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悠久と猥雑~映画「春江水暖」 [映画時評]

悠久と猥雑~映画「春江水暖」


 一言でいえば、映画らしい映画である。そして、スクリーンには二つの時間が流れている。一つは、中国の自然のなか、大河のようなゆったりとした時間。もう一つは、古い町並みに再開発の波が押し寄せるなか、民衆の暮らしが醸し出す温かみを帯びた時間である。

 中国・杭州市。富春江の河べりにある富陽(フーヤン)。顧(グー)家の老いた母ユーフォン(ドゥー・フォンジュン)の誕生日会が開かれた。彼女には4人の兄弟がいた。長男ヨウフー(チェン・ヨウファー)は黄金大飯店を経営する。誕生日会もここで開いた。次男ヨウルー(ジャン・レンリアン)は漁師。長男の店に魚を卸すが、代金をもらえず困っている。三男ヨウジン(スン・ジャンジエン)は離婚後、ダウン症の子を育てている。ばくちに手を出し金策に困って、ついにいかさまばくちに手を出す。危うい生活を送っている。四男ヨウホン(スン・ジャンウェイ)は気ままな独身暮らし。長男には娘グーシー(ポン・ルーチー)がいた。教師をしているジャン(ジュアン・イー)という恋人がおり結婚を考えるが、親は乗り気でない。

 そんな三代の大家族の物語が、長回しによる山水画のような風景を借景に繰り広げられる。一方で富春江の河べりでは、高層ビルの建築が進む。
 ストーリーの細かい展開をこれ以上追っても意味はないだろう。時間の対比と風景の対比の妙。悠久と猥雑。退屈なようでいて人間味のある田舎町が、再開発によって「一律」を押し付けられていく。日本の地方にもありそうな光景である。三部作の初編という。次作が楽しみだ。
 2019年、中国。監督・脚本は、富陽を故郷とするグー・シャオガン。33歳の若さである。


春江水暖のコピー.jpg


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