プーチン体制の闇は深い~映画「ナワリヌイ」 [映画時評]
プーチン体制の闇は深い~映画「ナワリヌイ」
ナワリヌイ。モスクワ近郊に生まれ、ウクライナ出身の父を持つ。40代の弁護士。プーチン大統領はこの男を呼ぶとき「あの男」とだけいう。固有名詞では呼ばない。恐怖感と嫌悪感が、にじみ出ている。
2020年8月、シベリアからモスクワ行きの機内にいたナワリヌイは、突然苦しみ意識不明に陥った。オムスクに緊急着陸、病院に収容されたが、政府の謀略を感じた同行者は、ドイツへ緊急搬送した。1か月後に回復したが、そのままドイツに滞在した。ドイツ政府は、体内からノビチョクが検出されたと発表した。旧ソ連とロシアが開発した神経剤である。ナワリヌイはドイツ滞在中、べリングキャットと連携、ロシアによるナワリヌイ暗殺計画の全貌を暴きだし公開した。翌年1月帰国、拘束された。
この半年間の動きをドキュメンタリーとしてまとめたのが映画「ナワリヌイ」である。
暗殺計画へのアプローチは、大胆にも3人の殺し屋や化学者ら当事者に直接電話で問いただす方法で行われた。「下着にノビチョクを塗り込んだ」と、不用意にも全貌をしゃべったのは化学者だった。彼はその後、行方不明という。記者会見で関与を問われたプーチンは「CIAの陰謀」とかわした。
ウクライナとの戦争に反対するナワリヌイが刑務所に収監されて約1年後、侵攻は開始された。プーチン体制の闇は深い。
2022年、米国。
2022-07-18 12:55
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