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過酷な生活を淡々と描く~映画「ミナリ」 [映画時評]

過酷な生活を淡々と描く~映画「ミナリ」


 1980年代から2000年ごろにかけて「北の国から」というテレビドラマがあった。東京から北海道に移り住んだ一家が、大自然の中で格闘しながら生きていく物語。映画「ミナリ」は、この「北の国から」のアメリカ版を思わせる。

 韓国系アメリカ人のジェイコブ・イー(スティーヴン・ユァン)はカリフォルニアからアーカンソーに移住してきた。平原にトレーラーがあるだけの生活。ここでイーは農業を始める。韓国系の人たちに特化した作物を作ろうという計画だった。しかし、うまくいかない。まず、水が確保できない。作物の販売ルートも確保が難しい。そんな毎日の中で妻のモニカ(ハン・イェリ)は不安を抱き、カリフォルニアに帰ろうといいだす。
 やがてモニカの母スンジャ(ユン・ヨジョン)も生活を共にする。朝鮮戦争で夫を失い、以来ソウルで一人暮らしてきた。家事は何一つできない。モニカの息子デイヴィッド(アラン・キム)に花札を教えるぐらいがせいぜい。そんなスンジャの振る舞いにぎくしゃくし始めた家族を、モニカの娘アン(ノエル・ケイト・チョー)が取りなす。
 スンジャはある日、デイヴィッドをつれて平原の片隅にある小川のほとりを訪れ、韓国から持ってきたセリ(韓国語でミナリ)の種をまいた。
 心筋梗塞によって半身にまひが残るスンジャは一家が町に出ている時にたき火をし、その火をうっかり周囲の枯れ草に移らせてしまう。やがて作業小屋を延焼させ、収穫した作物までも台無しにしてしまう(「北の国から」にもこんなシーンがあった)。
 町から帰ったイーは落胆の中でデイヴィッドとともにあの水辺に向かう。そこでは、スンジャが種をまいたセリが立派に育っていた…。

 過酷な生活を、悲壮ぶることなく淡々と描く。未来が見えない中で、空中分解寸前の家族をつなぎとめる何か。良くも悪くも、これもアメリカの断面ということだろう。この映画はそれを、セリ(ミナリ)に託して描こうとしている。リー・アイザック・チョン監督の実体験に基づくという。2020年、アメリカ。


ミナリ.jpg


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