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スパイものの王道~映画「オペレーション・ミンスミート―ナチを欺いた死体―」 [映画時評]

スパイものの王道~映画「オペレーション・
ミンスミート―ナチを欺いた死体―」


 1943年、連合国軍によるシチリア島からイタリア半島上陸作戦は、第二次大戦の戦況を大きく変えた。陰では「鏡の戦争」「灰色の戦争」と呼ばれる英独の諜報戦があったといわれる。その細部を再現したのが「オペレーションミンスミート―ナチを欺いた死体―」。「死体」が「ナチを欺いた」とは。そのことが戦況を変えたとは―。英国映画らしい重厚な作りである。さすがジョン・ル・カレを生んだ国、と思わせる。一方で微笑を誘うユーモアも仕込んである。

 1943年夏までの約半年間を追った。英国など連合国軍は、イタリア上陸を企てていた。しかし、まともに行けば待ち構えるドイツ軍の餌食になる。そこでMI5のユーエン・モンタギュー(コリン・ファース)、チャールズ・チャムリー(マシュー・マクファディン)らは奇想天外ともいえる計画を持ちだす。連合国軍がギリシャ上陸作戦を計画しているとする偽の機密文書を持たせた死体を、当時中立国だったスペインの海岸に漂着させ、文書がドイツのスパイに渡るようにする…。
 計画は死体選びから始まった。難航する中、殺鼠剤入りのパンを食べて中毒死したと思われる路上生活者のそれが候補に挙がった。冷蔵室に入れても腐敗は進むため、実行までのリミットは3カ月と決まった。英国兵と想定したうえでストーリーの組み立てが始まった。名前はできるだけ平凡に「ビル・マーティン」。恋人の写真、私的な手紙、そして機密文書。死体を撮影して生前の写真を偽造しようとしたが、死体はどう見ても死体にしか見えなかった。困り果てるうち、MI5の同僚女性ジーン・レスリー(ケリーマグドナルド)が、そっくりな男を連れて現れた。身分証の写真の件はそれで解決した。ついでにジーンの若いころの写真を使い、恋人「パム」に仕立てた。
 「ビル・マーティン」はスペイン沖の潜水艦から放出された。あとは、ドイツのスパイが餌に食いつくかどうかだ。スペインで標的にしたスパイが二重スパイと思いきや三重スパイだったとか、MI5内に設けられた二十委員会が、実は二重スパイ防止策を練るためのセクションでダブルクロス=ⅩⅩ=20に引っ掛けた命名だとか、「機密文書」に髪の毛一本を挟み、開封したかどうかを回収後に確認するなど、スパイものの王道を行くエピソードも出てくる。

 「戦争モノ」に属するが、戦闘シーンは皆無。それどころか、モンタギューとジーンの間でロマンスが芽生えかけたりする(一応「実録」としているが、この話は創作だろう)。MI5の同僚にはイアン・フレミング(ジョニー・フリン)も登場する。後の「007」シリーズの作者である。タイプを打っている彼をみて同僚が「何を書いてる?」と聞くと「スパイストーリー」と答えるあたり、ちょっとしたユーモアもある。作戦名ミンスミートは日本語で「こま切れ肉」だが、意味するところは不明。
 2020年製作。監督ジョンマッデン。


ナチを欺いた死体のコピー.jpg

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