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自前の政治ができるか~三酔人風流奇譚 [社会時評]

自前の政治ができるか~三酔人風流奇譚


岸田政権、地味なスタート
松太郎 岸田文雄内閣が10月4日、発足した。新聞各紙が実施した支持率調査【注】を見ると、思ったより低空飛行だ。
竹次郎 ただ、数字に微妙な幅がある。それに毎日を除いて不支持の数字が低い。
梅三郎 閣僚の顔ぶれを見ると20人中、初入閣が13人と多く、しかも若手が多い。知名度の低さから地味、薄味、ひ弱の印象がある。その辺をどう見るかが、数字の幅になって表れている。その分、反発を呼ぶ要素もないので不支持率も低いのでは。世論もどう見たらいいのか戸惑っているようだ。
松 それと関連するか分からないが、株価もご祝儀相場とはいかなかった。もっともこれには中国経済や原油高騰など不安定要因が絡んでいるが。
竹 いずれにしても、首相の見た目どおり地味なスタートとなった。
梅 そこであらためて思うが、菅義偉内閣はなんであんなに発足時の支持率が高かったんだろう。いったい何が期待されたのか。
松 うーむ。分からんねえ。
竹 発足時の支持率が低く、後で上がった例はないわけではない。記憶に残るのは小渕恵三内閣。発足時は米国から「冷めたピザ」と酷評された。中曽根康弘内閣も当初は「田中曽根内閣」と批判を浴びたが、闇将軍田中角栄支配から脱却することで支持率を上げた。宮澤喜一内閣は、ずっと低空飛行だったような…。
梅 政権のかたちでいうと、竹下派支配で発足した宮澤政権、田中派支配の中曽根政権あたりが、今度の岸田政権に近い。宮澤政権は竹下派支配を脱却できないまま竹下派自体が分裂したことで55年体制の幕引き内閣となった。中曽根政権は田中派支配から脱却したが、そのために「死んだふり解散」など壮絶な権力闘争を仕掛けている。要は、最終的に自分の足で立てるかどうか。

「甘利幹事長」の意味
松 自民総裁選で派閥の論理が言われ、内閣発足時も安倍晋三、麻生太郎、甘利明の3Aの影響が強いとされた。その辺をどう見るか。
竹 甘利幹事長は岸田、安倍、麻生の間を取り持ったことへの論功行賞。高市早苗政調会長、萩生田光一経産相、松野博一官房長官あたりが安倍氏の影響かと思われるが、安倍氏から見れば微妙にストライクゾーンから外れている。その辺は岸田氏の抵抗力と思いたいが。麻生副総裁は、これからの運用を見ないとわからない。中二階に上げたということなのか…。少なくとも、波風立てずに財務省から麻生氏を外すにはこの方法しかないとは思う。はじめからケンカを売るつもりなら話は別だが。
松 岸田政権のかたちは、かつての田中派、竹下派支配に似てはいるが、当時ほど派閥の圧力が強いとは思えない。背景にあるのは選挙制度の違いだろう。
竹 甘利幹事長については、いろんな見方が可能だ。政治とカネの象徴的人物で野党が手ぐすね引く中、火中のクリを拾う必要があったか。もう一つは、萩生田経産相とセットで考えると、強力な原発推進ラインが見えてくる。
梅 自民総裁選は、河野太郎という原発廃止論者対安倍を筆頭とする原発推進論者のせめぎあいだった。そう見ると、政権を制したのも甘利―萩生田という原発推進論者ということになる。

核政策のねじれと新・資本主義の行方
竹 それほど簡単に物事が動くだろうか。原発推進論が政権の中枢を押さえたからと言って、原発再稼働は容易ではないだろう。まして新増設など不可能だ。核燃サイクルも、どんどんやりましょうとはならない。世界の大勢を見てもそうだ。
梅 岸田氏は戦後初の被爆地選出国会議員だ。その点からも、核兵器廃絶に言及せざるを得ない。菅首相が「読み飛ばし」事件を起こした平和祈念式典にも出る。核兵器廃絶と原発推進を同時に唱える首相、という批判は避けられない。
松 いずれにしても10月中に総選挙がある。それを乗り切ったとして来年夏には参院選。その後は、よほどの失政がない限り3年間は選挙をしなくていい。その間に、自分の色を出した政治ができるか。
竹 麻生副総裁の間は、財務省の公文書改ざん問題は手を突っ込まない、というメッセージ。それと歩調を合わせてモリカケ・桜問題も棚上げ、ということになる。その辺りを国民がどう見るか。「自前の政治」と「疑惑棚上げ」の連立方程式の中で、岸田政権の命運が定まる。
松 8日には所信表明演説があった。
竹 衆目の一致するところでは、目玉は「新しい資本主義」を打ち出したところだ。大風呂敷を広げたなあ、というのが第一印象。
梅 確かに。野党はさっそく「美辞麗句ばかりで内容はない」と突っ込みを入れた。
松 「新しい資本主義」は近年、哲学者や経済学者から言われ始めた概念だ。社会主義の自壊によって資本主義の一人勝ちかと思いきや、ナオミ・クラインが「ショック・ドクトリン」で書いたように、新自由主義自体が資本主義の行き詰まり形態であることが明らかになってきた。脱・資本主義か新・資本主義かは問われるべき課題ではあるが、そこに手を突っ込むのは容易ではない。
竹 所信表明を素直に見れば、税制改革などで企業や金持ち階級から資産を供出させ、中間層や下級層に再配分とも読めるが、岸田政権にそんな体力、腕力があるとは思えない。
松 その辺はお手並み拝見、ということ。もし国民に失望感が広がれば、政権は短命かも。
梅 総裁選で言っていた所得倍増は姿を消したようだ。さすがに、当時の池田勇人内閣は高度経済成長下でなしとげたが、今の時代にとても現実的とは思えない。
竹 宏池会の創始者である池田のほか、大平正芳、宮澤らが掲げた政策目標がちりばめられている。田園都市構想とか生活大国とか…。
松 まさに「美辞麗句」政権に終わらないことを願いたい。

【注】共同通信55.723.7 朝日4520 毎日4940 読売5627 日経5925(単位%、支持・不支持の順)


 


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