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沈没する日本丸~三酔人風流奇譚 [社会時評]

沈没する日本丸~三酔人風流奇譚


 「ワクチン」は安全保障の問題
松太郎 コロナ対応をめぐる政府の迷走やら、東京オリンピック組織委員会会長の辞任劇やら、菅義偉首相の長男による接待問題やら…と、世相を斬るための素材が後を絶たず、このコーナーも追いつけない状況だ。まずはコロナ対応から。
竹次郎 この問題については3人の閣僚が対応している。まず、田村憲久厚労相。そして西村康稔経済再生担当相、これに河野太郎ワクチン接種担当相が加わった。官僚はいちいち、この問題は誰に相談するか、と悩んでいるという。船頭ばかり多くて船は前に進まない感じだ。
梅三郎 本来なら政府のスポークスマンである加藤勝信官房長官がすべて仕切って発信すべきだろう。しかし、そうなってはいないようだ。河野大臣が発信力はありそうだが、ワクチン輸入がうまくいってないこともあり発言がぶれている。
竹 ワクチンは、感染者数が世界最多の米国が囲い込みを図っており、EUも域外へは積極的に出さないようだ。間隙をついてロシア、中国が安価でばらまこうとしている。
松 まさしくワクチン外交が世界を席巻している。その中で日本はワクチン入手が困難な現状を嘆くばかりでのんきなものだ。
竹 このところロシア開発ワクチンが高評価で、EU加盟国も輸入を検討しているようだ。
松 ロシアはソ連時代の遺産があるから。かつて古井喜実厚相がポリオワクチンをソ連から緊急輸入する政治決断をしたことがあった。もう60年前の話だ。きな臭いことを言えば、ソ連は生物化学兵器研究の一環としてワクチン開発を考えていたのかもしれない。
梅 ワクチン開発は国の安全保障そのものだ。日本は感染症対策だけでなく食糧、エネルギー分野も安全保障問題としてとらえる意識は低い。例えば食糧自給率は、2018年度カロリーベースで37%。OECD加盟30カ国中27位で、人口1億人を超す国では最下位だ。石油に頼るエネルギー分野は今さらいうまでもない。ホルムズ海峡、マラッカ海峡を封鎖されれば日本経済の息の根は止まる。一時期、シーレーンが議論されたが、それよりエネルギー自給をどうするかを考えたほうがいい。再生可能エネルギーへの転換だ。
松 中国もロシアも安保問題には敏感だ。ロシアがクリミア半島を占領したり、中国が南沙諸島を実質占領したりする背景にもそれがある。ワクチンも、国の安全保障に直結すると考えるから開発に熱心に動く。一方で、なぜ日本はこれほど鈍感なのだろうか。
竹 米国一辺倒の外交をやっていればなんとかなる、と戦後一貫して思考停止してきたからではないか。ワクチン問題も、そのつけを払わされている。これをいい機会として米国一辺倒から離れるべきだが、できるかどうか。
松 いまミャンマーがクーデターによって揺らいでいるが、この国にも日本がどう対応するか問われている。米国はクーデター政権に反対の意思表示をしたが、日本も追随するのか。かといってタイやカンボジアなど周辺国は中国を向いている。その中国は、今のところミャンマーに対して静観の構えで、事実上クーデター政権を追認している。日本の対応はとても難しい。

政治ムラの原風景
松 ワクチンの話から少しずれてしまったようだ。オリンピック組織委員会の森喜朗会長辞任劇について。
竹 なんだか数十年前の政治ムラの原風景を見ているようだった。金丸信とかが暗躍していた時代がまだ続いているのかと思った。
梅 森批判が高まったとき、功績もあったとする声があったが首をかしげざるを得ない。密室の談合、根回しという永田町の古い手法でやってきただけではないのか。もっと他のやり方はあったように思う。
松 後継として、いったんは川淵三郎元Jリーグチェアマンにお鉢が回ったが、おそらく官邸から横やりが入って橋本聖子五輪担当相に決まった。組織委が候補者検討委員会を立ち上げ一本化したが、結局、検討委のメンバー8人も正式に発表はなく、どういう議論で選ばれたのかも明らかになっていない。やっぱり永田ムラで繰り広げられた光景が続いている。
竹 そういう経緯で決まった橋本組織委員会の会長~本当はこの言い方も変えたほうがいいのだが。委員長でいいのでは。おそらく森氏の意思が入って会長となったのだろう~に期待はできるのか。
梅 橋本氏がスポーツ選手以上のものをこれまで出してきたかというと、そんなことはないので、やっぱり森氏のパペット以上にはならないのでは。
松 そもそもを言いだすときりがないが、コロナ禍の現状ということを差し引いても、今オリンピックを東京で開く意味はあるのか。1964年の東京五輪は、絶妙のタイミングだった。52年に独立を果たし、56年に経済白書で「戦後は終わった」とうたい、60年安保で良し悪しは別として国の針路が決まった。そんな時にオリンピックがあり、選手村の建設技術が各地の住宅団地建設に生かされ、新幹線や自動車道の社会インフラが整備された。高度経済成長の推進エンジンが東京五輪だった。コロナ禍で国民が疲弊しているいま、それほどの意味が五輪にあるのだろうか。莫大な借金だけが後世に残るのではないか。
梅 島根の丸山達也知事が聖火リレーに異議を唱えたのも、そうした思いが底流にあるのでは。

庶民の常識からかけ離れて
竹 菅義偉首相の長男、正剛氏が勤める東北新社が総務省幹部に接待攻勢を仕掛け、国会で問題になっている。
梅 今の官僚はここまで腐っているのか、と思わされる事例だ。放送行政の元締めが放送事業の一会社の接待を受けてはいくら何でもアウトだろう。
竹 野党に追及されて総務省の官僚は「利害関係者とは思わず」と答えている。何とも白々しい。一方で首相は「長男とは別人格」と答弁、失笑を買った。
梅 当時はまだ首相ではなかったが、総務相から官房長官になった政治家の長男から声がかかれば、断りにくいだろう。一方で東北新社側も、そのことを織り込んで接待攻勢をかけている。双方に下心があるのは見え見えだ。
松 菅首相は総務相時代に放送法を使ってNHK、民放を締め上げた。方針に沿わない官僚は問答無用で左遷したという。ふるさと納税も菅総務相のアイデアだが、受益者負担の原則からすれば外れている。そのことを直言した官僚も直ちに外された。いま接待疑惑を問われているのは、山田真貴子内閣広報官(元総務官僚)も含め、菅総務相によって外されなかった人たちだ。その人たちは、菅氏の長男から声がかかれば出かけていった。「ちょっとそれは…」といえなかったのだろう。
松 もう20年以上前になるが大蔵省接待事件というのがあった。官官接待というやつだ。なんだかそれを思い起こさせる。
竹 常識で考えれば分かりそうなものを、官僚としての矩はその常識とは別のところにある、と考え違いをした人たちがはまる落とし穴がある。これまで多くの官僚がはまったが、今回もだ。
松 日本という船、前に進んでいるとは思えない。ゆっくりとだが沈没しかかっているのではないか。
梅 米国ではトランプ政権からバイデン政権へ移行し、あらゆる政策が180度転換されようとしている。民主主義体制下では、どの政権が100%正しく、どの政権が100%間違っているとは判断しにくい。もっとも、トランプは例外的に100%ダメな政権かもしれないが。言いたいことは一定の幅の中のブレこそが民主主義の正統性を保証するのではないか、ということ。日本に置き換えて言えば安倍、菅と続いた自民党政権も長期化ゆえの腐敗やほころびが目立ってきた。不満や不安があるにせよ、ここらで政権交代をしてみてもいいのではないか。今はそのことによるデメリットよりメリットが明らかに大きいと思える。
松 一度、政治状況を刷新して正すべきは正す、それもいい。

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