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孤島に渦巻く疑惑と恐怖と怒り~映画「ライトハウス」 [映画時評]

孤島に渦巻く疑惑と恐怖と怒り~映画「ライトハウス」


 ニューイングランドの孤島に送りこまれた二人の男。4週間にわたる灯台の管理が仕事である。不幸なことに二人はそりが合わない。そのうえ、期限は来たものの海はあらしが続き、迎えの船など気配もない。二人は疑惑と恐怖に取り付かれていく。
 元船乗りというトーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)は、カナダの木こりから転職したという若い男エフレイム・ウィンスロウ(ロバート・パティンソン)を強権的に支配、雑用を押し付けた。そして、灯台の最も重要な業務、光源管理には手を触れさせなかった。なぜなのか…、ウィンスロウの疑念は深まる。
 あらしの中で二人は毎夜、飲んだくれた。酒はつき、灯油?を飲むようになった二人は幻覚に襲われる。海鳥の襲撃に悩んだウィンスロウは海鳥を殺した。「よくないことが起きる」といさめるウェイク。ある日、ポンプを押すと真っ黒な水が出た。貯水槽を確かめると、大量の海鳥の死骸があった。
 ウィンスロウは海岸に寝そべる人魚を襲い、強姦もした。ここまで来ると、何が事実で何が幻なのか。
 ウィンスロウには秘密があった。森で働いていたころ、自分を使っていた男を殺害したという。実は、エフレイム・ウィンスロウはその男の名で、本名はトーマス・ハワードだった。
 ある日、ウェイクが書きつけた日記を偶然に読んでしまった。そこには日頃言っていたこととは違うことが書かれていた。疑惑、怒り、恐怖の中で、ついにウェイクを殺害。カギを手に入れ灯台の光源へと向かった。そこで何かを見た。タブーに触れた彼は、死の階段を転げ落ちた…。

 時代設定は19世紀末。実際の事件をモチーフにしたという。画面は白黒で、正方形に近いアスペクト比が、時代感を醸し出す。同時に、怖くて美しい画調にも貢献している。いくつかのギリシャ神話をベースにしているらしく、物語の構造は思いのほか複雑である。例えば、唐突に表れるラストシーン。全裸のウィンスロウが波打ち際で、生きたまま内臓を海鳥に食われている。これは何を意味するのか。
 疑惑が疑惑を生み、恐怖が狂気に至る過程など、日本でいえば「累ヶ淵」など怪談ものに近い。全編通じて二人しか出てこないので、この二人の鬼気迫る演技がまぎれもなく作品を支えている。
 ロバート・エガース監督。2019年、米国。


ライトハウスのコピー.jpg


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