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人間性回復の物語~映画「東京カウボーイ」 [映画時評]

人間性回復の物語~映画「東京カウボーイ」


 「24時間戦えますか」―。ひと昔前こんなCMのフレーズがあった。それが上滑って聞こえない日本経済の迫力があり、ビジネス戦士たちが世界を駆け巡った。今は違う。

 大手食品商社に勤める坂井英輝(井浦新)は、経営不振に陥った米モンタナ州の牧場を黒字化するため現地を訪れた。和牛飼育への転換を腹案として持ち、その方面の専門家・和田直弘(国村隼)が同行した。和田は現地のバーで開かれた歓迎会で羽目を外し重傷、入院したため、交渉は坂井一人が担うことに。英語もろくにしゃべれない坂井は習慣の違いや発想の違いのため立往生する。
 捨てる神あれば拾う神あり。失敗を重ねるうち、ハビエル(ゴヤ・ロブレス)やペグ(ロビン・ワイガート)ら現地のカウボーイたちと心が通じ合い、モンタナの大地の魅力も再認識する。

 坂井は、会社では上司である副社長の増田けい子(藤谷文子、脚本も)と婚約していた。けい子からは牧場の処理を巡って連日、催促の電話がかかる。窮地の坂井はあるアイデアを思いつく。交渉が不調なら第三者の買収も視野に入れていたが、買収先として自分とカウボーイたちを入れた会社を立ち上げる―。
 カウボーイたちと話すうち、坂井は自らのプライベートも明かした。婚約して5年というと、彼らは一様に驚き「けい子とちゃんと話しているのか」と問いかけた。無言の坂井に「やっぱりね」。
 坂井はビジネスだけでなく生活の上でも何をしなければならないか、知るのだった。そんな坂井のもとにけい子がやってきた。「クビ」を伝えるために。

 平たく言うと、モンタナの雄大な山河とカウボーイたちの素朴な心情に触れ、MAの敏腕商社員として神経をすり減らした坂井が人間性を取り戻す物語である。
 2024年、米国。監督マーク・マリオットは「男はつらいよ」の撮影現場に見習いとして参加した経験がある。そのせいか、ヒューマンな香りは共通する。


東京カウボーイ.jpg



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