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人生はメリーゴーランド~映画「ナイトメア・アリー」 [映画時評]

人生はメリーゴーランド~映画「ナイトメア・アリー」


 「ナイトメア・アリー」は日本語で「悪夢小路」。野心に燃えショービジネスの階段を登りかけた男がつまずく。悪夢のような小路に迷い込み、たどり着いたのは悪魔のメリーゴーランドだった…という怖いお話。

 アメリカの片田舎に育ったスタン(ブラッドリー・クーパー)は死体を一つ床下に埋め、自宅を焼き払って街に出た。当てもないままサーカスの一団に出会う。鶏を生きたまま食いちぎり血を吸う獣人ショーが行われていた。カネのないスタンは、逃げた獣人を捕まえたことで小屋主のクレム(ウィレム・デフォー)に雇われた。
 獣人は頭部に受けた傷がもとで死んでしまった。スタンが、獣人はどこで探し出すのかと問うと、クレムは「獣人は作るんだ。ナイトメア・アリーに迷い込んだやつを連れてきて」と答えた。
 スタンは読心術ショーのジーナ(トニ・コレット)のアシスタントになった。彼女にはアルコール依存症の夫ピート(デビッド・ストラザーン)がいた。実は読心術とは名ばかり、言動から推測し相手の心を読んだかのような演技をするのだった。その極意を編み出したピートから技術を聞きだしたスタンは、サーカス一座で「電気ショック」という怪しいショーを演じるモリー(ルーニー・マーラ)を連れて独立。巧みな話術で興行的に成功を収めたかに見えた。

 謎めいた心理学者リリス・リッター博士(ケイト・ブランシェット)との出会いが転機だった。彼女はショーを見て即座にイカサマと見抜く。スタンは機転を利かせ、彼女のバッグに短銃が入っていることを言いあてて窮地を脱した。もちろんウラがあった。バッグが重そうだったこと、それまでの会話で彼女が独身だったことーなどから推測したのだった。
 スタンは街の富豪エズラ・グリンドル(リチャード・ジェンキンス)を紹介された。彼は亡くなった妻が忘れられないでいた。降霊術でも名を成したスタンは請け負ったが、亡くなった妻と会わせることなどできるわけもなく悩んでいたところ、思いついたのはモリーに演じさせることだった。モリーは渋々応じたが、当然ながら別人とばれてしまった。スタンは、グリンドルを殺害するしかなかった。

 逃走中のスタンは故郷を捨てた時の夢を見ていた。寝たきりの父を寒風にさらし凍死させ、家に火をつけたのだった。
 再び一文無しになったスタンが向かったのはあのサーカス一座だった。しかし、もうクレムはいなかった。新しい小屋主に読心術ならできる、と仕事を頼んだが「それはもう古い」と一蹴された。「獣人の仕事ならあるが」と問われ、スタンは複雑な表情で「それが宿命だと思っていた」と答えた…。

 まことに、人生はメリーゴーランドである。一切を見ていたのが、小屋に置かれた薄気味悪いホルマリン漬け胎児「エノク」だった。頭部に巨大な「第三の眼」があった。
 2021年、アメリカ。監督は「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ。


ナイトメア・アリー.jpg


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