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加害と被害、和解は可能か~映画「お隣さんはヒトラー?」 [映画時評]

加害と被害、和解は可能か~
映画「お隣さんはヒトラー?」


 タイトルを見てコメディー仕立てと直感した。観終わっての感想―確かにそうだが、切なくて人間味のある出来だった。
 ストーリーは単純。舞台は1960年、南米コロンビア。この年、アイヒマンがアルゼンチンでイスラエル諜報機関モサドに捕縛された。もちろんそこにひっかけてある。ヒトラーは1945年、連合軍が迫る中で拳銃自殺したが、死体が確認されなかったため南米逃亡説が絶えなかった。

 マレク・ポルスキー(デヴィッド・ヘイマン)は、人里離れた地に一人暮らしていた。亡き妻が育てたクロバラを大切に育てている。隣にドイツ人ヘルマン・ヘルツォーク(ウド・キア)が引っ越してきた。彼の飼い犬が塀を壊しクロバラを荒らしたためトラブルに。ドイツ人の周辺には数人がついていた。カルテンブルナー夫人(オリヴィア・シルハヴィ)は日常生活にも入り込んだ。単なる支援者か、それとも目付け役か―。
 男がチェス好きであることを知る。ポルスキーは大会で優勝するほどの名手だ。やがてお互いの家で対局する仲に。しかし、警戒心を捨ててはいなかった。瞳の色、身長、左利き、絵を描く趣味…。ことごとくヒトラーの特徴を備えていた。
 ポルスキーの腕には囚人番号の刺青があった。ユダヤ人強制収容所で家族を失った過去。ヒトラーへの敵意、恨みは消えるものではない。その男が隣人であるかもしれない。大使館にも情報を持ち込むが、相手にされない。ポルスキーは、ヘルツォークに絵を描いてくれと頼む。筆遣いを鑑定すれば、ウィーンで画学生をしていたヒトラー本人か、判別できるはず…。
 二人の間には、奇妙な友情と警戒心が絡み合い渦巻いていた。例えば、こんなシーン。カルテンブルナー夫人を「セクシーじゃないか?」と問いかけるヘルツォーク。ある夜、夫人が宿泊する。着替えをポルスキーが覗いていると、ヘルツォークも同じ行動をとっていた。同好の士というわけだ。

 「ヒトラーは絶対悪」というセリフが、この映画にも登場する。戦争で加害と被害の両極にあった人間が和解しあえるのか。答えを求めて進むラストの謎解きは興味深い。
 ここから先は、書けば台無しになる。
 2022年、イスラエル・ポーランド合作。監督レオン・プルドフスキー。製作した二つの国が、ともにナチ・ドイツの被害国であるところが面白い。


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