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「エロ」か「グロ」か、評価はわかれる~映画「DAU. ナターシャ」 [映画時評]

「エロ」か「グロ」か、評価はわかれる
~映画「DAU. ナターシャ」


 主要キャスト400人とか、エキストラ1万人とか、巨大セットとかでソ連の全体主義再現を目指した、という惹句が先走って、実際に見ると室内劇がほとんど、という展開に面くらった。ソ連時代を生きた人間の閉塞感や絶望感、体制の非人間性という側面はスクリーンから立ち上ってきたが、スケール感は見込み外れだった。
 主人公は、あるレストランのウェイトレス、ナターシャ(ナターリヤ・ベレジナヤ)。どこかの秘密研究所に付属しているらしい。独身のようだが、若くはない。年下の同僚女性オーリャ(オリガ・シカバルニャ)がいる。関係は微妙である。ナターシャは相手の若さに嫉妬の感情を持ち、そのためオーリャは反発しがちである。
 ある日、オーリャの自宅でパーティーが開かれ、訪れたフランスの科学者リュック(リュック・ビジェ)を交え、どんちゃん騒ぎに。ナターシャが加わると、リュックの眼鏡にかなったらしく二人はベッドインする。
 二人の関係はなぜかKGBの情報網にかかり、外国人と不用意に関係を持ったとしてKGB係官(ウラジミール・アジッポ)から容赦ない尋問を受ける。プライドをズタズタにされたナターシャはKGBへ情報提供を約束させられる。つまりスパイになる。
 やがて職場に戻ったナターシャは、内面で何かが変わったようだった。昨日まではソ連の体制下でただ流される存在だったが、体制に組み込まれたことをどこかで実感していることが、振る舞いににじんでいた。オーリャにも、問答無用で接した…。
 「DAU.」はロシアのノーベル物理学賞学者レフ・ランダウからとったという。イリヤ・フルジャノフスキー監督は当初、彼の伝記的作品を想定していたが、なぜかソ連の全体主義思想を批判的に再現する方向にかじを切った。ナターリヤ・ベレジナヤは演技経験ゼロという。リュックとの「行為」は、ぼかしが入っているがおそらく「本番」を演じているし、KGBでの尋問にもきわどいシーンがある。素人とは思えない。ウラジミール・アジッポは実際にKGBにいたという。それら一連のシーンを「エロ」ととるか「グロ」ととるか、評価はむつかしい。賛否の分かれる作品だろう。
 2020年、ドイツ・ウクライナ・イギリス・ロシア合作。


DAU.jpg

 


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