも盛り上がらない自民党総裁選。こんなところか。

B)北海道地震では、見渡す限りの山が震度7で崩落した厚真町の光景もショッキングだったが、全道一斉停電(ブラックアウト)という事態に驚いた。どんな制度設計をしていたのだろうか。全道300万㌔㍗余りの需要に対して、苫東厚真という一つの火力発電所がその半分を受け持っていたというのが、危機管理上どうだったか。

C)北海道では泊原発が2012年以降、運転を停止している。このことが影響しているらしい。原発依存体質から電力会社が抜けだせないでいることが遠因ではないか。

A)どういうことか。

 

「原発依存」体質が招いた全道停電

C)泊原発は3基で計200万㌔㍗の発電能力がある。これが稼働していれば苫東厚真火発はフル稼働する必要がなかった。つまり、今回のような事態は起こりようがなかった。おそらくこれが電力会社の言い分だろう。しかし、これは問題のすり替えだ。東日本大震災以降、原発の安全性に大きな懸念がある今、本来なら垂直型、中央集中型ではなく水平型、分散型ネットワーク方式による電力供給システムへの転換が図られるべきなのに、原発依存の設計思想からいまだに抜けだせずにいたため、今回のような事態が起きたといえる。

B)原発は、中央集中型システムの典型だ。本当に怖いのは原発稼働時に、原発を含め全道の発電所が一斉に緊急停止し、原発の外部電源が断たれた場合だ。最悪の場合、核燃料の冷却機能が失われる。そんなことが起きたらどんな対処が考えられたのだろうか。

C)今回の事態を奇貨として、エネルギー供給システムの分散型ネットワーク化を進めるべきだ。

A)でも今の政権ではどうかな。とてもそんな決断は考えにくい。体操協会の暴力問題はどうか。

B)塚原光男といえば、体操界に詳しくない我々でもその名を知っている。オリンピックのレジェンドだ。しかし、その塚原氏と妻が、70歳になってなお強化の現場を取り仕切っているのはどうなのか。女子レスリング、アマチュアボクシングもそうだが、老人が過去の栄光と既得権にしがみついているのは見苦しい。老害こそが最大の問題だ。

C)一人の女子選手が会見を行い、体操協会の体質を告発するに至った心情を考えると胸が痛いが、協会が暴力を振るったというコーチの無期限登録抹消処分に至るまでに、なぜ是正策が取られなかったのか、不思議だ。裏で何かあると考えるのが普通だろう。

A)結局は、こうした暴力的指導法が日常的に存在し、だれも気にかけなかったということではないか。コーチ一人の問題ではなく、スポーツ界のある種ムラ社会的な側面が問題の根底にあるようだ。

 

尋常でない同調圧力

B)ムラ社会というか、最近「不死身の特攻兵」という本で、9回出撃して9回帰還した特攻隊員のことを書いた鴻上尚史さんも言っているが、底流にあるのは日本社会の尋常でない同調圧力ということではないか。スポーツ界は、目指す目標が同じであるだけに同調圧力が働きやすい。

C)1970年代、原発建設が住民の反対を押し切って「国策」として進められたのも、尋常でない同調圧力の結果だった。それが今日の原発列島を生んだ。

A)自民党総裁選に目を向けよう。状況を見ると日本の政治の悲惨さを思わざるを得ない。

C)これこそ、根拠のない同調圧力の結果だ。自民党の国会議員たちは何をおびえているのか。情けない限りだ。

B)今の状況を招いたA級戦犯は岸田文雄・党総務会長だろう。安倍首相が次を担当したとしても1期3年だ。その間、干されるのを覚悟で立つか、それとも安倍の後ろをもみ手して追随し、確証のない「のれん分け」を期待するか。誰が見たってここで立った方が戦略的に優れているのは明白だった。

C)結局、岸田という政治家は立つべき時に立てないという評価が定まった。

 

政策的成果などない安倍政権

A)外交の安倍だの経済の安倍だのと政権の取り巻きは言いふらすが、そんなものに実体はない。それは国民がよく知っている。安倍外交とはトランプの番犬として時々吠えてみただけのことだし、北朝鮮と差しで話をするといいながら外務省を通してきちんとしたパイプを作ろうとした形跡はない。小泉純一郎政権の対北朝鮮外交での田中均外務審議官のような存在は皆無だ。とりあえず内調を使ってなんとかしようとしているが、どんなものか。手玉に取られるだけでは。経済に至っては、何をもって評価するのか。昨年のGDPは世界3位だが、2位の中国とは2倍以上の差がある。一人当たりGDPは世界25位だ。貧困率は、2015年のデータだが世界で12位。チリあたりと同列だ。無理やり円安株高政策を進めて企業は歓迎かもしれないが、国民には何の恩恵もないことはデータからも明らかだ。

B)来年度予算編成がこれから本格化するが、早くも一般会計で100兆円を超える見通しになった。イージスアショアを米側の言い値で買わされて防衛費はまた増額だし、プライマリーバランスの均衡化なんて本当にやる気があるのか。最近、2020年度目標を5年先延ばしと伝えられたが、25年度だって実現はあやしい。

C)こうしてみると、政策的成果はほとんどないし、モリカケ問題で官僚組織はガタガタだ。これであと一期やるなどとどうして言えるのだろう。自民党内でもほとんど批判がないのは不思議というほかない。石破さんは批判しているけど。

B)結局、政治家としての倫理観よりポストに群がる処世術のほうが先に立っているとしか思えない。政権党のこうした堕落ぶりに対しては、本来なら他の政党が取って代わるべきなのだが、今の日本の政治はそうした仕組みになっていない。その結果、日本の政治は果てしなく堕ちていくばかりだ。


防災・環境保護の先進国へ
A)
北海道地震で浮き彫りになったのは、ポスト原発をにらんだ電力供給システムの青写真を描く能力を持ち合わせていないこと。スポーツ界で明らかになったのも、新時代に即した選手の育成法をだれも描けず、旧態依然とした手法がまかり通っていること。どうも、その根幹にあるのは、ポスト冷戦の時代になお米国追従しか頭にない現政権の在り方であるという気がする。既得権益にしがみついているから官僚を含めあちこちの組織が腐敗し、倫理観を失っている。

B)総裁選に立った石破氏が提唱したが、昨今の豪雨禍や地震被害を見ると、防災庁を作るべきではないか。その中に日本版FEMAを創設する。

C)さらにいえば日本は防災、環境保護の先進国を目指すべきではないか。脱原発、エネルギー政策の転換、脱地球温暖化の国際的な主導国になる。これから老人(大)国になるしかない日本にとって、これこそが国の青写真づくりに結び付くはずだ。かつてのような経済成長第一主義は捨てるべきだ。 


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