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伴明流の「連帯」の物語~映画「夜明けまでバス停で」 [映画時評]

伴明流の「連帯」の物語~映画「夜明けまでバス停で」


 居酒屋で働きながらアクセサリーの加工を教える北林三知子は、コロナ禍で売り上げ減にあえぐ店のリストラにあった。従業員寮を追い出され、居場所もなくす。収入がとだえ、繁華街で残飯をあさるほどに落ちぶれ、夜はバス停のベンチで明け方まで転寝する毎日。そんな彼女を物陰から狙う男がいた。コンビニ袋にレンガを入れ、背後から近づく…。
 新自由主義の滑り台社会を転げ落ち、挙句に殺害された2020年の事件をベースにした。監督は連合赤軍事件を描いた「光の雨」の高橋伴明。

 北林(板谷由夏)の周りにはアクセサリー教室の場所を提供する如月マリ(筒井真理子)や居酒屋を同時にリストラされた石川マリア(ルビー・モレノ、懐かしい!)らがいたが、彼女らと手を組むことなく三知子は都会の孤独の海に沈んでいった。周囲に縋り付けないプライドがそうさせたのであろう。実際の事件ではこの後、彼女は通りがかりの男に殺害されるのだが、1970年前後の社会を覆った空気を吸ってきた高橋は、まったく別の展開を提示する。
 ホームレスになった三知子に近づいたのは、得体のしれない老女(根岸季衣)と自称? 元爆弾犯=通称バクダン(柄本明)。バクダンはブルーシートの「住居」で70年ごろの闘争を振り返り、熱弁をふるう。柳美里「JR上野駅公園口」を思わせる展開と思いきや、2人が力づくで方向転換する。
 三知子を間一髪救ったのは、かつての居酒屋の店長・寺島千晴(大西礼芳)だった。彼女は、支払われないままだった退職金を渡すため行方を追っていた。寺島もまた、上司の大河原聡(三浦貴大)のパワハラやセクハラに耐え兼ね、店をやめたのだった。そのことを告げられ三知子が漏らした「連帯」の言葉とは…。

 孤独死を描いて切なく悲しい物語にしなかった高橋監督に拍手を送りたい。
 2022年製作。


夜明けまでバス停で.jpg



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